第2話 サグリ
次の日もカーテンを開けた。
ライオンは背中を向けたまま
「お前はいつもこの時間にカーテンを開けるな」と呟く。
何度もみつめたその背中は呼吸に合わせて微かに動いているように見えた。
「そうだよ」
今日も鳥の鳴き声が聞こえて、風が生暖かった。
「今日は雨が降るのか」
僕はすかさず握っていたスマホで確認した。
「降らないって」
「―――そうか」
なぜ雨を気にしているのか。なぜ人間である僕と会話ができるのか。
次から次へと疑問が浮かんでは消える。
「雨、すきなの」
「別に」
「あっ、そう」
「外に出るといい」
僕はどきりとした。
まるでいきなり胸ぐらをつかまれたような気持ちだ。
「長く室内にいるより気分が良いだろう」
何も言い返せなかった。
「窓を開けるのはどうだ。それすら気分が悪いか」
「窓は、いい、なんか、暖かい」
「そうか。良いことだ」
なぜか泣きそうになってしゃがみ込み壁にもたれかかる。
鼻の奥が痛くて前がよく見えない。
そのまま床に座り込んで立てなくなった。
立ち上がれるようになったのはそれから5時間後の17時。
外では防災無線のチャイムが鳴っている。
部屋は薄暗く冷たかった。
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