第18話
「クラスの担当になったプリズンです、よろしくお願いします」
学園生活が始まった。
エムルとヒーティアも俺と同じクラスか。
エムルは、もう復活している。
大型モンスターが半日は起きない程度の電撃を流し込んだのに……
あいつ怖いわ、笑顔で俺に手を振ってるし怖いわあ。
今日は入学式と注意事項で終わりだ。
俺は席についてぼーっとしていた。
「……以上です。学園では最低限の規律を守り、節度ある行動を心がけてくださいね」
授業が終わるとヒーティアに声をかけた。
「ヒーティア、入学式の時は騒がしくして悪かったな」
「ううん、全然気にしてないよ」
「そっか、3年間改めてよろしくな」
ヒーティアの横に男性生徒が近づいてきた。
「ヒーティアさん! ファンです! サインをください」
「ありがとう♡ ヒーティアのサイン受け取って♡」
ヒーティアは慣れた手つきでサインを書いて渡す。
「大事にします! では!」
「びっくりしちゃった」
そう言いつつもサインに慣れていて機嫌がいい。
「また来たぞ、上級生だ」
「ヒーティア、2人で話を出来ないか?」
「いいですよ」
「俺は寮に帰るな」
告白だろう。
俺は空気を読んで離れる。
上級生がヒーティアの手を引いて素早く廊下に出て行く。
上級生は緊張している。
遅れて廊下に出るとヒーティアが庭園で上級生に頭を下げていた。
振ったか。
俺はそのまま歩いていくがヒーティアが何故か俺の所に歩いてきた。
「びっくりしちゃった」
「告白、断ったの?」
「知りたい?」
「いや、プライベートな事を聞くのは悪いからね。じゃ!」
ガシ!
ヒーティアに肩を捕まれた。
思ったより手の力が強い。
そして笑顔なのに何故か怖い。
「はいはい、振ったんだよな。何となく分かる」
「うん」
「やっぱモテるんだな」
ヒーティアの笑顔に怖さが無くなった。
プリズン先生が壊れたゴーレムを持ってよろよろと歩いてくる。
「危ない!」
ガシ!
バランスを崩しそうになった先生を抱きかかえるように支えた。
「ああ、ライ、くん、助けてくれてありがとう」
「いえいえ、先生、収納魔法を使わないんですか?」
「私、攻撃魔法以外は駄目で、あはははは、教師としてはまだまだ未熟です」
「いえ、出来ない事は出来ないと言えるプリズン先生は素晴らしいと思います」
「あう!」
「ゴーレムは俺が運んでおきますね。廃ゴーレム置き場でいいですよね?」
これはじいの所に行くゴーレムだろう。
俺はひょいとゴーレムを持ち上げた。
「は、はい、よろしくお願いしますね」
「ではまた明日、ヒーティアもまたな」
立ち去ろうとするとプリズン先生の前に男性生徒が立った。
「プリズン先生、お話があります」
「告白以外なら何でも聞きますよ」
「そんああ!」
「ごめんなさい、私、もう恋愛はしないと決めているんです」
「せ、せんせい! プリズン先生!」
「ごめんなさい」
プリズン先生が歩いて行った。
「やっぱりプリズン先生はモテるんだな」
その瞬間、ヒーティアのオーラが膨れ上がるのを感じたが俺は気づかないフリをしてゴーレムを置きに行くと上級生が声をかけてきた。
来た来た来た!
イベント発生か!
お前才能がないからゴミ捨て位しか出来る事が無いんだろ! ざまあ! みたいな展開を起こす為種を蒔いてきた。
遂に起きるか!
「新入生なのに働きものだな。お疲れ!」
「え、ええ、どうもです」
「困った事があったら無理しないで言ってね。私達が力になるわ」
「今度一緒に訓練を受けましょう」
「ええ、今度機会がありましたら、よろしくお願いします」
「はっはっは、硬くならなくていい、また明日」
そう言って上級生が去って行った。
なん、だと。
みんないい子ちゃんかよ!
真面目かよ!
いじめより勉強に熱心な名門校かよ!
もっと世紀末ヤンキーみたいなのは無いのか!?
喧嘩を売られて最初はぼこぼこにされて負けるも努力で成長してリベンジ戦を挑んでギリギリ勝利イベントが起こせない。
学園は平和すぎる。
【次の日】
訓練が終わるとヒーティアが汗を掻いて近づいてくる。
「あ、気づいちゃった? 私汗かきなんだ」
「……そっか」
「動くとすぐ汗が出ちゃう」
そう言って胸元に指を引っ掛けてパタパタと仰ぐ。
ちらちらと下着が見えると男子生徒を中心に歓声が巻き起こった。
テンションの上がった男子生徒が風魔法を放って浮かび上がると突風が発生した。
向こうを向いていたプリズン先生に突風の上昇気流が発生した。
「きゃあああああ!」
プリズン先生の軍服がめくれ上がりパンツが見える。
「「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」」
「み、見ないでください!」
さっきまで注目を集めていたヒーティアへの目がプリズン先生に移った。
恥ずかしがっているとどうしても見てしまう。
偶然軍服がめくれ上がるとみてしまう。
「やっぱりプリズン先生はかなりモテるな」
「……そうなんだね♡」
「ヒーティア、怒ってる?」
「怒ってないよ♡」
「いや、でも」
「怒ってないよ♡」
「そ、そっか」
俺はこれ以上何も言ってはいけない気がしてヒーティアからすっと離れた。
学園は平和すぎる。
俺の蒔いた種が一切発動しない。
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