第3話 俺様最強伝説

ステータスを見てみる、でたらめな数字だ。どれほどの強さか見当がつかない。自分の変化に驚いていると、地面に空いた穴から魔獣が飛び出してきた。目が赤くグルルと鳴きながらこちらを威嚇している。この世界では最弱とされる魔獣レッドアイだ。見た目は角が生えた大きなうさぎ。丁度いい、試してみるか。魔獣が飛びかかってくる、こちらは迎撃しようと拳を繰り出す。


「ハッ!}


瞬間、動いた拳が空気の壁を突き破り大きな音が発生、ソニックブームが生まれる。拳が魔獣の顔にヒット、貫きながら身体を崩壊させていく。宙に浮いた水の塊を殴るような感覚。そこへ衝撃波が追い打ちをかけ魔獣の身体は辺りに弾け飛んだ。予想はしていたが強すぎだろ。顔についた血肉を拭いながら気を落ち着けていく。考えてみろ、冗談みたいな強さに驚きを通り越して呆れていたが、強いというのはいいことじゃないか。弱くて即死するよりも全然いい。


「この力はオリファンをやり込んだ俺へ神様からのプレゼントかも」


基本人目を避けないとまずいが、もし見られてもこれだけ身体が変化しているなら誰かはわからない。加減ができるから魔法と違ってコントロールが可能。今回のスキルは使えるぞ。魔獣退治はできそうだ。報酬を得るためには依頼を受け魔獣の死骸の一部を持ち帰る必要がある。先程は風船を破裂させたように飛び散ったから回収不可。


「そーっと、そーっと当てる」


何匹か試しに狩り、小指をゆっくり擦るように当てることで加減をして倒すことに成功。レッドアイの証拠品、頭の角を手に入れることができた。いいぞ、これで金稼ぎができる。普通に戦うよりも安全な上に効率がいい。PTはまた後で考えることにするか。お金が手に入るなら一人でも問題はない。そもそもこの強さならPTを組む必要がない。ギルドの資料室に行きクラスの本を開き今後の方針について考える。


「どのクラスにするか」


そうだな、基本のクラスは騎士にしよう。HPが高く盾のスキルを使える防御型のクラス。俺はレアスキルを使えば強いが、通常時はまだ弱い初級冒険者。思わぬところで強烈な一撃を食らって即死なんてことは避けたい。HPを上げ少しでも死のリスクを減らそうという考えだ。魔獣を倒してレベルを上げるときはクラスを騎士にすることに決める。ギルドへ行きクラスを騎士に変更。翌日、依頼掲示板から依頼書を大量に剥ぎ取り受付に渡す。依頼を受け魔獣退治へ。


「狩るぞー!」


トータルライズを発動、魔獣狩りを始める。トータルライズは長時間持つ、一日中狩リが出来るほど。MPにとてもやさしい。逆に言えば長時間筋肉の化身になってしまうからその間は街には入れない。時間を計算して使わないとな。数匹魔獣を倒すとレベルが上った。レベルが2になりステータスが上がる。予定通りHPの上がりがいい。狩りを終え街に戻る。次からは他の魔獣も試そうかな。ギルドに戻り休んでいると、近くにいる冒険者達から不穏な内容の会話が聞こえてきた。


「魔人を目撃したという情報が入った」

「あくまで噂だが魔神王が近々復活するとか」


魔人は人類の仇敵。大昔からずっと争ってきた相手。最近は大人しくしていたようだが。目撃されたということは裏で動いている可能性はあるな。魔神王は魔人が崇拝する神。人類側が魔神王を過去に封印、その時から平和に。封印を解いてまた悪さをしようといったところだろうか。迷惑な奴らだ。しかもここから魔人領が結構近い。魔人が出るかもしれないから気をつけないとな。しかし魔神王か、懐かしいな。オリファンでは何度も戦う相手。出る度に姿形が違う。全レベルキャップ記念戦もコイツだったな。もしかしたら過去俺達が倒した魔神王かも。ストーリー上は力を弱め封印したことになっていたな。さて、休憩は終わり。資料室へ行き戦闘する魔獣を調べる。次の日魔獣と戦ってみる、余裕の撃破、証拠品を入手、問題なく倒せそうだ。その付近で狩りをするようになる。


「ふふふ、余裕だな。まあ最強だからな」


狩りは順調、レベル4まで成長。強さに溺れ調子に乗り始めていた。まあ力がすべての世界だから、これだけの強さを手に入れてしまったらこうなってしまうのは仕方がないよね。稼いだお金でスキルをいくつか購入、もはや無敵。


「どこにもいないな」


魔獣が中々見つからない、狩り尽くした? いや、昨日魔獣は大量にいた。他の誰かが狩り尽くしてしまったのだろうか。探し回るうちに普段とは違った場所に入ってしまったことに気がつく。場所は森の中。この広大な森は人類領と魔人領が隣接しており迷い込みやすくなっている。


「しまった、ここは魔人領だ。しかし大丈夫か、最強だし」

「ギィーー!」


人間領へ戻ろうとした時、奥から魔獣の鳴き声が聞こえた。なんだ、いるじゃないか。せっかくだからコイツだけでも狩っていこう。音がした方向へ向かう。少し開けた土地にソイツは居た。


「な、なんだこの魔獣は」

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