第11話
王太子クラウスは迎賓館を辞して、居住している屋敷に戻った。
イリスト留学中に父王が亡くなったとの連絡が入り、すぐに帰国したが、その時には既に王宮は将軍が牛耳っていて、段々と身の回りが不穏になってきたので居を移したのだ。
入れ替わるように、王弟を名乗るグンターやその妻が王宮に住み始めたものの、クラウスにはどうでもいいことだった。
すでに将軍と宰相の影響力の大きかった王宮は、彼にとって敵地と言って差し支えなかったからだ。
「想定していたよりも落ち着かれたお方でございましたね」
執務室の椅子に座りクラバットを解いたクラウスに、侍従のグレアムが話しかけた。
イリストへの留学時にも付き従った青年で、クラウスが最も信頼をしている。
「そうだな。流石に動揺されてはいたがさて、どこまで信用して頂けるか……」
宰相の邪魔がいつ入るとも知れなかったせいで、こちらの話をまくし立てるしかなかったことを苦々しく思う。
もっと時間に余裕があれば相互理解のための会話に費やせたものを。
だが、本来の目的であった警告は十分にできたと思う。
王宮の手駒から伝え聞き、想像をしていた以上の美貌を持つ聖女は、一方的に語るクラウスを血の気の失せた顔でじっと見返していた。
聖女の部屋に入ってその姿を見た印象は、おっとりとして大人しそうだと言うものだったが、カリーナへの対応を見るに芯のある性格のようだった。
もっとも、聖女の存在が隠匿されている現状では彼女の立場は非常に危うく、カリーナの要求通りに不敬の罪で囚われる危険もあったのだが。
「戦争には反対のお考えのようでしたが」
「というよりは、巻き込まれるのは御免だ、というところだろうさ。神によって選ばれ、こちらの世界にもたらされた聖人が、戦争を主導するということの重大さまでは分かるまいよ。違う世界から来られたのだから無理もない」
「こちらでの勝手が分からない御婦人を利用するなど、クローツも地に落ちたものでございますね」
「否定はしないが、この部屋以外では言うなよ。お前がいなくなると俺が困る」
「承知しておりますとも」
実のところ、クラウスの屋敷にも監視用の鳥は毎日差し向けられている。それを見つけ次第駆除するのは、この屋敷の使用人の仕事でもあった。
そしてその使用人たちも完全に信用することはできない。
当然、厳選して採用してはいるものの、どこに宰相の目と耳があるか分からない屋敷内で安心して本音を零せるのは、厳重に術式を施してあるこの執務室内だけだった。
「差し当たっては、例の夜会への聖女様のご出席を差し止める方向でよろしいでしょうか」
「それしかないな。まったく、ジュリアスのやつが居ればもう少しやりやすかったというのに、真っ先にブルーノに噛みついて殺されるとは」
「将軍の台頭を一番懸念されていたお方でしたから、将軍も警戒していたのでしょう」
「それを差し引いても直情的な性格だったから、いずれは搦手に嵌った可能性もあるか。……あいつのためにも、決着をつけなければな」
「御意に……」
自分のため、友人のため、国のため。
不利な状況でも戦うと決めた主に、グレアムは礼をとった。
*・*・*・*・*
「クラウス殿下への目を増やせ」
クローツに五つある騎士団のうちの
王太子が聖女のいる迎賓館を訪れたと聞き、余計なことを吹き込まれる前にと向かわせた騎士たちは十分な仕事をして戻ってきたが、下級官吏でもできるただのおつかいに走らされた不満を、彼らは隠そうともしていなかった。
王太子と腹心の侍従はかなりの剣と魔術の使い手でもある。
その二人に圧力をかけるとなれば相応の者を充てる必要があるというのに、事情を理解していない騎士たちに苛立ちが募る。
「魔術師が不足しております。迎賓館の目を減らすことになりますが」
「構わん。警備兵もいるのだろう、どうせ何もできないのだから問題あるまい」
