第17話 作戦

彼の作戦の内容は俺をおとりにした陽動作戦。バッチを男に渡しておいて先に俺が街に入り、逃げ回る。捕まったらもう取られている、怖くて逃げたと答える。男は俺が暴れている間に潜入。開放された俺は待ち合わせ場所に移動、バッチを受け取る。反則のように感じるがバレなければ問題なし。面白い作戦だが残念ながら却下。


「悪いがやめておこう、足が速くない方でね」

「そうか、残念」


俺との共同戦線は諦め、他の人間に声を掛ける金髪の男。次の人は作戦に乗ったようだ。バッチを男に渡す。


「走り込んでおく」

「期待しているよ」


後日作戦決行とお互い拳を合わせ別れ帰っていく。良い作戦ではある、アンタが詐欺師でなければな! この手口を使い何人もの人からバッチを奪っている。当然後日現れず、その時に騙されたことに気がつく。俺もルーラーさんから聞いていなかったら乗っている可能性はある。入る前から戦いは始まっている。騙された彼には金髪の男が詐欺師とは言わない。騙されたほうが悪いし、今は問題が多いから入らない方が良い可能性はあるからね、行方不明者が出てるし。一旦街に戻り仮眠を取る。起床後街を出て準備をする。顔を布で覆い、目元だけ開け、帽子をかぶる。顔が割れると動きづらくなる。夜に出発し明ける前に潜入開始。


「いくか」


中腰の姿勢のまま音を立てないように移動。街は真っ暗、静まり返っている。木の枝を踏み折ろうものなら一瞬で感知されるだろう。街に近づく、ほぼ音を出していない、うまく移動できている。人の気配はまったくない。これは潜入成功かな。そう思い一歩、歩を進めた瞬間、地面が急激に落ち俺は落下する。落とし穴だ。暗闇だから地面がしっかり見えなかった、油断したのもまずかった、やられたな。引っかかった瞬間家屋から二人の人間が武器を持ってこちらに向かって走って来るのが見えた。


「引っかかったぜ!」

「バッチありがとうございまーす!」


結構広く深い穴、そして入口が狭い。脱出する前に男達に上を取られるだろう。足音が聞こえる、もう近くまで来ている。男達が覗き込んできた。


「さてどんなお間抜けちゃんが入っているかなぁ」

「あれ、誰も居ないぞ?」

「こっちだよ」


二人を後ろから蹴り飛ばし穴に落とす。時間を止め後ろに回り込んだ。男二人は驚いている。向こうは二人だが武器を取り上げこちらは上、武器を持っている。俺の勝ちだ。


「降参かい?」

「……仕方ねえ、諦めるか。もっと甘い汁を吸いたかったがな。ほらよ」


男二人は諦めてバッチをこちらに投げてよこす。受取すぐに投げて返した。


「何故だ?」

「ここで生きていくための情報が欲しい。そのバッチが代金ってところだ」

「へへ、坊主、お前は頭が回るようだな。気に入った、色々教えてやるよ」


手を出し男を引き上げる。騙し討ちしてくる様子はない。どうやら仲間として認めてくれたようだ。この方法はルーラーさんから教えてもらっていた方法。勝った相手にバッチを返し情報を得る、見事に成功だ。建物に入り彼らと話をする。


「現在この街第三階層は五人の男によって支配されている。ここはB地区、アレスが支配している地区だ」


ペンを取り出し俺の地図に記入、AからEに分け、それぞれのボスの名前を書く。男二人はアレスからこの場所を任されている。他の住人も同じように場所を与えられている。


「アレスは今どこに?」

「わからない。なんせ一敗するだけでも街から出ていかなければならないからな。普段は隠れているわけよ。だが入れ替わりが起きたときは会うことがしきたりとなっている。その時会えるさ」


となるとすぐに会えそうだな。うーんどうする、そこで倒すか? しかし情報がまだまだ欲しいな。それに目立つ。後回し? そうすると次いつ会えるかわからなくなるか。迷いどころだ。それから行方不明者のことを聞きたいがとりあえずはやめておこう。これもルーラーさんから。出会ったばかりで生き延びるために必要ではないことを聞くと運営関係者だと感づかれる可能性がある。


「はは、いいぞ坊主。仲間になって話をしながら俺達を警戒している。そうだこの街は皆敵、味方は己一人だ」


まあ怖い顔してるからビクついてるんだけなんだけどね。人は見た目によらないとは言うけどこの場合は見た目通りだな。男は余程気に入ってくれたのか俺が話をしなくても色々教えてくれる。


「この五箇所は物資の着弾位置、それと井戸がそれぞれあるんだ」


物資が落ちる場所と井戸を記入。生きていくならまず水と食料。そこを確保しているわけだな。そして井戸や物資の場所は最も狙われやすくなる。そこで支配して分け与えることで秩序を保っている。ボスのアレスを倒さないほうがいいか? 支配しなくてはならなくなる。放置して次階層へ? 帰るとき面倒なことになるかも。第三階層で争いが起こるだろう。そうなると恨み、逆恨みに会う可能性がある。戦いに巻き込まれると、強い能力を持っているとはいえどうなるかわからない。混戦状態は怖いな。それに結局は現在のように誰かが支配する状態に戻るだろう。荒らしてしまうのも悪いか。

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