第17話 母と子(追加)

 母さんに今日までのことを全部話した。

お母さんは本当に亡くなっていたことと、お母さんが僕を産んだ事情、そしてお父さんのことも話した。母さんは静かにじっと、時には涙ぐみながら話を一生懸命聞いてくれた。

「それで、晴はどうしたいの?」

「その前に一つだけ聞きたいことが」

晴という名前についてだ。どうやら本当のお父さんの名前を一字貰っているっぽい。お父さんにはこのことを聞かずに店を出てしまった。聞けばよかったと後悔したが、よく考えたらこの名前をつけたのはお母さんかもしれないと思った。

「これは、実久さんのお願いだったの。どうか名前は私がつけたものにしていただけないでしょうかって。ふつうはねそんなこと聞かなくていいのよ。名前を決める権利は私たちにあったし、何より産んだらすぐ私たちの元にやってくる赤ちゃんに、そんな勝手ができるわけない。でも彼女がどうしてもっていうからそれを聞き入れたの、晴の話を聞いて理解したわ。彼の名前を残したかったのね」

「それで、僕決めた。お父さんとお母さんのお墓参りには行く、でもそれっきり。一度だけ行かせて。もうその一度だけでいい」

「なぜ?お父さんは生きているんでしょ?別に気を遣わなくていいのよ」

「違う。気を遣ってなんかいない。もう僕は迷わないし、僕は僕だって。僕の家族は父さんと母さんなんだって思えたから。いくら考えても本当の親と過ごした時間がほとんどないし、家族だと思えた時間を過ごしてきたのは母さんたちだから」

「そう、なら行ってらっしゃい。ありがとう、晴」

今まで感じたことのない晴れやかな気持ちでいた。ここ数日でいろんなことが起きた。 

感情が追い付かなくてモヤモヤしている時間が長かったけれど、ハピーエンドというやつを迎えられたのだと思う。自分でいうのは変か。

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