第5話 剣聖
今後は真面目に、できるだけスキルは使わず戦っていこう。まずは自分本来の力に合った戦いをしよう。反省し、もう一回ただの低レベル騎士として一人戦い、一般的な冒険者になれるよう努力することにした。この際だから採集等、戦闘以外もやっておこう。何事も経験だ、こうして再出発を決意。
「ラング様だ!」
「剣聖様!」
ギルドの外が騒がしい。外に出ると騎士と少女を取り囲むように人だかりができていた。聞くとこの国で有名な剣士ラングが娘を見送りに来たとのこと。
「サシャよ元気でな」
「はい、父さん!}
父親の励ましの言葉の後、少女は仲間を引き連れ冒険者ギルドに入っていく。ラングは馬車に乗り去っていった。さてと、仕事を探すか。ギルド内部に戻り依頼掲示板を眺める。
「固どんぐり集め、いくつでも」
採集依頼だな、これにしよう。大きなかごを借りどんぐり拾いへ。現地に到着。地上一面にどんぐりが転がっている。これ全部そうか、楽な仕事だな。初めて来たけどお金が転がっているように見えた。しかし一つの疑問が頭に浮かぶ。積もるほど数があるけど人が居ない。これを持って帰るだけで結構な金策になると思うが人気がないのはどうしてだ。普通に考えて取り合いになりそうなものだが。答えは出ないまま採集完了、受取専用の場所へ。受付の人がかごを受け取り、水桶へどんぐりを放りこむ。ほとんどのどんぐりが浮かび上がり、下に沈んでいるのはわずか。
「はい、下に沈んだこれだけを買い取りますね」
上に浮いているものは虫食いのどんぐり、中身が食べられて無いから軽くなっていて浮いてくる。やられた、ほとんど外れじゃないか。わずかばかりのお金を受け取る、こいつは労力に見合わないな、人気がない理由がわかった。他採集をいくつか試してみる。どんぐりがマシなレベルな依頼まである、基本どれも儲からなかった。高めの採集は、強い魔獣が付近に生息していて襲ってくる、距離が遠い等の難易度が高い依頼。まあそうか、採集なら一般人でも出来るしね、安くなるよね。冒険者は基本魔獣退治が儲かりそうだ。次の日、今度は魔獣退をしよう。すぐ狩りにはいかずまずは資料室にこもり解体の勉強をする。
「まずは血抜きをしてと」
魔獣は肉や皮が利用される。ただ倒して証拠品を手に入れるだけではなく、解体を出来るようにしたい。そうすることで報酬以外の物を得ることが出来る。
「覚えたぞ」
レッドアイの解体を頭の中に叩き込みギルドの解体場へ行き見学、討伐依頼を受け現地へ。魔獣を倒し血抜き、数が集まったら安全な場所で解体作業をする。レッドアイからは肉と皮を取る。肉が食され皮が靴や服などに利用される。内蔵を抜き取り肉と皮をナイフで剥がしていく。意外と難しい、そうだよな、ナイフなんて滅多に使わないない、それに動物を解体するのはこれが初めて。一体目は見事に失敗、肉はぶつ切り状態、皮はうまく切剥がせず傷だらけに。数体解体するうちにうまく皮を剥がし肉を切り分けることが出来るようになってきた。ギルドに持ち帰り証拠品を提出し報酬を得て、肉、皮を売る。いつもの倍くらいのお金が手に入った。ようやく冒険者としての第一歩目を進んだ気がした。ふむ、記念に今日はちょっといい晩ご飯を食べるとしよう。こうして魔獣狩りを続け、とある日。朝狩り場に来たのだが、魔獣がいつもよりあきらかに少ない。あの巨大な魔獣が現れたときも魔獣が減っていたな、嫌な予感がする。
「ぐぁーー!」
「サシャ様、お逃げください!}
森の奥から叫び声が聞こえてきた。どうやら魔獣に襲われているようだ。トータルライズを使い声がした方向へ走っていく。見つけた、大型の魔獣に一人立ち向かう少女。冒険者達が彼女の周りに倒れている。付近に生息していない見たことがない魔獣だ。血管を浮き上がらせている、強そうなのはわかる。体を震わせながらも相手に剣を向ける少女。ここからなら届きそうだ、足に力を入れ爆発するようなジャンプをする。一足飛びで魔物の前へ。
「ぐっ、増援か!?」
見た目は魔獣っぽいからな。ちょっとショックだけど仕方がない。魔獣がこちらに飛びかかる。
「ガルゥーー!」
「おらぁ!」
噛みつこうとする魔獣の横っ面を殴りつけた。吹っ飛んでいく魔獣。そしてふらつきながらも立ち上がった。俺の拳を食らってまだ生きているなんて、頑丈な魔獣だ。
「うぐっ!」
「大丈夫か!?」
心配して少女の方を少し見た一瞬を見逃さず、魔獣は逃げ出した。冷静な判断だ、思わず感心する。追おうととしたが戦闘をすると倒れている冒険者を巻き込んでしまう可能性がある、放置するとしよう。少女はその場に座り込む。腕を怪我していた、ポーションを取り出し回復。倒れている冒険者達にもポーションを使用、傷が治る。目を覚まさないが皆呼吸をしていて気絶しているだけ、大丈夫だ。安全な場所まで移動、テントを張りその中に彼らをいれる。筋肉大男状態の俺はすぐにでも去りたかったが、あの魔獣がまた来る可能性を考え彼らが目を覚ますまでここで待機することにした。焚き火をしていると少女が疲れた顔で向かいに座る。
「ありがとうございました、名のある格闘家の方とお見受けします」
「そんなとこ」
嘘は好きではないがこんな状況だ、合わせるとしよう。今はムキムキの大男。元に戻れば誰かはわかるまい。少女がうつむき涙を流し始める。
「私は冒険者失格です」
「何が起こったんだ」
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