第13話 先生の秘密、お母さんの秘密(改稿)

泣き崩れる宮永先生の前に僕は茫然と立ち尽くしていた。

「あの、先生?大丈夫ですか?どうかしたんですか?」

呼び掛けても先生からはむせび泣く声だけしか返ってこない。とりあえず僕は先生が泣き止むまで待つことにした。

残された時間というと、あと数一〇分。

おもむろに先生は立ち上がって、冷蔵庫からペットボトルを取り出した。

天然水を口の端から水があふれ出るほどすごい勢いでがぶ飲みしている。

「ごめんね。取り乱して、昼休みももう終わりそうね。放課後また来てくれる?話したいことがあるの」

またモヤモヤした気持ちがぶり返した。進んでは後退しての繰り返し。真相に近づば、近づくほど離れていってしまう。

僕は渋々、保健室を後にした。

先生は一体何を?“晴君だったのね”という発言から見て先生が僕のお母さんの親戚だということは確信が持てた。

もやついた気分とは裏腹に幸運なことに気が付く。

今日はラッキーな日だ。

研究授業か何かで午後はあと二時間(二教科)しか残っていない。この二時間は、僕にとっては何も意味をなさず授業の内容は耳から抜けていった。

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