第12話 強化魔獣捕獲作戦

「そっち行ったぞー!」


俺達よりもレベルが高そうな冒険者達が魔獣と戦っている。多少ダメージを与え弱ったところを取り押さえ、慣れた手つきで魔獣を縛り上げる。レベル上げではなさそうだ。


「僕らは賭けコロシアム用の魔獣を生け捕りにしているのさ」


冒険者ランク2から使用できる施設、賭けコロシアム。賭けは誰でもできる。我々冒険者は戦う側。魔獣と戦い、何体倒せるか、魔獣を全滅できるか、全滅したタイム等を賭ける。連続して戦えるため経験値効率がいい。ただ、魔獣を捕らえるのは大変なため、低レベルの時期だけできる特別な稼ぎ。しかも人気なため連続ではできない。俺達も全員ランク2になったらやる予定。


「僕らは他に行くよ、頑張ってねー」


冒険者達が場所を譲ってくれた。礼を言い狩りを開始。あれから十日、皆ランクが2になった。コロシアムの受付へ向かう。賭けコロシアムはいくつかあり、中には魔獣対魔獣の賭けをしているところもあるとか。


「コロシアム参加者受付です。では冒険者カードを」


カードを渡すとコロシアムを案内してくれた。控室ではこれから戦う冒険者達が居た。皆緊張の面持ち。魔獣よりも大人数の前で戦うのは結構緊張するかもね。受付に戻り予定表を見せてもらう。やはり混み合っているようだ、俺達が参加できるのは十日後。契約して、十日が過ぎ再度コロシアムへ。選手控室に入り準備する。装備はコロシアムで用意された武具、青銅装備。俺達が使っている装備より良いものだ。


「次はハジメ様達です、コロシアムへ」


二人と話をしていると呼び出しがかかる。試合場までの道を歩いていると緊張してくる。


「それでは初顔、ハジメPTの入場だ!」


コロシアム内へ歩み出ると歓声が上がる。入ってきた門が閉じられ、俺達を見て賭けがスタート。レベルとクラスは公表されている。これらの情報を元に賭けをする。


「皆さんよろしいですね、では試合開始!」

「うおーやれー!」

「潰せー!」


盛り上がっている客席。魔獣は人類の敵、毎年かなりの数の被害者が出ている。その敵を殺しまくるからとても受けが良いようだ。普段の生活のストレス発散にもなる、賭けというよりもそちらの意味合いが強いようだ。国もこの賭けに力を入れていて、なんと補助金がでているとか。客はストレス発散をしながらほどよく賭ける。良い賭けだね。


「生活かかってます! お願いします!」

「今回は勝つ! 嫁は取り返す!」


……聞かなかったことにしておこう。魔獣が描かれた看板がついている門から魔獣が登場。三体がコロシアムへ入ると門が閉じ戦闘開始。一匹が飛びかかってくる。盾で受け、そのまま戦棍で攻撃、一匹目を仕留める。二人もそれぞれ仕留めあっという間に全滅。次の魔獣が投入される。敵は段々と強くなる。それでも余裕でさばける程度の強さ。次々と片付け、最後の魔獣も撃破、戦闘終了。


「そこまで! お疲れ様でした。勇気ある冒険者に皆さん拍手!」


会場は拍手に包まれる。こうしてコロシアム初体験は終わる。受付へ行き報酬をもらう。なかなかの額、経験値も結構入った。終わってすぐに次の申し込みをする。次回も十日後。連続でやりたいところだがこればかりは仕方がない。そして月日が流れコロシアムの日。試合場に入り魔獣を待つ。


「さあ魔獣の門が開いたー!」


構える俺達、だがなかなか出てこない。ようやく出てきたと思ったら一匹だけ。共食いでもしたのかな。この魔獣は見たことがない。魔獣はたくさん種類がいるからすべてを覚えてはない。いや、様子がおかしいぞ、血管が浮かび上がるこの特徴は。


「全員逃げろ! 魔獣の変異体だ!」


一瞬何事かとざわつく客達。だがすぐに気が付き逃げ出す観客。俺達も門を開けてもらい逃げた。そしてすぐにトータルライズを使い試合場に戻る。


「強い冒険者達を連れてきてください!」


コロシアムの衛兵、サシャ、リーナに頼む。思いついたことがあった、コイツを生け捕りにしてしまおう。サシャを襲った魔獣や強化魔人と似た特徴を持っている。コイツを調べれば何かわかるかもしれない。見た目は虫のような魔獣、サシャと対峙していた魔獣よりもあきらかに弱そうだった。戦闘してみる、動きが遅く攻撃力も弱い。攻撃をかわしながら考えを巡らせる。もう一つ狙いがあった。コイツの戦闘力を測る。俺の戦闘力はでたらめだ、参考にならない。高レベルの冒険者をぶつけることで奴の強さを調べる。応援が来るまで逃げ回りながら相手を逃さないように見張る。ここは金網の中、すぐには逃げられないから管理がしやすい。


「この中です!」

「おうよ!」


リーナが誰か連れてきたようだな。俺は強引に門を開け、通路に逃げる。隠れながら様子を見る。あれは山の団、大男達で構成されている有名なチームだ。五人いる、彼らなら魔獣の力を測れるだろう。強引に侵入、戦闘を開始する。


「コイツ強いぞ!」

「ぐっ!」


意外なことに苦戦する。力自慢の彼らと小さく動き回るあの虫とは相性が悪そうだが楽勝だと思っていた。それでも慣れてきたのか山の団が徐々に優勢に。


「ハイヤー!」


格闘家が強烈な飛び蹴りを決める。勝負あったな。おっと、トドメをささせないようにしなくては。


「生け捕りにしてください、看板の奥の牢に閉じ込めて!」


隠れながら大声で叫ぶ。理解してくれたようで、門を開け、魔獣を奥へ突っ込んでくれた。見事確保に成功。調べることで奴らの正体がわかるかも。そして魔獣の強さをある程度知ることができた。翌日からはいつもの生活。魔獣はより強固な施設に移動、コロシアムはまた使えるように。強力な魔獣が現れたため、予約が減り、五日後に予約を入れられると倍の効率に。個人的には、今は変異した魔獣がいつ現れるかわからない状況、それならむしろここで出会ったほうが安全まであるなと考えている。金網があって衛兵がいるからね。外で急に襲われるよりはマシ。不意打ちされると俺も死ぬ可能性はある。まあ、お客さんも減ってしまったけど。騒動が収まればまた戻ってくるのでは。ということで俺達はコロシアムに参加することに。三日後情報が入ってくる。虫の魔獣は森に広く分布する小さい虫と似た見た目であることがわかる。その虫をそのまま大きくした姿なのだとか。なんらかの要因により急激に成長した、進化したのではという仮説がたてられた。いいぞ、奴らの謎に迫っている。しかし三日後、魔獣を輸送中に、魔人が現れ魔獣を奪い去ってしまったという報告が入る。謎が残ったままになってしまったが、魔人がわざわざ人間の街まで来て奪っていくほどに彼らにとっては有用なものなのではという話が上がる。強化された魔人も血管が浮いてたな。もしかしたら関係があるかもしれない。

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