第4話 調子に乗るとろくなことがないよね

三階建ての建物くらいの大きさはあろう魔獣が小さな魔獣を貪り食べていた。ドラゴンのような姿、黒いオーラを身にまとっている禍々しい魔獣。あきらかに強そう。しかし俺は最強、何を恐れることがある、退治してやるぜ魔獣さんよ。スキルもある程度買って手に入れ更に強くなっている。もはや負ける要素はない。構えて戦闘態勢に。


「グルォォーー!」


凄まじい雄叫びが魔獣から放たれる。衝撃波が発生、周囲の木々が吹き飛ぶ。一般人ならこれだけで即死しだろう。こちらを睨む魔獣、ターゲットにされたようだ。口を大きく開け炎を吐き出した。


「速い!」


超高速で射出された炎をかわしきれずダメージを負う。無敵と思っていたこの肉体がダメージを負った。おごり油断していたとはいえまさか攻撃を当ててくるとは。そして一つの可能性が生まれた、コイツは俺を殺せるということ。これちょっとまずい相手かも? 後悔先に立たず、戦闘を開始してしまった、冷や汗が俺の頬を伝う。今度は氷のブレス、予想していたため避けられたが、前足を使い俺にひっかき攻撃をする。見事に命中、胸を切られダメージを食らう。


「くっ、くそ、負けてたまるか!」


角から電撃が発射、俺に向かって飛んでくる。


「クイックステップ!」


足に力を与え速度が上がる付与術士のスキル。ステアップスキルは強い方が優先される。強いクイックステップが速さを上書きする。電撃をかわしながら回復スキルを使い、体力全開、今度はこちらの番だ、前足のひっかき攻撃をかわし懐に潜り込む。


「神印掌!」


指で独特な印を結び、闘気を相手に叩き込む格闘家のスキル。奴の心臓めがけ放つも、左腕で防がれる。あまりの威力にその巨体が宙に浮き後方へ飛んでいく。倒すことができなかったが、左腕の破壊に成功。これなら倒せそうだ、焦らせやがって。右手を左腕に重ね呪文を唱える魔獣。奴の左腕が淡く光る、そして何事もなかったかのように地上に置かれた。完全に治っている、まじか、回復まで使うのか。おいおい、敵が回復使うのはRPGじゃ禁じ手だろ!


「落ち着け、やつを倒すために考えろ」


攻撃スキルはこのように防がれ耐えられる可能性が高い。MP消費が痛い。俺のレベルはまだ低い、MP消費合戦になれば確実に俺が負けるだろう。となるとMP消費を抑え戦闘するしか無い。作戦としたは魔獣にスキルを使わせMP切れを待つ。トータルライズとクイックステップは長時間持つ。更に攻撃力が上がるスキル「マイトフォーム」防御力が上がる「ミスティックシェル」を追加。後はダメージを受けたときに回復。盾のダメージ軽減のスキルを持っているが効果は一時的だからMP節約のためにそれは使わず動いてよける。


「マイトフォーム、ミスティックシェル! うおぉっ!」」


殴りつける、スキルほどではないが高威力の攻撃でダメージを与えた。魔獣の攻撃をかわす、たまに当たりダメージを食らう。壮絶な削り合いだ。俺のMPが尽きるのが先か、奴のMPが尽きるのが先か。戦闘は熾烈を極める。俺とヤツの血と肉が辺りに飛び交う。


「だらぁ!」

「ギィゥッ!」


俺の拳を受け止め折れる右腕。だが回復しない、遂にこの時が来たか。翼を羽ばたかせ飛んで逃げようとする魔獣。そうはさせない、奴の頭上に飛び神印掌を上から放つ、背中に攻撃を受け叩き落され地上で這いつくばる魔獣。カウンター気味に左前足の攻撃を食らう。


「ぐふっ、だがこれで終わりだ!」


奴の前足を掴み、右手をやつに向けスキルを放つ。


「ウインドブレイド!」


風の魔法、真空の刃がヤツの首めがけ発射。怪我をしているためガードが出来ない魔獣。


「グボォッ!!」


命中し奴の頭は切断され地上に落ちた。切ったところから血が吹き出る。しかし首がないというのにまだ動いている、生命力があるやつだ、まだ死んでいないかもしれない。徹底的にとどめを。氷の魔法アイススピア、尖った氷がヤツの身体を貫く。串刺しになり氷が地面に刺さり身動きが取れなくなる魔獣。今度は土の魔法、ロックブレイク、多数の硬い金属を生成、回転する金属体が奴の身体をすりつぶしていく。


「フレイムバレット!}


最後に炎の魔法で奴を焼却する。近くにいる植物、魔獣関係なくすべてを焼き尽くす。


「お、終わった」


残ったのは頭部の骨のみ。焼きただれた大地が炎の魔法の凄まじさを物語っていた。戦闘のときに掘られた穴に頭部を入れ埋め、手を合わせる。調子に乗ったときはだいたい足元をすくわれる。調子に乗るなという神様からのメッセージなのかも。入っちゃいけないところには入らないようにしないとね。RPGでもちょっと場所が変わるだけで強い魔獣が現れるなんてことはある。声が聞こえてきた、魔人だ。彼らに見つかる前に俺はこの場から去った。


「反省しなくては」


恐ろしく強い魔獣だった。きっともっと強い魔獣がゴロゴロいるのだろう。いくら強いといっても人間単体ではそこまで強くないものだ。一人でラスボスを倒すゲームはなかなかない、仲間の協力が必要だ。今後はもっと慎重に動かなければな。人間一人などか弱きものよ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る