第2話 世界一位
「これは冒険者カードだ。依頼を受けるときに使う。他、国境越え等にも使えるから便利なものだ、無くさないようにな。依頼は依頼掲示板に張り出されている。攻略できそうな依頼があったらその依頼紙を受付に渡し、依頼を達成すれば報酬を受け取ることができる。それからこれはギルドからの餞別だ」
冒険者カードとお金、付近の地図を受け取る。1000アンユヌは入っている。アンユヌはこの世界のお金の単位。ギルドを出て貰ったお金を使い買い物をする。武器防具屋を見て回るか。武器が描かれた看板を発見、まずは武器から。
「いらっしゃいませ」
クラスはまた変える可能性がある、どのクラスでも使えそうな物を選ぶ。木の棍棒、これは鈍器か、使いやすそうだな。剣や槍よりも現代人には馴染みがある。武器を購入。次に防具屋へ行って革の服を買った。買い物を続ける、今度は道具屋へ行きポーションを購入。ダメージを受けても一瞬で怪我を治す例の便利アイテム。さて、PTを組んで戦う前にレアスキルを確認しておこう。スキルを売っている店へ。どのスキルを使おうかな。店に並んでいるスキルの書を見ながら考える。いい値段するな、一生物だから仕方ないけど。持ち金からして買えるスキルは二つってところか。オリファンではレベル1でも制限なくそのクラスのすべてのスキルを覚えることができる。クラスを変更しても使える。魔法使いでも剣士のスキルを使えるわけだ。スキルはクラスのレベルとステの能力を参照する。魔法使いが剣士のスキルを使った場合レベル、ステを参照せず、いつまでも弱いまま。基本的に他クラスのスキルは死にスキルとなるが、ゲーム序盤なら回復等の一部がかなり使える。それからステータス強化スキルを使いステを上げても攻撃スキルの威力は同じ。通常攻撃は上がる、この仕様は気をつけないとな。ゲーム序盤に高威力を期待して同じ強さのダメージを出したときはがっかりしたものだ。ゲームがサ終した今となっては無駄な知識なのだが、まさかこんなところで生きてくるとは。
「炎の魔法、これにしよう」
スタンダードな魔法「フレイムバレット」を使おう。フレイムバレットは火球を撃ち出す魔法。置かれている本を手に取る。本には鍵がかけられていて、買うと鍵が貰える。スキル書を購入、スキル習得用の個室に移動。どこででも習得は可能だが他の人が覚えてしまうトラブルを避けるため人がいない場所を探し習得することを推奨されている。鍵を使い開放、スキル書を開く。薄っすらと本が光り、徐々に消えていく。念じると脳内にフレイムバレットの文字が浮かび上がった。無事習得したようだ。今度は魔法を試してみよう。地図を見て川があるところへ移動。大きな川だ、対岸まで2キロメートル位あるか。ここなら火の魔法が強化されたとしても大丈夫だろう。今なら誰もいないし見ていない。砂利の上に陣取り、手を掲げ魔法を唱える。
「フレイムバレット!」
手のひらの上に炎の玉が形成される。大きくなっていくな、さすが世界一位。……凄まじい速度で炎の玉が成長している。とんでもなくでかい。いや、でかすぎる! 焦っていると巨大になった火の玉が発射された。川幅を超えるほどの炎の玉が川に飛び込んでいった。当然大爆発、一瞬にして川の水が蒸発。そして、水が流れ込む。明らかに川底は深くなった。
「す、すごい!」
凄まじい威力だ。ははは、こんな強力な魔法を使えるならもうイージーゲームだな。
「……いやまてよ」
ある点に気がついた。確かに強力だがこの威力しか出せそうにない。手加減ができそうにない。つまり使うたびに幅2キロの川を蒸発させる威力の魔法が発射されることになる。
「だめじゃねーか!」
戦闘のたびに地形を変えていたらただの災害だ。これでは魔法スキルを使えない。基本的にスキルを縛って戦わないといけなくなったわけだ。状況が悪くなった。強すぎるってのも問題だな。
「今の爆発は川からだ!」
(やばっ)
爆発音を聞きつけた冒険者達がこちらへ。俺だとバレると色々面倒だ。見つからないように森に入り、隠れながら街に帰る。ギルドに逃げ帰り休憩しながら今後どう動くかを考える。そうだ、自己強化系なら問題ないかな。資料室にいきスキルを解説している本を探す。あった、自己強化のスキルを調べる。スキルはオリファンと同じだ。これだな、格闘家の「トータルライズ」が良さそう。格闘家に変更し、スキル屋に移動「トータルライズ」を買い覚える。今回は実戦。最弱の魔獣は一人でも苦戦せず倒せる。足が遅い、ピンチになったら逃げればいい。目的の魔獣が住む場所へ移動。スキルがどうなるかわからない、人がいないところへ。まわりには誰もいないな、さて、スキルを試そう。
「トータルライズ!」
身体に力が溢れてくる。筋肉がひしめき合い身体が大きくなる感覚、いや実際でかくなっている! 音を立てながら筋肉が膨張、このままでは革の服を突き破りそうだ、急いで脱ぐ。最終的に3メートルほどの大男に変化。水面を鏡にして自分の姿を見る。もはや俺の面影はなし、筋肉の魔獣がそこにいた。
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