第4話 

 グラスのミモザの花は、空調の風にも戦(そよ)がない。なのに、ミモザ本人は不安と期待で胸が潰れそうだ。こんなに武装解除した自分は久しぶりだ。

 武装解除? これまで自分は何に対して武装してきたというのだろう。

 手持無沙汰で、早く冷たいジャスミンティーが来るといいということばかりが頭を過ぎる。どうしてか成田も黙りこんで、しかしその視線を一身に受けていることをミモザは嫌というほど感じとっていたのだ。

 「……おかしいですか」

 場を作ろうとして発した言葉の味もそっけもない響きにミモザ自身が自分で肩を落としてしまった。なぜもっと気の利いたことを言えないのだろう。

 昨日のメイドカフェの女の子の姿が脳裡をかすめた。あんなふうに、軽口が聞けたらとても楽だろう。

「おかしいって何がですか」

 成田の答え方はミモザには少し冷たい響きを含んだものに感じられた。

「いえ、あの」

 口ごもる。

「ふだんの私服と言われて、どうしようと思って正直かなり迷ったんですよね。で、ちょっとふだんは着ない感じの色合いとか柄とか」

「よく似合っていますよ」

 即座に成田は答えたが、その声音はまるで話を打ちきろうとするかのようにミモザには響いた。急にやるせない思いがこみ上げてきた。

「髪型もよく似合っています。ただ」

「あなたらしさを表現しているのかは別ですが」


 

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