第3話 小さきものだ
私がこの土地に居座り始めたのは25年ほど前だ。
それまで長く過ごした土地を離れ、人間の手によってこの地に来た。
丁寧に洗われ、つややかな毛並みとなった時は気分が良かった。
私の尊厳もやっと認められたものか
そう感じたのは束の間、気が付くと前回と似たような拓けた土地にいるではないか。
目の前の人間は私に「じゃあね」とだけ言葉を残し、去っていった。
目を閉じ風を感じる。葉擦れ音や機械のような重い音も聞こえてくる。
どうやら前より少々騒がしいところに来てしまったようだ。
目を開けると私の前には鳩が二羽、様子を伺いに来ていた。
小さきものだ。
きっと弱いのだろう。
鳩たちは何かしゃべりながら私の周りをうろうろするのだ。うっとおしくて今にも尻尾で払いたくなる。
鳩たちはどこかに行ってしまった。
そのあと私の顔を覗き込んだのは、一人の少年だった。
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