第2話 テロリストはメガネメイド娘
「テロリストは世界をメガネで埋め尽くす事を目標にするメガネ教団だ」
それを聞いた瞬間、舞はガタッと崩れる。
「解るでぇ。私も最初に聞いた時、なんやそれってツッコんだからなぁ」
「気持ちは解るが、こいつらは狂気的に世界中の人々にメガネを掛けさせようとしている。その為に幾つかのコンタクトレンズ専門店を爆破したりしている。メガネを信奉していると言う事から、当局としてはカルト教団のひとつと考えている。それだけならば、我々が専任になる事はないが・・・一つ、大きな問題があってな」
「大きな問題?」
「あぁ・・・奴らの一部はあまりの狂信ぶりに自らの身体に悪魔を宿して、並の人間では相手にならない事態が発生している」
「悪魔・・・って、そうか。私たちみたいなものか」
舞は一瞬、馬鹿な話と思ったが、自分の身体に狐が憑いている事を考えれば、悪魔だっているんだと思い直した。
「そうだ。冗談ではなく、悪魔が存在して、それを体に宿して、人ならざる力を得た者が実在する。笑い話にもならない。だが、放置しておけば、奴らはメガネを広めるために何をしでかすか解らない。我々は奴らを捜査して、駆逐する為に動いている」
色々、意味が解らない事も多いが、ヤバそうな連中と言う事は舞にも解った。
「三日月には基礎的な訓練をこれから1か月を掛けて、集中的に学んで貰う。それが終われば、すぐに任務に就いて貰う」
「そうか。1か月のお別れやな」
「えっ・・・皆さんと一緒じゃないですか?」
「違うで。特殊部隊の教官からみっちり叩き込まれるんや。厳しいでぇ」
「・・・この体なら余裕じゃ・・・」
「違うわよ。体は特別でも、訓練で叩き込まるのはキツイわよ。そこの不知火さんなんか、途中で何度も脱走を図ったぐらいだから。まぁ、すぐに制圧されるんだけど」
「制圧・・・どういう事?」
舞が三珠に尋ねると、彼女は今にも泣きそうな顔をする。
「厳しいんです。何をやっても怒られるんです。嫌で嫌で逃げ出そうとしたら、すぐに教官達に力づくで抑えられて、訓練に戻らされるんです」
舞は少し、甘く見ていたなと感じた。
大阪難波の片隅。
雑居ビルの地下に会員制メイドカフェが存在した。
特に看板などは出されず、古びた扉にも店名などは存在しない。
男が一人、インターフォンを鳴らす。
「会員番号とお名前をお願いします」
「会員番号11564。須藤時成です」
「認証しました。扉を開錠します」
ロックが外れて、男はノブを回して、扉を開く。
中はシックな感じの喫茶店であった。
「お帰りなさいませ。ご主人様」
テンプレ的な挨拶をするメイド姿のメガネっ娘。
他にも存在するメイド達は全てメガネを掛けている。
メガネメイドだけが所属するメイドカフェである。
そして、このカフェの会員登録にはメガネを常用している事が必須条件であった。
男も眼鏡を常用している。彼はメイドに導かれて、席へと着く。
「いつもの」
男の注文に慣れた様子でメガネメイドはエプロンの端を広げ、軽く会釈をして去る。そして、すぐに紅茶が用意された。
英国式の淹れ方で用意された紅茶を男は楽しむ。
彼はすぐに恍惚の表情となり、眠り始めた。
「おやすみなさいませ。ご主人様」
その様子を見届けたメイドはそそくさと持ち場となる店内の片隅に行く。
店の奥の扉が開き、別のメガネメイドが現れる。
藍色の髪をツインテールにしたメイドはその場に居たメイドに声を掛ける。
「お客様は夢の中のようね」
「はい。総帥」
「ふむ・・・では、夢の世界へとお供させて貰おうか」
メイドは眠る客の傍らに座る。そして、客の頭に手を当てた。
すると、彼女は客と同様に眠ってしまった。
残されたメイドは何事も無かったように黙ったまま、新しい客を迎える為にそこに立ち続けた。
時間にして30分程度だろうか。
眠ったメイドは目を覚ました。
「ふむ・・・なかなか面白い情報を見つけた」
彼女は不敵な笑みを浮かべ、銀縁の丸メガネをクイッと上げる。
「ははは。さぁ、楽しい夢を見ろ。そして、これからも我らの肥しとなるのだ」
立ち上がった彼女は笑いながら奥の部屋へと戻って行った。
彼女が向かった部屋には祭壇が置かれ、床には魔法陣が刻まれている。
その祭壇を囲むように椅子が置かれ、そこには3人のメイドが座っている。
「待たせたな。上客が来たので相手をしてやった」
彼女の言葉に誰もが無言で笑みだけを浮かべる。
彼女は一番、奥の椅子に腰掛ける。
「それで・・・次の計画は?」
その言葉に反応して、彼女の右手に座るメイドが立ち上がった。
桃色の髪を背中まで垂らした巨乳メガネメイド。
「国内最大大手のコンタクトレンズメーカーの工場の壊滅です」
「そうか・・・憎きコンタクトレンズの壊滅・・・楽しみだな」
総帥と呼ばれたメイド。
コードネーム 深紅
眼鏡を愛し過ぎたあまり、神格化し、全ての人々の顔を眼鏡で覆う事を夢見る少女。それがあまりに現実的ではない事を知ってるがために、彼女はそれを叶える為、悪魔に魂を売った。そして、その彼女の理想に共鳴した少女達がここに集まり、眼鏡を神と称える眼鏡教団が生まれた。
魔術により、自らの身に悪魔を宿した彼女達は人成らざる力を手に入れた。
それらを用いて、彼女達は眼鏡が世界を覆う為に暗躍する。
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