第8話 道場
ギルドに戻りテーブルにつく。サシャが隣に座り向かいにはルーラーさん。
「お金もありますよ」
「いくらだい?」
二人で集めた泣けなしの金2024アンユヌを見せる。
「ウチは一口十万からだが」
「じゅ、じゅう!?」
一依頼十万、無茶苦茶高い! 口から泡を吹きそうになる俺。
「いいさ、賭けを楽しめた。今回はタダでやってやるよ。それと仮契約をしておこうか」
本来なら契約してからでないと情報収集してもらえない。そして当然契約にも金がかかる。お金が払えるようになったら契約して仕事をするよという契約を結ぶ。彼はかなりの人気情報屋。簡単には契約できない。どうやら気に入ってもらえたようだ。いいなーと羨ましがるベテラン冒険者。さて本題に。
「父、ラングの師、ガウスさんを探してもらいたいのですが」
「ガウスさんだね、わかった」
メモ帳に名前を書くルーラーさん。軽く話をして解散。見つかるといいけど。俺も騎士の道場を探すことにする。地図を見ると道場は他クラスと比べると少ないことがわかる。騎士の人気がないからだ。ダメージを受けると痛いからだ。リアルならなおさら嫌な役回り。それもあってかこちらは簡単に決まった。みんな揃って同じ道場の名を。ここの王国騎士団にも教えているという名門。ちなみにこの街は王都で城もある。そしてその名の道場はいくつもあり内容は同じ、同系列の道場。地図を見ても六割その名の道場だった。これだけ名の通ったところなら大丈夫だろう。早速その道場へ行くことにする。
「私が現当主のハロックだ」
代々続く騎士の技を受け継ぐ道場、その道場主のハロックさん。多数の傘下を抱える道場の長。数多くの有名騎士を排出、名門中の名門。
「ハッ!」
練習生達が稽古をしている。激しいぶつかり合い、気合の入った稽古だ。明日から通えるよう手続きをする。本来なら当然お金がかかるが、冒険者になりたてなら半年間免除される制度がある。どの冒険者も免除期間の半年間は道場に通う。魔物との実戦もするので半年あれば大体基礎は覚えられるようだ。カードを見せ名前を記入。こうして安く道場に通えるようになった。翌日、朝から昼まで魔獣退治、昼食後騎士の道場へ。
「主に盾の扱い方を教えている」
魔獣戦を想定した盾の使い方を学ぶ。盾の構え方、大型の盾の下部を地面に突き刺し耐えたり、裏技的に戦棍をつっかえ棒にして大型の魔獣が突っ込んできても耐えられる方法など基本から実践的なものまで教えてくれる。なるほど、勉強になる。
「スキルの練習をする」
練習生がパイルガードを発動、盾が淡く光る。盾にマナを流し防御力を上げるスキル。俺もスキルを使う。相手側が戦棍で盾を叩く。勢いよく叩いたがほぼ音がしない。かなり威力を吸収しているようだ。お相手さんは困惑気味。まあちょっと特殊でとごまかす。
「今度はシールドブレイクだ」
同じようにマナを盾に通し、盾ごとショルダータックルをする技。攻撃系スキルは人には使えないな。ハロックさんにこっそり事情があり出来ないことを伝える。少し考え察してくれわかったと答える。稽古終了、帰りにハロックさんに呼び止められる。
「レアスキルかな? 外部には秘密にしておくから見せてもらえるか。練習生の力は把握しておきたいんだ」
今までの態度からして真面目で非常に口が硬そうだ。それに俺のスキルは危険だと認識してもらった方がいいかもしれない。わかりましたと了承し場所を移動、街の外に出て巨大な岩が並ぶところへ。適当な岩を選びスキルを放つ。
「シールドブレイク!」
盾に触れた瞬間、分子分解を起こすように岩が粉々に粉砕されていく。砂どころか気化してしまう岩。人に使わなくてよかった!
「どういうことだいこれは!?」
口を大きくあけて驚いているハロックさん。とにかく攻撃スキルだけは危険と説明。帰る頃には落ち着いて理解してくれたようだった。次の日も何事もなかったように稽古をする。晩ごはんをサシャと一緒に食べて帰ろうとしたところでルーラーさんから連絡が。
「ガウスさんが見つかった。しかも弟子にしてもらえるぞ」
「もう見つかったんですか」
「はは、実はな」
ガウスさんとはそもそも契約をかわしているとか。最初からどこにいるのか知っていた。仕事の合間にガウスさんの家に寄って聞いたようだ。ただ弟子を取るのはもうやめようとしていたところをルーラーさんのお願いということで無理を通してくれたとのこと。上級情報屋すげえ! 場所は街から出て湖がある場所。比較的近く、狩りが終わったら寄っていくには丁度よさそうだ。翌日ルーラーさんと一緒にガウスさんの住まいへ。
「ふぉふぉ、もう歳だからのぉ。今回だけじゃぞルーラー」
「ありがとうございます」
それではとルーラーさんは帰っていった。挨拶をするサシャ、ラングさんの娘というのは聞いているようだ。
「あの悪ガキも今じゃ父親か。歳を取るわけだ」
俺とサシャは顔を見合わす。厳格そうな人だったけど親父さん昔はやんちゃだったんだな。思わず笑ってしまった。
「ただいま帰りました」
大荷物を持つ女性が家の中へ入っていく。街へ買い物に行っていたのかな。荷を置くと防具を身に着けこちらへ。
「孫のディーラだ。よろしく」
冒険者をしていて剣の腕を磨きながらたまにガウスさんのお世話をしているとのこと。緊張するサシャ。剣士界ではかなり有名な人物のようだ。ガウスさんが教えながらたまにディーラさんが相手をしてくれるわけだ。なかなか贅沢な状況なのかも。剣技を披露するディーラさん。非常にきれいな太刀筋。芯がブレずに自由自在に剣を操る。こうしてサシャはガウスさんの弟子になる。今後は午前に狩り、午後は修行だな。
「ここまで」
「ありがとうございました」
そうだ、ガウスさんなら剣士の高みを知っているのではないだろうか。フルスラッシュを撃てば彼なら分析して俺のスキルの謎が解けるかも。俺は残ることにした。サシャとディーラさんは先に帰っていった。
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