貴族の令嬢は身の回りのことはすべて侍女の手を借りなければならない。
些細な事でも雇った人間を使うことで裕福さを周囲に誇示しているのだが、それはつまり、ひとりでは何もできないということになる。
聖女の手足となる侍女をこちらで押さえている以上、迎賓館に割く監視は少なくても構わないと、未だに雨音が貴族令嬢だと思い込んでいるバルトロメウスは判断したのだ。
そうだ、例の侍女に逐一報告をするように釘を刺さなければ。王太子の訪問は寝耳に水だった。
軟禁している上に、公的にはいない事になっており、何の権限もない聖女の方はそれで事足りる。
それよりも王太子が厄介だった。
権限はほとんど剥奪しているとはいえ、第一王位継承者という威光は健在だ。
王都にいられると自分に不満のある貴族と手を組まれる危険性があったので、遠く離れた国境付近の地域に視察と称して向かわせて遠ざけていたのだが、最近になって有力な辺境伯と繋がりを持ったという情報が入ってきている。
バルトロメウスにとっても、彼の後ろ盾である将軍にとっても、王太子は邪魔な存在だった。
こちらのやり方に異を唱えられて青臭い正道を主張されると、どうにも我慢ができなくなるのだ。
政治の世界は綺麗事だけでは成り立たない。それを思い知らせてやりたくなる。
かなり強引なやり方でのし上がってきた将軍も同じ気分になるようで、率先して王太子を追い落としにかかっていた。
あまりにも邪魔になるようならいっその事、と誘惑に駆られてしまいそうになるが、現王以外に王族の血を引いている男性が王太子しかいないことを考えると、それは悪手だ。
王妃と側妃が一人ずつと愛妾が三人もいて、女遊びに余念がない現王にはひとりも子がいない。王に子を残す能力がないと考えるのが妥当だった。
王太子を廃してしまえば王家の血を絶やした上、後々の混乱が必至となる。
王宮が混乱するのはバルトロメウスにとって望むところではない。彼にとっては整然とした統治を行い、自分の有能さを示す場こそが望むものだからだ。
魔術師を下がらせて、便利に使っている男を近くに呼び寄せる。
「何か掴めたか?」
「今のところは何も。殿下も相当に警戒されておられるようです」
王太子の弱みを把握し、傀儡とするためにあれこれと探らせているものの、成果は芳しくない。
「シェルベ将軍にも同じことを言えるのか?」
「いえ、それは……」
「向こうは必ず夜会を妨害してくる。何でもいいから使える情報を持って来い」
「は……」
そこそこ役に立つ男ではあったが、もう替えどきかもしれない。
次に下らない報告をしたら左遷して、もっと使える人間を雇おう。
男が退室していくのを見届けると、バルトロメウスは決裁を待っている書類を手に取った。
*・*・*・*・*
ゆったりとしたワンピースに着替えた雨音はリビングのカウチに座り、膝の上に魔術の教本を広げていた。
けれど目は文字を追わず、ぼんやりと宙を見ている。
侍女達には午後の度重なる来客で疲れているように見えていたが、実際のところ雨音の頭の中はとても忙しかった。
なにしろ、王太子と鎧の男の両方に仕掛けた盗聴器から送られてくる音を同時に聞いているのだ。
音だけで状況を把握し、誰が話しているのかを推測し、更に教本の文字を読むというのは無理だった。
情報から隔離されていると自覚し、もしかしたら王太子も彼にとって都合のいい話を自分に吹き込んでいるのではないだろうかと軽く疑心暗鬼になった雨音は、集音機能を付けた芥子粒ほどの小さな魔力の虫を王太子の服の裾にとまらせたのだ。
景色の映像を送る魔力の鳥をアレンジしただけなので、即席でも作成の難易度は低かった。集音に機能を絞ったのが功を奏した形になる。
ただし、付与した魔力が底をつくと消えてしまう代物なので、常設はできない。
