第2戦!『勇者の欲望』の短編を改変~話を書こう!【気になるのを捨て去る方法①】

気になって気になってしょうがないので、土曜日投稿予定の『魔王討伐のあかつきには俺を捨てようとたくらんでいる聖女たちの所業は、俺が全て内緒で配信していた。『つまり証拠ばっちりだよ、ば~か』。こんなやつらはポイして俺は美しい魔王と愛し合うよ、さようなら!』……長いね……の方を書いていきます。


とりあえず思いつくままに書いたんですが。

本題はその下なので読み飛ばしていただいても構いません。

言いたいことは、前に書いた部分的な勇者と魔王の話はどこに行ったのか?ということ……つまりプロット無視も甚だしいものを書いてしまいました。

反省……。


 * * *

 私は魔王と呼ばれている。

 1人の魔族の女だ。


 生まれはよくわからない。

 気付いた時には魔王の称号を持っていて、ここに連れてこられた。


 ここは最悪だ。

 なにせ臭い。

 血の匂い、肉の匂い、腐った匂い、汗の匂い。

 ここは大嫌いだ。


 しかし私はここにいる。

 この称号のせいだ。

 "魔王"になんてなりたくなかった。


 それでもなってしまった。

 こんな私に従うものがいた。

 こんな私を担ぎ上げるものがいた。


 力がすべての魔族。

 長い長い迫害と闘争の歴史の中でそれ以外の価値観を捨て去った……

 いや、捨て去るしかなかった悲しい種族。


 私はなんどか人間や獣人、妖精族との対話を試みた。

 殺し合うことなく生きていけるならその方がいい。


 しかし徒労に終わった。

 話を持ちかけても無視され、身内にも反対された。


 敵は誰も魔族との共生を願っていないし、

 魔族は誰も異種族との共生を願っていなかった。


 私が魔王ではなくなれば、きっとまた戦いの日々、

 殺し合いの日々に戻ってしまうのだろう。

 だから誰も私の言うことを聞かなかった。


 そう、あの方を除いて……。


 あぁ、なぜなのでしょう。


 なぜあなたしか聞いてくれないのでしょう?

 むしろなぜあなたが聞いてくれるのでしょう?


 私と唯一殺し合う宿命を負ったあなたが。

 "勇者"であるあなたが。


 しかも戦場で……。

 戦場で私達は短い会話をしたのです。

 今思えば、万感の想いを載せた会話を。


 

 そしてあなたは私の言葉を聞いてくださいました。

 私もあなたの言葉を聞きました。


 それが嬉しかった。

 お互いに隔絶した力を持つもの同士だから?

 決してそんな理由ではない。


 なぜかはわかりません。

 水と油、表と裏の関係の私とあなたが言葉をかわしたのはきっと偶然です。

 しかし間違いなく、お互いに興味を持ち、惹かれたのです。


 あぁ、頭の中がぐちゃぐちゃです。

 これが私の妄想だったらどうしましょう。

 そう思うと苦しくて仕方がありません。

 そうではないことを祈るばかりです。



 でも私は確信しています。

 だから私も落ち着きます。

 2度目に出会ったときも、またあなたは私に言葉をくださいました。


「魔王……久しぶりだな」


 私はなんとか言葉を返します。


「えぇ、勇者。ハウリオン以来ですね」


 穴があったら入りたい。

 言うに事欠いて戦場のことを話すなどと。

 もっと何かあるだろうと。

 

 いえ、でもそれは無理だったのです。

 周りの目がありましたから。

 ないものねだりですね。

 

 しかし彼は微笑みました。

 間違いなく僅かですが微笑んだのです。

 

 どうしようもなく苦しいことですが、私は……

 私はあなたに惹かれています。


 普通のものはたとえ相手が魔王であっても、魔族と会話したりしないのですよ?

 魔族と会ったということは誰かが死んだということです。

 殺し合いしかしないのですから。


 不吉だと。

 不気味だと。


 誰もがそう言って避けるのです。


 同様に魔族も異種族を避けるのです。

 同じ理由で。


 あなたもおわかりでしょう?

