第3話 光と影の間で
希望の光を追い求めて、旅人は霧を抜け、深い夜の葡萄園を進んでいった。彼の足音だけが、静かな夜に響き渡る。光は時折見え隠れするが、その方向性だけが旅人の唯一の指針だった。
歩を進めるうちに、旅人は不思議な感覚に襲われる。霧が薄れ、足元の地面がわずかに震えているように感じられたのだ。そして、彼の目の前に広がる景色は、徐々に変化し始める。霧は少しずつ晴れ、葡萄の木々が整然と並ぶ姿が見え始めた。光は、葡萄園の中心にある小さな小屋から漏れているようだった。
旅人は、心の中でほっと息をつく。少なくとも、人がいる可能性がある。そう思いながら、小屋に向かって歩を進めた。しかし、彼が小屋に近づくにつれ、ある不安が彼を襲う。この小屋は、一体何者が住んでいるのか? そして、この不思議な葡萄園の謎は、果たして解明されるのだろうか?
小屋の扉はわずかに開いており、中からは暖かな光が溢れ出ていた。旅人は勇気を振り絞り、扉をノックする。しかし、返事はない。彼は再びノックを試みた後、ゆっくりと扉を押して中に入った。
中は意外にも広く、壁には古い写真や地図が掛けられていた。そして、部屋の中央には古い木製のテーブルがあり、その上には一冊の厚い本が開かれていた。旅人は好奇心に駆られ、本を覗き込む。それは葡萄園の歴史と、ここに関わる家族の物語を記したものだった。
読み進めるうちに、旅人はこの葡萄園が何世紀にもわたって続く家族のものであること、そして何らかの理由で家族がこの地を離れ、葡萄園が放置されていたことを知る。しかし、それ以上の詳細は書かれていなかった。彼は、この家族の秘密が、今自分が直面している奇妙な出来事と関連があるのではないかと感じた。
その時、小屋の外から何かが動く音がした。旅人は本を閉じ、慎重に外を窺う。しかし、そこには誰もいない。ただ、遠くに見える葡萄の木々の間から、またあの微かな光が見える。
光は旅人を呼んでいるようだった。しかし、それが安全な道を示しているのか、それともさらなる危険へと誘うものなのか、旅人にはわからなかった。彼は小屋を出ると、再びその光を追い始めた。光と影の間で、真実を求める旅は続く。
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