迎賓館から離れて雨音の耳が届かないところに行けば、何かしら本音が聞けるだろうと思い虫を仕掛けた結果、王太子は雨音に対して誠実に接していたことが判明した。
疑ってしまった罪悪感はあるものの、信用できるという確証を得られたのは嬉しい収穫だ。
一方、ついでにと宰相の遣いだった鎧の男に仕掛けた虫の方も収穫があった。
やはり宰相は信用ができず、鎧の男である騎士にも嫌われている上に、王太子と敵対しているのがはっきりしたことだ。
一緒に迎賓館を離れた王太子と別れて宰相の元へ報告に行く道中、騎士たちはずっと宰相への不満を愚痴っていた。
途中で虫を騎士から宰相の部屋の床へ移動させたので、その後のことは分からないが、相当嫌われているようだった。
そして王太子を探るように指示した会話で、王太子が雨音に事実を語っていたと裏付けが取れた。
やはり夜会が鍵になるのか、と雨音は聞こえてきた音声から今の状況を整理する。
戦争に雨音の同意があると示すための夜会は、全力で回避しなければならない案件だった。
夜会で戦争に反対であると訴えてみるのはどうだろう。
そう考えたが、自由に喋らせて貰えるのか疑わしかった。魔術で音を遮られてしまえば、自分の声を参加者に聞こえないようにできてしまう。
その場合、出席した時点で賛成していると見なされるのでは? と行き詰まってしまった。
悪い可能性ばかり浮かんでしまうのは下請け企業所属の悲しい性だ。きちんとリスクを把握しておかないと後で苦しくなるのは自分なのだ。上司はアテにならない。
今は上司っぽい位置にいる宰相が明らかに敵なわけだが。
結局、解決案が思いつかないまま次の日も朝から雨音は鬱々としていた。
昼過ぎになっても何も思い浮かばないせいで、気持ちばかりが焦る。
その様子を見ている侍女たちが心配そうにしているのも気づかず、深いため息をつく。
ティーテーブルに教本を広げてはいるものの、読む気にはなれずにいた。
こうしている間にも状況はどんどん悪くなっていき、身動きが取れなくなるのが分かっているのに解決策がない。
頼みの綱は王太子だが、はっきりと劣勢だと聞かされている以上、こちらでも何かしら手を打つ必要があるだろう。
何をどうやって?
どれほど考えても必ずそこで止まってしまう。目的があっても手段が分からない。
「……聖女様」
「……」
「聖女様」
「……、あっ、はいっ。どうしましたか?」
エイダに声をかけられていることに気づいて、雨音は表情を取り繕って微笑んだ。
侍女たちは気遣わしげにこちらを見ている。
「よろしければ人払いをいたしましょうか?」
「人払い、ですか? それはどういうものですか?」
聞いたことがあるような気はするがよく分からない。
「私どもは部屋から下がらせていただきます。聖女様はお一人でごゆっくりお寛ぎください」
なんてこった、そんなシステムがあったとは。
常に人が傍にいる環境に慣れようとしていた、今までの頑張りはなんだったのか。
とはいえ、よく考えてみれば、誰だって一人になりたいときはあるのだから、そういうものがあるのは当然だった。
「それじゃあ、お願いしてもいいですか?」
「勿論でございます。警備の者は残りますが見える位置には立ちませんし、なにかございましたら寝室のベルでお呼びくだされば、すぐに参りますので」
「分かりました」
膝を折ってお辞儀した侍女たちが静かに退室していく。
小さな音を立ててドアが閉まると、軽く周囲を見回して誰もいないことを確認した雨音は、両腕を突き上げて伸びをした。
「あー……、こんなことなら早く聞いておくんだった」
風呂とトイレと寝る時しか一人になれないものだと思い込んでいた雨音の失敗だった。
「一人になれたのは嬉しいけど、とはいえ、なんだよなあ……」
足を組んで、だらしなくぶらぶらさせながら呟く。
一人になれたとはいえ、悩みは解決しないのだ。
