第24話

 俺はフェイスにおんぶをして貰い砦に帰還した。

 俺は寝て過ごした。

 じいは俺がしぶとすぎる事で寝ている俺の代わりに追及を受けたが、じいの作った首輪に防御アップの効果がある事にしてごまかした。


 首輪を外して休んでいるとヒーティアが感動したと言って俺の手を握った。

 ゴーレムを通して戦いを見ていたようだ。


 エムルは俺を見て舌なめずりをして何も言わずに去って行った。

 怖いんですけど?

 あいつ、なにか企んでやがる。


 エムル・ヒーティア・プリズン先生は学園に帰る事になり部隊が編成されて砦周辺で大規模なモンスター狩りが行われる事となった。

 砦の中を散歩しているとライとじいが話をしていた。

 俺は素早く隠れる。

 真面目な話で入って行くのはまずい気がした。


「ワシの孫は毎日ゴーレムに殴られとった。多少は頑丈になったとはいえ、フェイスのおかげで助かったわい」

「いえ、助けられたのは私のほうです」


 じいは窓を見つめた。

 すごい、あんな遠い目をはじめて見た。


「ライは才能がない、じゃが努力をしてきた。もしも、普通の才能があればアルトと同じくらい強くなれておったじゃろう」


「雨が、降っておるのう」

「ええ」

「思いだすのう、ライは雨の日でも暴風でも構わず訓練をしておった」


 豆腐ハウスの中だから天気は関係ないんだよなあ。


「げほ! げほ!」


 じいが急にせき込んだ!


「大丈夫ですか?」

「大丈夫じゃ。ワシはのう、孫のおかげで腕が上がった。孫はいつも努力をしておった。先が見えぬ暗闇の中で努力を続けたんじゃ、それを見ている内にのう、力になりたいと思った。こんなおいぼれになっても首輪でライを守る事が出来た、爆弾が役に立った、老いぼれても腕は磨ける、ワシはまだまだ伸びるぞい」


 じいは泣きながら笑った。


「わしはのう、フェイスはもっと強くなれると思っておる。どうじゃろう? ライと同じゴーレムと戦う訓練を受けて見んかの?」

「はい、こちらからお願いします」


 うわあ、実験台だ。

 ゴーレムの戦闘データの為にやってほしいんだな。


「ライが元気になれば、この雨の中を走り訓練を再開するじゃろう」

「……」

「ライの、助けになって欲しいんじゃ」

「はい、約束します」


 ……たまには、雨に濡れて走るのもいいか。


 俺は砦の外に出ようとして兵士に止められた。


「だめだめえ! 今は危ないから!」

「い、いや、でも走りたくて」

「規則だからダメだ!」

「そ、そうですか」


「ライ、走りに行くのか?」

「フェイス、そうしたかったんだけど止められたんだ」

「私が引率しよう」


「それなら、良いですよ」

「いやいや、濡れますよ」

「そうだ、でも君はその濡れる雨の中に飛び込もうとしている」


「でも、フェイスは偉いから泥臭いのはしなくてもいいんじゃ」

「私もまだまだ不完全だ、さあ、行こう」

「……はい」


 俺は雨の中走った。


 走ると父さんがいた。


「ライ、止まれ」


 嫌な予感がする。


「今訓練中だから」

「大事な話だ」

「はい」

「ライは私が送ろう」


「分かりました」


 フェイスが走って行く。

 兵士が父さんの眼光で距離を取って離れていった。


「ライ、私が何で怒っているか分かるか?」

「分からない」

「父さんが怒っているのはいつもの逆転勝利でみんなに迷惑をかけた事だ。フェイスが申し訳なさそうに私に謝ってきた。原因はお前だ。古竜と戦う動画を見せてもらったがお前のせいでフェイスは私に謝りに来た、分かったな? これで分からないと言うなよ?」


 ダラダラと汗が流れてその汗が雨で流される。


「いつまで遊んでいるつもりだ? いや、逆転勝利で遊ぶのはまだいい、だが遊ぶなら最低限人に迷惑をかけるな、フェイスが謝りに来た時の私の気持ちが分かるか? 謝りたいのは私のほうだった。今回は言わないであまりにもひどければ父さんは約束を守る義理は無い……」


 父さんの正論に何も言えないまま俺は前で両手を組んだままコクコクと頷き続けた。




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