第9話 エルフ娘
「聞きたい事とはなんじゃ」
「はい、俺のレアスキルに関係することなんですが」
フルスラッシュの威力を見てもらいガウスさんの感想を聞くことに。湖に向かって撃てとガウスさん。人がいるかもという問いに私有地だから勝手に入っているやつは退治しても問題ないと答える。まあ人の気配はなさそうだ。剣を貸してもらいフルスラッシュを放った。
「フルスラッシュ!」
力強く振られる剣。衝撃波は湖を切り裂いていく。湖の底まで届きまだ勢いは止まらない。湖を越えそのまま奥の森にまで剣撃が流れていった。ガウスさんに感想を聞こうとそちらを見る。
「み、湖が割れおった」
杖を落とし体を震わせるガウスさん。落ち着くのを待ち話を伺う。知っている最大の威力はラングさんのフルスラッシュ。これはそれを遥かに超えている。世界は広い、ラング以上はいるだろうがこの威力はありえない、おかしいと答える。いや待てよと思い出したかのように空を見上げるガウスさん。
「剣皇サウザンドならもしかしたら、しかしのぉ」
剣士最強、剣皇サウザンド。彼が暮らしている場所はここから遥か遠くの異国の地。剣士だらけの国。代々最強の剣士がその名を継ぐのだとか。ガウスさんは何度か会ったことはあるがいつも顔を布で巻き正体がわからないようだ。その力も正直眉唾で、山を真っ二つだとか、海を切り裂くなどありえないレベルの強さと噂されている。実際にその力を見た者は居ない。ガウスさんも彼の技どころか戦っているところを見たことはない。おそらくは尾ひれがつきすぎて話が大きくなったのではと。たしかに嘘くさい話ではある。そういった話はよく盛られるからね。ということで世界一位のスキルの謎はさらに深まってしまった。
「失礼します」
挨拶をし街へ帰る。お腹が空いたな、店に入り料理を注文し食事、宿屋で眠る。朝、仕事をする前に話をしていると、サシャが耳の長いエルフの女の子に声をかけられる。金髪で耳が長く美しい容姿、ファンタジーではよく聞く特徴のエルフ。。この世界は人間以外にも数多くの種族がいる。半分獣の獣人も多数いる。
「久しぶりサシャ」
「リーナ! いつぶりかな」
どうやら知り合いらしい。聞くと、10年前にラングがエルフの国で活躍、その時知り合ったようだ。エルフの国はここから近く、子供の頃はよく遊んでいたとか。彼女も冒険者になるためこの国に来たのだとか。先程手続きを終え冒険者になりたて。
「ヘー、この人がサシャの仲間?」
こちらに近づき覗き込んでくるリーナ。顔が近い。
「ちょっとリーナ?」
「ふーん、ルーラーさんに賭けで勝ったって聞いたけど強そうには見えないな~」
情報屋に興味があって、将来情報屋の仕事をするのもありかなと語るリーナ。情報屋になる時にルーラーさんを負かして鮮烈デビューする予定だったとか。
「まあいいか、勝負しない? アナタが勝てばPTに入ってあげる。負けたらルーラーさんに間接的に勝った女! の称号を得るということで」
俺はサシャの方を子犬のような目でみつめ彼女に助けを求める。お手上げの身振り。結構わがままなところがあってこうなるともう止められないとか。仲間は欲しいけれど。勝手に称号作っちゃって大丈夫かな。
「サインゲームは知ってるよね」
俺の返答を聞かず話が進む。ふむ、筋金入りだな。ゲームはいわゆるジャンケン。握りこぶし、親指上げ、小指上げの三種の手のサインを出し合い勝負する。拳は小指に強い、小指は親指に強い。親指は拳に強い三すくみ。このゲームの一発勝負を提案してきたリーナ。勝負を受けることにする。
(フフ、引っかかった。私のレアスキル「ホークアイ」は一時的に周りの動きが遅く見える能力。彼がサインを出した後に出せば必ず勝てる)
ワーオリファンの掛け声とともにサインを出す。ワーで手を出してオリで挙げてファンで出す。サシャが審判をしてくれた。勝負が始まる、サシャが掛け声を。
「ワー、オリ、ファン」
(ホークアイ! ずっと握ったまま、親指を上げて勝ちぃ!)
お互い手を出し合う。リーナは親指、そして俺は小指。
「ハジメの勝ち」
「な、なんで」
悪いな。ルーラーさんが知らないところで負けたことになるのはよろしくないんで勝ちにいかせてもらった。スキル「タイムソリッド」、時空魔道士が使える時を止める魔法。彼女が動いた瞬間に時を止め小指を動かし勝利した。
「もう一勝負!」
「勝つまでやるなんて相変わらず負けず嫌いだね」
今度はスライムボール投げ。物体に当たると破裂し中の水分が飛び散る。投げあい当てた方が勝ち。俺から投げる。余裕で避けて一発で決めると豪語するリーナ。服を脱ぎだす俺。
「ふふ、当たると濡れるけどまだ早くない?」
スキルトータルライズを発動。ムキムキの筋肉男へ変身。
「ちょっ!?」
驚きながらもゲームスタート。スライムを彼女に向かって投げる。
(ホークアイ! 見えた、けど速すぎて‥‥!!)
避けきれないと悟り顔を背けるだけのリーナ。土煙を巻き上げながら高速で走り、回りこむ俺。スライムを身体で受け止める。爆発音とともにスライムが飛び散る。彼女はその場に座り込む。
「完敗だね……」
「大丈夫かい?」
問題ないと立ち上がるリーナ。
「約束通り仲間になってあげる」
こうしてエルフのリーナが仲間に加わった。よろりと倒れそうになる。彼女を支える。
「えへへ、ありがと(負けちゃったけど欲しいものが出来たかも)」
(リーナ、もしかして)
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