第14話
「私の名前はレイナ・インペラトリス。気軽にレイナとお呼びください」
少女、いやレイナは、優しい微笑みを浮かべてそう言った。彼女のサラサラの銀髪が夜風になびき、僅かに揺れる様子をぼんやりと眺めながら、口を開く。
「そっか、俺は……」
「ユヅキさん……ですよね?」
ちょっとした悪戯を含んだ微笑みを浮かべてレイナは俺の言葉を遮った。その微笑みは天使のようでありながらも、どこか悪魔的な魅力を孕んでいて、不覚にも見とれてしまった。
「あ、うん……」
「本当は直接聞きたかったのですが、誠に遺憾ながら、そこの猫が何度も『ユヅキユヅキ!』と言ってたので、流石にわかっちゃいました」
「そうなんだ……」
アキラに軽蔑の視線を向けながら語るレイナ。
もはや彼女がアキラのことをどう思っているのかは考えるまでもない。レイナはアキラのことを完全に劣等生物として扱っているようだ。
心の中で少し同情しつつも、アキラの方をチラリと見ると、あのバカはまるで関係ないかのように地面を転がりながら背を向けている。
たまに寂しげな「にゃあ……」という鳴き声が聞こえてくるのを見るに、構っては欲しいみたいだが。
「では、ユヅキさん。そろそろタコをいただきましょうか」
「お、おう……」
レイナはそんなアキラに構わず、俺に向かって笑いながらタコの切り身を差し出してくる。
しかし差し出してくるだけにとどまらず、彼女はあろうことか口の前までタコを持ってきて、所謂アーンをしてきた。
「はい、どうぞ!」
少し躊躇いながらも、彼女が差し出したタコを口にした。生臭さと旨みが混ざり合った味わい、そして独特のコリコリとした食感がいかにもタコだった。
「どうですか? 美味しいですか?」
隣でニコニコと私を見るレイナに、ちょっとした満足感を覚えながら、飲み込んだ後にゆっくりと答えた。
「ああ……美味いよ」
正直、パーティーするほどには食いたくないが……。
彼女がその答えに満足したように笑うと、再び自分の口にタコ刺しを運んだ。しかし、アキラは何やら気に入らないようで、じと目でこちらを見つめていた。
「お前……もうデレデレじゃないか。」
瓦礫の上に腰を下ろして不満そうに声を漏らすアキラ。
コイツは完全に何かを勘違いしている。
「いや違うって! そういうわけじゃなくて……」
「俺をハブって二人でイチャイチャして……」
「いや、だから違うって!」
アキラは俺の弁解を全く聞こうとしない。どうしたものかと思案していると、レイナが鋭い目つきでアキラを睨みつけながら言った。
「にゃあにゃあとうるさいわね……文句があるなら帰れば?」
「何だと!? にゃあなんて鳴いてないぞ!」
アキラはレイナのプレッシャーに少し圧倒されながらも、反抗的な言葉を返した。しかし、声のトーンは確かに落ち込んでいる。
ヤンキー風情では女王様の威圧感には耐えられなくて当然だろう。
レイナはそれを見てニヤリと笑い、立ち上がってアキラの前に立った。
「にゃにを……」と怯えた声でアキラが呟くと、レイナは大きく足を振り上げる。
「ふん!」
アキラは尻尾をピンと張り、恐怖に歪んだ表情を浮かべる。
もはや完全に屈服状態だ。
「にゃ……にゃあ……」
しかし、そんな彼にレイナは鼻で笑い、思い切り足を下ろし、その尻尾を踏みつけた。
「うにゃあああっ!」
アキラは痛みに飛び上がり、その場で体を震わせた。またゴロゴロと地面を転がっているが、今度のはとてつもないスピードだ。
「私とユヅキさんの時間を邪魔しないでくれるかしら?」
視線に射抜かれ、アキラは転がるのをやめる。額から汗が溢れ出しているのを見ているともはや可哀想を通り越して哀れに見えてきた。
「はあ……やっぱり外だと野良猫がうるさくてダメですね……」
「いや、野良猫って……アキラも一応……」
俺はレイナの辛辣な言葉の数々に思わずツッコミを入れてしまうが、レイナはそんな俺を無視してスタスタと歩き始める。そしてそのまま俺の前に立つとニッコリと笑った。
「ユヅキさん、やっぱり家の中でタコパしませんか?」
「え、ええ? でも、吹き飛んでるし……」
「大丈夫です! 私が大工さん紹介しますよ! うんとすごい人を!」
「いやそんな……」
「きっと3時間もあれば直りますよ!!」
「3時間!?」
それって一体何を使ってんだよ……。ブロックで家を作るのにももう少し時間がかかると思うんだが……。
「その代わりに、お願いがあります……」
「お、お願い?」
彼女は恥ずかしそうに頬を赤らめて俯きながらも、決意を固めたように口を開いた。
「私に……ユヅキさんをモフモフさせてください……!」
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少し話がだれてしまい申し訳ない……。
明日からはまた上げて行きます!
もしかしたらあまりに酷いところは後で修正するかも……少しの間目を瞑っていただけると幸いです。
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