ソコノシトリン
ここのつ
第1話 ライオン
公園にはライオンが一匹寝転んでいる。
人がやってきて、ライオンを傘に入れてあげた。
外は雨が降っていた。
鳥の鳴き声がして湿った地面に車のタイヤが滑る音が聞こえる。
ライオンが笑顔なら何でも良かった。
薄暗い部屋の中で目が覚めカーテンを開けるためにベッドから出るのも面倒だった。
昼夜逆転し、いつも起きるのは昼過ぎ。寝るのは明け方。
変わってしまった自分と変われない自分を交互に見て落ち込む。
リビングのカーテンを開けるとライオンがこっちを向いていた。
窓から外を眺めて丁度正面。公園にいつもいるライオンは背中しか見えなかったはずなのに、今はしっかり顔が見えている。
ライオンは口をパクパクさせた。
意味が分からなかった。
意味が分からな過ぎて窓を開けた。
「今日は雨が降らないのか」
「しゃべれたの」
「今日は雨が降らないのかと聞いている。聞こえているのだろう。」
「知らない。今日は家にいるつもりだったから天気予報を見ていない」
「次に雨が降るのはいつだ」
「本当にライオンがしゃべているの」
「もういい。明日も同じ時間に」
そう言うとライオンは背中を向けいつもの体勢になった。
その日はそれ以上会話できなかった。
思ったよりライオンらしい態度をとられた衝撃と納得感に包まれてお腹が空いた。
自室に戻りカーテンを開けるといつもの景色だった。
いつも憂鬱に眺めた海だ。
机の上の飲みかけの水を飲み、昨日買ったパンの袋を開けて一口ほおばる。
パンのパッケージにはライオンの絵が描いてあった。
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