ふとクリストフに相談してみようかと思ったが、授業のときは侍女たちが壁際で待機しているし、クリストフが宰相と王太子のどちら側についているか不明だ。
それに、とうが立ったと揶揄される年齢とはいえ雨音は未婚の女性なので、内緒話と称して男性のクリストフと二人きりにしてくれるかは怪しいところだった。
こちらでのその辺の感覚は、雨音にとってはだいぶ古いものだと今日までに実感している。
あちらの世界だったら気分転換にコンビニにコーヒーを買いに行くんだけどなあ。
足を組んだままテーブルに頬杖をついて唇をむーっと尖らせる。こちらでは侍女たちの前ですら絶対にこんなことはできない。
考えに煮詰まるというのは仕事では良くあることだった。
そんな時はリフレッシュのために、コンビニへコーヒーを買いに出たものだったが、そうか、外か。
「出てみようかな」
丁度、止めに入る者は誰もいない。
そう決めた後の雨音の行動は早かった。
部屋の中を漁って紙と万年筆を探し当て、書き置きをする。
「夕飯までには帰ります、と」
服装は襟元までしっかりと留められたシンプルなドレスで、髪はゆるく三つ編みにしてもらっているので、外出するのに問題はないだろう。
リビングから庭に出るガラスドアを開いても誰も来ないのを確認してから、部屋の奥で昨日見た遮音と幻惑を組み合わせた認識阻害の術式を最高レベルで起動する。教本に載っていた、かくれんぼ用の術式よりもこちらの方が実用的だろう。
そしてこのレベルでの起動なら監視の鳥も誤魔化せるはずだ。
術式があるので意味は無いのだが、なんとなく足音を忍ばせて庭に出た。
今日も晴天で青い空に白い雲が浮いている。風は少し冷たい。
東屋のベンチの背もたれの上には暗示をかけた猫が、近くの木の枝に泊まっている魔力の小鳥を狙って隙を伺っている。
雲を目で追いながら、正面の門よりも通用門のような裏口を使おうと雨音は思いついた。
姿が認識しづらくなっているとはいえ、この状態で門を開ければ、ひとりでに門が動いたように見えてしまうので大騒ぎになってしまうかもしれない。
迎賓館なのだから従業員や業者が使う通用門や裏口くらいあるだろう。
そう考えて庭を囲む塀沿いに歩いていると、案外あっさりと裏口が見つかった。
少し離れたところには小さな門があり、それが多分業者の馬車が使うような通用門だろう。こちらに背を向けてひとりの警備兵が立っていた。
周りを見回して他に誰もいないことを確認してから、雨音は細く開けたドアの隙間から外に滑り出る。
ドアをそっと閉じて顔をあげるとそこはもう、迎賓館の外だった。
迎賓館の塀と隣の屋敷の塀の間に、広めの石畳の道が通っている。
足早にそこを離れて角を曲がったところで、雨音は息をついた。
「ふー、うまくいったあ」
迎賓館の周りが住宅地であることは、魔力の鳥を飛ばしたときに確認していた。
敷地の広い屋敷が立ち並び、当然全て塀や植え込みで囲まれているので、通りから眺めてもあまり面白くない。
貴族の屋敷がある地域の外側は商業地区だったなと思い出して、認識阻害を解除してから雨音は歩き出す。
「方向はこっちで合ってるのかな。あれ?」
少し前の道に小さな紙が落ちていた。拾い上げてみると「ミオンズ商会 オイル 二本」と書かれていて、その下には商品名もあった。買い物メモのようだ。
慌てて道の先を見ると、大きな帽子をかぶった小柄な女性が遠ざかっていくところだった。
小走りで追いついて声をかける。
「あの、落としませんでしたか?」
「え? ええ!? 聖女様!?」
振り向いたのはベルだった。
予想外過ぎて雨音の心臓が飛び跳ねる。
「ベル!? しーっ!」
驚愕したベルの口を覆って、周りを見回す。
幸い声を聞きつけた人が来ることもなく、雨音はほっとして方の肩の力を抜いた。
「驚かせてごめんなさい、ベル。これを落としませんでしたか?」
「あ、ありがとうございますっ! さっき荷物を確認したときに……私、オイルの名前を覚えてなくて……、良かった」
