17.課題
「その条件、必ず果たします!!よろしくお願いします!」
と、響が言い放ってから次の日の放課後。
ロイド陛下に指定された場所へ僕達はやってきた。
「郊外なんて久々に来たぜ」
指定された場所はこの国の領土の外れ、建物一つない平原だった。
「あそこにいるのロイド陛下かな?」
僕は遠くにぼんやりと人影を発見した。その人影はピクリとも動かず、何かを待っている様子だった。
「こんなところで待ち合わせする奴なんて俺達以外にいないだろ。行こうぜ」
響は遠方の人影を凝視しながら言った。
そうして僕達は陛下を待たせまいと駆け出した。
「来たね」
ようやく露になった人物は僕達の想像とは違っていた。
「神崎会長……?」
「どうして俺がいるのか疑問に思っているみたいだが……こんなところに陛下一人で来させるわけにはいかないだろう?」
神崎会長は当然のように言った。
言葉から察するに陛下の護衛としてやって来たようだ。しかしどうして神崎会長に?
昨日の事をできるだけ内密にするためにあの場にいた会長を指名したのか……?
そんな事を考えていると神崎会長が魔法の構築を始めていた。
「念には念を。今回の出来事を他の誰にも見られるわけには行かないからね。人目を退ける結界を張らせて貰うよ」
神崎会長が言い終えると地面に巨大な法陣が現れた。法人の縁から光のような壁かみるみる伸びていき、やがて僕達のいる空間を完全に閉した。
結界については授業で学んだが、こんなに大規模な物は初めて見た。
「すっげえな」
横で響が呟いた。
「陛下、準備が整いました」
神崎会長が独り言のように言った。おそらくは思念通話だ。
すると地面に人一人収まる程の魔法陣が現れる。
「よし、やるか」
聞き覚えのある言葉が響くと、次の瞬間にはそこに青年が立っていた。現れたのはこれから僕達が挑む相手、進王ロイド陛下である。
「「本日はよろしくお願いします!」」
僕と響は揃って頭を下げた。
「こちらこそよろしくな。それじゃあ早速始めたいところなんだが……先に言っておくことがある」
僕達は自然と息を呑んだ。目の前にいる青年は以前とは違い、明らかな闘志を放っているからだ。それも自分は完全に格下だと思わされるほどに。
「今回俺は本気を出さない。そして勘違いしないで欲しいのだが、これは君達の目的のためだ」
僕達の目的、それは昨日の出来事の後に響から聞かされたことである。響はどうやら単に戦闘経験を積むためにこの戦いに挑むわけではなかった。真の理由は僕のため、未だ再発しない<
そしてロイド陛下もそれに気づいているようだ。
「本気を出さないと言うのは一体……」
響が疑問の表情を浮かべていた。僕のためとは言え、少なからず本気の陛下とは戦って見たかったのだろう。
「二人で戦えばある程度は渡り合える、と思っているかもしれないが……」
横目で見れば響が返す言葉もないといった様子だ。要は図星ということだ。
「悪いが今の君達に本気を出せば…君達は開始の合図と共に大地にひれ伏すことになる」
その言葉に再び息を呑んだ。
疑いたくなるその言葉はおそらくは真実。あの時を止める魔法を見ていなければ到底信じられない言葉であった。
「とはいえ手を抜いて相手をしたところで、君達のためになるかと言ったらそれは否。そこで君達にはこの戦いでルール……いや課題を与えようと思う」
「課題……?」
僕の言葉にロイド陛下は大きく頷いた。
「何、やることは簡単だ。まずシャムロック君は普通に俺と戦って貰う。使う魔法に制限は無い」
陛下は響を見てそう言った。
続いて陛下の視線が僕に移される。
「三空君と俺には魔法の制限を掛ける。今回君と俺が使える魔法はこれだ」
言葉と共に魔法が構築される。展開された魔法陣は僕もよく知っているものであった。
「<
「なんだ?」
僕は恐る恐る言葉を発した。
「恥ずかしながら"あの時"以来何度も挑戦してはいるのですが一度も成功しなくて……」
「その点は大丈夫だ。今回は君は俺と同じ魔法陣を使用してもらう」
「えっと……?」
僕が疑問の表情を浮かべていると今まで静観していた神崎会長が何やら魔法を行使していた。
「魔法の行使について簡単に言うと『魔力の操作、魔法陣の構築、魔法陣が魔法を発動する』というのは分かっているね?」
神崎会長が実際に魔法を発動しながら説明してくれる。
「魔法を知っているのにそれが使えない、ということは、魔力の操作から魔法陣を構築する部分で失敗しているんだ。つまり、既に構築してある魔法陣を使えばそれに魔力を加えることでその魔法が使えるというわけだよ」
「あ、ありがとうございます!」
僕は丁寧に説明してくれた神崎会長に頭を下げた。
神崎会長は片手を挙げて応えた。
横を見れば響も興味深く聞いていたようだ。
神崎会長が一礼して一歩下がると再び陛下が口を開いた。
「そういうことだ。要は俺は<
陛下は簡単そうに言うが、これはかなり厳しい戦いになるのではと思ってしまった。
僕は一度しか使ったことない魔法でロイド陛下に対抗しなければならず、響は支配された空間内で戦わなければならない。
今回、陛下はどうやら僕だけでなく響の特訓するつもりらしい。
勝ち目が無いことは初めから理解している。それなのに僕はこれから始まる特別な時間にかつてない期待を持っていた。
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