 あなたの傍らにいるあの邪魔者の反応が普通なのです。


 まるでゴミを見るかのような目でこちらを睨み、ただ憎悪の炎を燃やし、力の限りこちらを殺しに来るのです。

 まさか会釈をして言葉を交わすようなことはありえないのです。


 それを普通にやってのけるあなたに、私は惹かれたのですわ。

 どうしようもなく。



 私の部下たちは言います。

 魔王様、魔王様、魔王様。

 

 常に人を何人殺した、切り込んできた戦士を倒した、あそこの街を破壊した。

 世界に魔族を残すには、異種族を滅ぼすしかないのだと。

 そう、言うのです。


 本当にそうでしょうか?

 であればあなたと私のこの想いは嘘なのでしょうか?

 何かの幻想なのでしょうか?


 いえ、例えそうだとしても、どうしようもないくらい私はあなたが欲しいのです。

 そうして子でもなせば、きっと遠い未来に人と魔族が共生する足がかりになるかもしれない。


 "魔王"の称号が魔族を救えと訴えてきます。

 それをこんな想いで押さえ込んでしまえるくらい、私はあなたが欲しいのです。



 しかし時は流れていきます。

 川に落ちた葉っぱのように、くるりくるりと状況は変わるのです。


 唯一信頼していた部下が死にました。

 聖女と名乗り、あなたのそばに居座るあの邪魔者に殺されたのです。


 私は後悔しました。

 私が勇者などに惹かれたから?

 そんなはずはない。

 そんなことは関係ないはずなのにに、嘆き悲しむ部下たちに紛れて彼を見送った時には

 激しい後悔が私を包み込んでしまいました。


 そんなときに魔神様から渡された魔道具がありました。

 そこに映るあなたは私の部下を殺していきます。

 果敢に挑むものたちをあなたはなぎ倒していきます。


 みな、力が正義なのです。

 なのであなたに敗れて死ぬことに悔いを感じておりません。


 私だけなのです。

 私だけが嘆き、私だけが涙するのです。


 もうやめたい。

 もう止めたい。

 ですが、私にその力はありません。

 この"魔王"の要求を断れば、きっと私は解放されます。


 しかしそれでは次のものに譲るだけです。

 "魔王"の称号と、あなたの敵対者としての地位を。


 そしてあなたとのつながりまでも。


 涙をこらえて私は魔道具を眺めました。


 どんなに苦しくても。

 どんなに悲しくても。

 そこにあなたが映っていたから。


 そうして見ているとどうしても気付くのです。

 あなたはやはり違う。


 なぜなら魔族であるにもかかわらず、あなたは戦えないものを殺さないのです。

 あなたの仲間がそれをなそうとしたら止めるのです。

 

 あなたもきっと親しいものを魔族に殺されたことがあるはずです。

 にもかかわらず、あなたは魔族だからと殺さないのです。


 そんな姿が映っていたのです。


 私は食い入るように魔道具を眺めました。

 眺め続けました。


 愛しい人。


 あなたもまた、人の世界の中で"勇者"を演じているのですね。


 わかりました。


 覚悟を決めました。



 さぁ、おいでください。

 そして殺し合いましょう。


 これが聖戦なのです。



 私とあなたの戦い。


 どんな結末になるのでしょうか?


 1つだけは言えます。

 

 あなたは生きてください。


 逝くなら……私が……。


 * * *


なんかめっちゃ重たい女の人になってないですか?

勇者になら殺されながら笑いそうなんですけども!





ということで、なぜか思い出したこの歌をどうぞ!

グループ:ぜんぶ君のせいだ

タイトル:独白園

URL:https://youtu.be/08NKvqaqOIg?si=6HQyp5QgPPccco7b


歌詞抜粋:

今日命尽きるとも ぼくはぼくに生まれ変わって

必ず君見つけるだろう そして、泣くから。


君は笑って手を振って 「バカなやつ」って蔑んでいい

それ見てやっぱりぼくは 泣き崩れるから。

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