「お店に行くの? 私もついていっていいですか?」
「はい、ターニャさんに頼まれて、そうじゃなくて! 聖女様はどうしてこんなところに!? 人払いをされて……」
商業地区に行くならついて行こうと思っている雨音に、ベルは当然の疑問を投げかける。
「気分転換したくて出てきちゃいました。迎賓館の外を見てみたかったし」
「そんな、言ってくだされば外出着や馬車をご用意したのに」
どうやらベルは、雨音は自由に迎賓館を出られると思っているらしい。
宰相と通じている訳ではなさそうだった。
「一人で出掛けたい気分だったから。でもよく考えたら私、道を知らなくて困ってたんです」
「でも、供も付けずに徒歩で外出だなんて」
「ん……。もしかして私、常識はずれなことをしちゃってますか?」
「あっ、申し訳ありませんっ、聖女様はこちらの世界のことは何もご存知ないのだから、仕方ないと思いますっ」
こちらの生活になんとなく適応しているので雨音自身も忘れがちだが、雨音はこちらの常識を知らない。
そのことにベルも気が付いてくれたようだ。
ベルによると、普通は外出用のドレスに着替えるものだし、馬車を使い、歩きでの外出はしないとのこと。
お忍びの場合でもお供が一人は必ず付くらしいので、雨音の思うちょっとコンビニへ、というのはありえないようだった。
本当ならベルも馬車を使って外出するものらしい。
聖女用の馬車しか迎賓館にないために、徒歩でのおつかいとなったとのこと。
そうは言っても、もう迎賓館を出てきてしまったので、雨音にこの機会を逃す気はない。
「それなら、お店の多い地域の方向だけ教えてもらえますか? 一人で行きます」
この台詞を聞いたベルは一瞬、遠い目をしてから覚悟を決めたような顔になった。
「分かりました。僭越ながら、私が街までお供いたします」
「え、でもおつかいの途中ですよね? お仕事の邪魔をするわけにはいかないから」
「いいえ、聖女様を街でお一人にはできません。危険な場所もありますので」
「そういう場所もあるんですね。だったら、お願いできますか?」
「承知いたしました。それでは、これをお召しになっていただけますか? 私のもので心苦しいのですが、外出するときには必要ですので」
そう言うとベルは、被っていた帽子を雨音に渡した。
つばが広く、長いリボンを顎の下で結ぶと横顔は完全に隠れてしまう、雨音にとってはとても時代がかった帽子だ。
「でもこれは、ベルの帽子ですよね?」
「私よりも聖女様がお召しになってください。聖女様はその、お顔が……」
「あ。悪目立ちしちゃうのか」
ぺたりと頬を撫でる。
こちらに来てから鏡を見るたびに変わってしまった顔は見ているのだが、ベルたちが普通に接してくれるので、周りに影響が出ることをつい忘れてしまう。
「悪いなんてことはありませんっ。ただ、たちの悪い人に目をつけられてしまうと、私ではお守りしきれないので。申し訳ありません……」
「ベルは何も悪くありませんよ。無理を言っているのは私だし、防犯は大事ですから」
雨音は帽子を被り、リボンを顎の下で結んでみたものの、リボンの長さがちぐはぐで不格好になってしまった。
解いてもう一度結んでみても、あまり変わらない。
「意外と難しい……」
「あの、私が」
「流石はベル。上手ですね」
ベルに結んでもらうと、すぐに綺麗なリボン結びが出来上がった。
手に下げていた籠からスカーフを取り出すと、ベルは三角に折って自分の頭に巻き、雨音と同じように顎の下で結ぶ。
外出するときは髪を覆うのが、こちらでのマナーらしい。
「私なんて全然です。あ、街はこちらです」
褒められてはにかむベルが可愛らしくて、雨音も思わず微笑んだ。
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