第14話

「みなさーん! この人型ゴーレムと1対1で戦って制限時間内に戦闘不能にならず耐えましょう! 勝てなくても構いませんし負けちゃっても合格になる場合もあります! 焦らずいつも通りに戦いましょう!」


 プリズン先生が皆に指導した。

 午後の実技試験が始まるとじいの作った人と同じサイズのゴーレムとみんなが戦う。

 じいが檄を飛ばしている。


「ほれ! ゴーレムA、そこでパンチじゃ! ああ、そこでもっと腰を捻ったストレートじゃ!」


 じいはゴーレムを応援していた。

 みんなが不思議なモノを見るような目でじいを見る。

 パンチしかしないし攻撃力はかなり抑えられているゴーレム。

 それでも試験を受ける者にとっては怖いようで苦戦する人の方が多い印象だ。


 俺の目の前で戦う少女は杖を持って魔法を詠唱する。

 だめだな、魔法が間に合わない。

 魔法に精いっぱいで動く事が出来ないようだ。

 詠唱が遅い、魔法に慣れていない、もっと言うと威力不足だ。

 ゴーレムのパンチが少女を狙う。


 ゴス!


「きゃあああ!」

「落ち着きましょう、一旦下がって、大きな魔法は狙わずに小さな魔法を隙を見ながら当てましょう!」


 プリズン先生が熱心に指導する。


 プリズン先生が声を出すたびに軍服の下がひらりと揺れる。

 軍服の下は丈の短いチャイナドレスのようで目が行ってしまう。


 スリットから見える白い太もも。


 大きな胸。


 優しい声と気遣い。


 やっぱりプリズン先生はいいな。


「ライは見えそうで見えない服が好きなんだね」

「ひい! え、むる! 何でここにいる?」

「錬金の試験が終わってね、実技も受けたいと言ったら通してもらえたよ」


 魔法少女がゴーレムに殴られて杖事吹き飛ばされて泣き出した。


「うわああああああああああああああああん!」

「ストップです。大丈夫、大丈夫ですから、負けても不合格になるとは限りませんよ」


 プリズンが魔法少女を優しく抱きしめた。


「ほとんど勝てないみたいだね」

「そうだな、試験を受けるなら早く受けて帰れ!」

「はあ、はあ、最高だね。そろそろ僕の番が、あ、次はヒーティアの番みたいだね」


 ヒーティアは期待の剣士候補だ。

 余裕で倒すだろう。

 ヒーティアは近くにいた男に金貨を握らせて両手で優しく包み込む。

 前かがみになって胸を強調する。

 そして上目遣いに男を見てねだるように言った。


「ごめんねえ♡ スマホで撮影、お願いできるかな?」


 うわあ、女に嫌われるやつ。

 周りの目を気にせず良く出来るな。

 だが言われた男は顔を緩めて言った。


「お、おう、任せときな!」

「ありがとね♡ ボタンを押して撮影開始! みんな! 聞こえてる?」


『一番乗り!』

『即反応したはずが乗り遅れただと!』

『聞こえてるよ! ヒーちゃん、その衣装やっぱ最高だ』


「みんなあ、見てくれてありがとう♡」


 ヒーティアは1回転してポーズを取った。


 男たちが「おおおおおおお!」と歓声をあげる。


『いい!』

『よき!』

『華があるね』


『パンツが見えそうで見えない』

『癒されるわあ』

『試験頑張ってね』


「ヒーティアさん、早く前に出てください」

「ヒーティア怒られちゃった」


 いや、早く前に出ろよ。

 ヒーティアとゴーレムが向かい合う。


「試験開始じゃ!」


 じいの声と共にゴーレムが前に走った。

 ヒーティアはくるっと宙返りをしながら両手剣をゴーレムに叩きつけた。


 バシュン!

 ゴーレムが攻撃を受けてよろめくと着地したヒーティアが横にクルンと回って勢いを付けた剣を叩きつけた。


 ザン!


 ゴーレムが倒れて一瞬で勝負が決まった。


「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」」


『すげええええええええええええええ!』

『見たか! 今の動き!』

『パンツは赤だった! 赤だった!』


 歓声が収まらない。


「みんなあ! ありがとう♡」


 ヒーティアはうっとりしたような顔で注目を集め続ける。


「次はエムルさん、前に出てください」

「僕の出番だね。皆みたいに学園が用意した武器じゃなく、僕の武器を使いたいんだけどいいかな?」


「構わんぞい、どうせ後2回で終わりじゃ、ゴーレムを壊しても構わんわい」


 エムルは杖を構える。

 すると杖の先端が魔法の傘を発生させた。


「試験開始じゃ!」


 ゴーレムがドスンドスンと足音を立てて走る。

 エムルがすっと傘を前に突き出した。


 グッシャアアア!

 ゴーレムが傘に当たると爆発を受けたようにバラバラになった。


「ほう、リフレクトフィールドと衝撃波の合わせ技かのう? 錬金術師として面白いのう」

「でも、使用回数に限りがあるからもっと武器を増やしておきたい所ではあるね。他には銃も使えるけど人に当たると危ないから使っていないよ」

「ふむふむ、それもぜひ見て見たいもんじゃ」


 まずい!

 じいがエムルを気に入りつつある!


 そしてさっきまで目立っていたヒーティアが「ぐぬぬぬぬぬ!」と悔しがっている。


「次はライさん、前に出てください」

「その前にヒーティアはまだ運動したりなそうなので、次は3体同時に戦ってもらいましょう」


 ヒーティアの目が輝いた。


「ヒーティア行きます!」

「試験がまだ終わっていませんよ! 後にしてください!」

「いいじゃろう、その心意気受けて立とうではないか!」


 じいがプリズン先生の言葉を遮るようにゴーレム3体を前に出した。


「試合開始じゃ!」

「試験が終わっていませんよ!」

「いっちゃうよ!」


 ヒーティアが舞うように、飛ぶようにゴーレム3体を倒すとヒーティアにまた注目が集まった。

 すべて揃った。

 土台は揃った。


 最後は俺の番だ。

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