第6話
【王視点】
強引に会議を終わらせてライの様子を見に行く。
城の中は堅苦しくて仕方がない。
だがアルトの家は国家機密の為兵士すら中に入れていない。
四角くて巨大な牢獄のような家が一番落ち着くのも皮肉な話だ。
バイクとあの建物の中だけは王としてではなく素で接する事が出来る。
アルトも王と接する必要が無い為ため口で会話をする。
そして風を切るように走るバイクの感触がたまらなく好きだ。
アルトやアルクラと一緒にバイクに乗り後ろから兵士がバイクでついてくる。
「アルト!」
「なんだ!?」
「息子の調子はどうだ?」
「それは実際に見て欲しい!」
アルトの物言いはいつもはっきりしている。
当主として導く役目がある為、完全に正確ではなくても出来るだけ一言で分かりやすく伝えることが多い。
だが今回の言葉は歯切れが悪い。
ライの実力が漏れる事でライが怒るからか、それとも他に理由があるのか分からんが、ますますライに会うのが楽しみになってきた。
草原と岩、乾いた土で出来た地面を走りタイヤの跡を付けるように音を鳴らしながら止まるとライが出てきた。
「わあ、暴走族だ」
「はあ? ぼうそうぞく? ライはたまに変な言葉を使う」
「兵士の役目は終わった、速やかに持ち場に戻ってくれ!」
アルトの言葉で兵士がバイクに乗り集団で帰っていく。
ブオンブオンブオン!
兵士の走るバイクが渇いた土をグリップすると土煙を舞い上げた。
「暴走族」
「ああ、分かったぞい、暴走するバイクと騎馬民族を掛け合わせた言葉じゃな」
「そんな感じ」
俺はライの頭をくしゃくしゃっと撫でた。
「また大きくなったな。アルトじゃなくて母さんに似て顔立ちが整っている」
「うるさい黙れ」
「ほれ、中に入るぞい」
冗談を言いながら4人で四角い強固な防壁に囲まれた家に入った。
「ライ、ゼロの紋章を視察に来た」
そういった瞬間にアルクラが前に出た。
「新型ゴーレムを作ってあるでの、ついでに実験もするんじゃ!」
「おお、面白いじゃねえか。地下室に行くぞ」
地下室に向かうと両手の代わりに円柱系の尖った装備を取り付けたゴーレムが5体現れた。
「ドリルゴーレムだね」
「そうじゃ、ドリルゴーレム、ドリル起動じゃ」
キュイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイン!
ドリルが高速回転を始めた。
「……当たったらライが死ぬだろ?」
「大丈夫じゃ」
あれが当たってもライは大丈夫なのか?
だとすればライの強さはかなりのモノとなるだろう。
「それでは、勝負開始じゃ」
バチン!
ライの手から雷撃が放たれ1体のドリルゴーレムに当たるとゆっくりと後ろに仰け反ってドスンと倒れた。
「……はあ!?」
俺の横にアルトが立った。
「ライの雷撃は私より強い。発動までの時間、威力、命中精度、すべてにおいて私の上を言っている」
アルトの魔法は強い。
『雷滅のアルト』の名を聞けば盗賊はくびすを返して逃げ出す。
そのアルトにここまで言わせるか。
「ライ! 次はドリルを使わせてから攻撃するんじゃ!」
「じゃあずっと避けてていい?」
「それで頼むでの!」
残ったドリルゴーレムが動き出した。
ライに急接近して両手のドリルを何度も突き出すが全く当たらない。
「じい! ドリルゴーレムは弱いよ! ドリルが重いから避けやすい!」
「まだじゃ! 切り札起動! ロケットパーンチ!」
ドドドドドーン!
「おいおい、ドリルが飛びやがったぜ、でもあれはドリルパンチじゃねえか?」
「腕から手が出たりドリルが出たりするようにしたいらしい」
「意味あんのか?」
「無いが、やりたいらしい」
ライがロケットパンチを避けるとロケットパンチが強固な壁を削り取っていく。
ガリガリガリガリ!
あの壁を削り取るか!
あのゴーレムは十分強い。
それに急にドリルを飛ばされれば敵は焦る。
普通はあの攻撃を避けられない。
「じい、やっぱダメだって、このゴーレムは鉄の掘削に使うのがいいって」
「……つまらんのう、掘削か」
「アルクラ、4体を貰っていいか? 鉱山に持って行きたい」
「ふう、好きにせい」
アルクラがドリルゴーレムに興味を失った為ライがドリルゴーレムを外に運んで兵士に運ばせた。
アルクラはこういう所がある。
たまに様子を見に来なければ国益を逃す。
「ライ、他に良さそうなゴーレムはあるか?」
「後は、ゴーレム運搬の為に作ったトラックはゴーレム運搬じゃなくて鉱石運搬に使えると思う。自動で運んでくれるし、後はスカウトの能力を持たせようとしたゴーレムは農地開拓や畑を耕すために使えると思う。それとゴーレムじゃないんだけどじいが作った武器は兵士用に使えそうなのが色々ある」
「アルクラ! 持って行っていいか?」
「ライに任せる」
「じいは完成して実験が終わると次をやりたがるから。ここにあるのは全部持って行っていいよ。俺が外に運んでおこうか?」
「おう、頼むぜ、ついでに兵士への連絡と回収も頼む。俺の名前を出していい。アルト、酒と料理はあるか?」
「そう言うと思って作って貰っている」
ライのおかげで俺は政務を果たした格好になるだろう。
後はうまい飯を食べて酒を飲むだけだ。
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