第7話
「ライ、おじいちゃんは?」
「じいはゴーレムを作るから来ないよ」
「仕方ないわね、4人で食べましょう」
じいを除いた4人で席に着いた。
「ライ、じいは何をやってるんだ?」
「ロケットパンチを改良してるよ、飛ばしたら手に戻ってきて腕から手とドリルが出るようにするのが目標だね」
「……あれ以上強くしてどうすんだよ。アルクラの考える事はいつも分からんな」
「あら、私も分からないわ」
「息子の私にも分からない」
「ち、違うんだって! 強くするんじゃなくてロケットパンチが飛んでいったら浮いて手に戻ってくるようにするんだって! ロケットパンチは手に戻ってきて完成なんだって! ロマンなんだよ!」
「訳が分からねえ。何発も撃ちたいなら背中にドリルを背負っておけばいいじゃねえか。それにドリルを飛ばしたらその間腕で攻撃が出来ねえだろ? 普通に考えておかしいだろ」
「違うんだって、ロケットパンチを飛ばして武器が無くなった駆け引きが楽しいんだって!」
「ああ、よく分かった」
「ほ、やっとわかってくれたか」
「要するにだ、苦戦からの勝利をしたいと、つまり弱点がある武器って事だろ? ライがロマンとか言う時は欠陥武器だ」
「私も分かって来たわ」
「私も今分かった」
「ち、違うんだって! ロケットパンチはロマンなんだって!」
「この肉うまいな」
「それは赤ワインで漬け込んだのよ」
「おお、もっとくれ」
「アシュ(王)、お前は酒を使った料理なら何でもうまいんだろ?」
「はっはっは! その通りかもな、だが味付けや肉の硬さが丁度いい、酒が無くてもうまいだろうな」
駄目だ、ロマンを分かってくれるのはじいしかいない。
ロケットパンチがここまで理解されないなんて!
ロケットパンチはロボットアニメの王道攻撃なのに。
ロケットパンチはボンて飛んで行って攻撃してガキョンと腕に戻るあのシーンがかっこいいのに。
みんなにアニメを見せてあげたい。
「ライ、そんな事より良い人はいないの? もう15才でしょ? 孫の顔が見たいわ」
「ライは毎日地下室で遊んでいるからな。出会いがない」
「俺は無才だけど努力と」
「そういうのはいいのよ、良い人はいないの?」
「ライ、お母さんの質問には答えてくれ」
「……いない」
王がにやにやしながら笑っている。
この会話がおかしいのか。
いや、なにかを企んでいるような気もする。
「ライ、学園に行ってみないか? というか15才になったんだ。学園に通うよな?」
「アシュの言いたいことが分かった。学園に行って人と会えと、そういう事だな?」
「そうだ、毎日家で勉強してじじいのゴーレムと格闘していても出会いは生まれない」
「もう勉強は終わってるからなあ」
「んな事は分かってる。学園卒業までの勉強は済んでるんだろ? だがなあ、名家サンダース家が学園を出ませんでしたとなってみろ? 下の者はずるいとか言い出すに決まっているだろう」
「お母さんも賛成よ。人と会いましょう。おじいちゃん以外の人と話をした方がいいわね」
「俺不器用だからまだまだ修行」
「そう言うのいいから」
「はっはっはっは、ライ、お前お母さんに話を止められすぎじゃねえか」
「ライ、逆転からの勝利がしたいんだよな?」
「うん」
「なら学園に行くといい」
「……ん?」
「この国は平和だ。ライが望むような逆転勝利の事件は滅多に起きないし事件が起きたとしてもすぐに兵士が鎮圧する。もっとハードルを下げたらどうだ? 学園には紋章を張り付ける事が出来た選ばれたエリートが通う。精神的に未熟でプライドの高い学園生が多くいて勝負を挑まれる事もあるかもしれない。そこで逆転勝利をすればいい」
「おおお!」
「状況を知っている私達に不器用だとか努力がとか言っても盛り上がる事は無い。だが学園ならもっといい舞台があるかもしれない」
「おおおおおおお! 行こうかな!」
王様がにやにやしながら言った。
「ライ、勉強だけは出来る事を隠さなくていいぞ」
「ん? 意味が分からない」
「勉強だけ出来て頑張って訓練をしても中々強くなれない名門生まれの落ちこぼれキャラで行けば絡まれやすくなる。イメージしてみろ『は! お前努力しても強くなれないから勉強しか出来る事が無いんだろ!』とか『名門とは名ばかりの落ちこぼれが!』みたいな展開になる、かもしれない」
「来た! 遂に努力が実を結ぶ!」
「楽しみになって来たんじゃねえか?」
「希望が広がってきた!」
3人が俺を見た。
「いい子を見つけて早く孫を作りましょう」
「ライ、学園で大きな問題は起こさないようにな」
「はっはっは! アルト! ライは小さな問題なら絶対に起こすって思ってるだろ!? はははははははは! ライ、やりたいように思いっきりやれ! そのほうが(俺の)人生は楽しくなる!」
俺はその日、ワクワクして眠れなくなり地下室で大型ゴーレムを素手で殴り倒して遊んだ。
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