第4話  真実の扉

微かな光を追い求める旅は、旅人を葡萄園のもっと奥深くへと導いた。彼の周囲の風景は、まるで夢幻のように変わり続けている。薄明かりの中、旅人は自分がまるで別の世界へと足を踏み入れたかのように感じた。


葡萄の木々は、彼がこれまで見てきたものとは異なり、その枝葉は奇妙にねじれ、絡み合いながら空へと伸びている。地面からは、ほのかに光る霧が立ちのぼり、それが葡萄園を一層幻想的な雰囲気に包み込んでいた。


光は、段々と明るくなり、旅人を一つの小高い丘へと誘った。丘の上には、古びた石造りの祠がぽつんと建っていた。祠の前に立つと、旅人は深く息を吸い込み、その門をくぐった。内部は思ったよりも広く、中央には大きな石の台があり、その上には葡萄の房が無数に捧げられていた。


石の台の周囲には、奇妙な象形文字のようなものが刻まれており、それらが微かに光を放っている。旅人は、この文字が葡萄園の秘密、あるいはこの地にかけられた呪いに関する何かを語っているのではないかと直感した。


彼は石の台に近づき、手を伸ばして葡萄の一房を取った。その瞬間、彼の頭の中に幾つもの声が響きわたり、過去にこの地で生きた人々の記憶が蘇ってきた。葡萄園を守り続けた一族の愛と悲しみ、そしてある悲劇が明らかになった。


その記憶の中で、旅人は見た。かつてこの地は繁栄しており、葡萄園は地域の人々に愛され、幸福な時を過ごしていた。しかし、一族間の争いと裏切りにより、この地には重い呪いがかけられたのだ。それは、葡萄園を離れることができない永遠の束縛であり、農園の美しい葡萄は、呪いを知らない者を惹きつけ、葡萄園を決して離れられないようにするための餌だった。


旅人は、自分がその餌にされた一人であることを悟る。しかし、彼はまた、この呪いを解く鍵が自分の中にあることも知った。その鍵は、過去を受け入れ、呪いに立ち向かう勇気だ。


石の台から手を離し、旅人は深い決意を胸に祠を後にした。彼は、この地に平和をもたらし、呪いを解くために、葡萄園の奥深くに隠された真実の扉を見つける旅を続けることを決心する。


夜が更け、星々が輝く中、旅人は新たな目的を持って再び霧の中を歩き始めた。彼の旅は、まだ終わりではなかった。

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