第2話 これまでを思い出す。

 その後5層まで攻略をした後、スパチャの名前を確認して礼を言った後に配信を終了した。


 第5層までに出てくる魔物は特に(俺にとっては)強くもなくお巫山戯もせずにあっさりと倒した。


 因みに第1層で見せた技っぽいものは所謂ファンサービスというやつである。


 最下層のダンジョンボスであっても俺の戦神器せんしんぎ超破壊者ワールド・デストロイヤーでワンパン出来てしまう為、俺は手加減を心掛けながらのダンジョン探索を行っている。


 全力で狩りに生きていたが、今はそんな風には生きられないので色々と模索しながら生きていると言っても過言ではない。


 理由は強くなり過ぎたからだ。具体的に言うと地上でクシャミをすると建物こそ壊れないが車がひっくり返るくらいには、今の俺には地上は窮屈なモノになっている。


 まぁ、ドラゴンを何匹か狩って国に売り込めばかなりの纏まった金になるからそれだけで生きていけるのだが・・・そのドラゴンを売るにしても俺一人ではコネと時間というモノが足りないので、色々と人付き合いとして手を貸していたら何故かD−Tuberなんてモノを俺がやっているのだから本当に世も末である。


 それでも今は俺の持ち金から会社を設立したり、何人か弟子のようなものを取って指導したり、ダンジョンから採取出来る素材を使って新しい何かを開発したり、それはそれは楽しい毎日と言っても過言ではない。


 でもまぁ・・・これだけだと何故?って思う所も多いだろうからもう少ししたら昔語りでもしようと思う。


 と、いや、と一緒に今日はまったりと、俺の資産を注ぎ込んだマイホームで、妻が作ってくれた絶品料理を食べながら、あちこちで作った酒を呑みながら新婚前の思い出語りをしたいと思う。


 「もう狂也ったら、また恥ずかしい事を思い出させるんだから・・・でも、遅かれ早かれのも当たり前よね・・・んっ」


 恥ずかしそうにしながらもになった、鬼咲 紫おにさき ゆかり(旧姓天藤てんどう)からの色っぽいキスを耳の付け根にいただきながら、俺は隣に座る彼女の腰に腕をまわす。


 妻から投げつけられる挑戦状を全精神力を総動員して抑えつけながら、時折俺から紫にキスを返しながら二人で最初にあった時を語り合う。


 その時は一年程前まで遡るが、当時の俺はかなり尖っていたし、紫もまだ天藤 紫てんどう ゆかりのままでかなり現実に打ちのめされていた時期だ。


 この話は所謂俺達の、まぁ馴れ初めの話になるから聞きたい奴だけ聞いてくれ。








ーーー1年前、2083年2月某日ーーー



 「はぁ!?ドラゴン系の素材の買い取りが9割カットってどういう事だ!?」


 当時、既にになっていた俺は、日本政府のお偉方の頼みでダンジョン省と呼ばれる所でダンジョン素材の買い取りをしてもらっていたが・・・そのダンジョン省の、東京買い取り所で担当職員とトラブルになり、理由を聞くが、


 「いえ、上の決定なので・・・申し訳ありませんがこちらの値段でサインを・・・ヒッ!?」


 「・・・巫山戯てんのか?」


 俺は怒りのあまり超破壊者ワールド・デストロイヤーを職員の首に当てながらそう問いかけた。


 「・・・日本のSランクは俺を含めて3人いるが、アイツらがドラゴンを狩れるって思ってんのか?」


 顔を青どころか白くしながら職員は答えない。


 「・・・わかった、荒鷹総理大臣には俺はもう日本の為に動く事をと伝えておく。その後は・・・の望み通りになってやろう・・・手加減を期待するなよ?」


 俺の言った言葉を理解したのか職員はすぐに土下座をして、


 「申し訳ありませんでした!!・・・止むを得ない理由があるとはいえ、私情で鬼咲様に害する事になってしまって申し訳なく思います!!かくなる上はどうか私の首でどうかお許し下さい!?」


 イライラはしてる・・・してるんだがコイツ今とか言ったか?


 「・・・理由ワケを話せ」


 「・・・・・えっ?」


 まるで信じられないものを見たように俺に視線を向ける。


 「その私情で俺の敵になった理由を言え」


 そもそも、この職員と話すのは初めてではない・・・何だったらだと下手すると今一番俺と話している人間はコイツの可能性もある。


 それまでの感じた印象が間違いではないのならば・・・コイツはこういう事をにやらない。


 俺はコイツのを知っているからだ。


 「・・・の為に・・・その為に俺と向き合う・・・そう言ってたよな?真田さん?」


 俺が彼、真田 龍彦さなだ たつひこにそう問いかけると、彼の中に溜まっていたモノが溢れてきた。


 「あっ・・・あぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああぁ!!?・・・頼む・・・妻を・・・娘を・・・助けてくれ!!!?」


 「任せろよ・・・正真正銘の世界最強が助けてやる!!」


 そう言って俺は、助けたい奴を助ける為に動き出した。





ーーー10分後ーーー


 俺は真田さんの奥さんと娘さんが攫われた事を詳しく聞き出し、すぐに当時、荒鷹総理大臣に連絡を入れた。


 「事情は分かった。すぐに動かせる人員を導入して対処にしよう。・・・奥さん達の所在に心当たりは?」


 荒鷹総理大臣からの質問に俺は魔力探知を使用する事を告げる。


 「・・・連中を威嚇する意味合いも込めて、探知するから日本各地で色々と反応するからそのフォローを頼む」


 俺がそう伝えると、


 「・・・頼むから力加減を間違えて、地形変えちゃいました★なんて事にはならないでくれよ?」


 荒鷹総理大臣のその困ってる声音を聞いて、俺は思わず、


 「いや、ならねぇよ・・・探知するだけだって言ってんだろ?」


 呆れた口調でそう返してしまった。


 「ふっ・・・ちゃんと余裕もあるようだね、なら私は君が無茶をやらかした時の為に彼方此方に手を回しておくとするよ」


 そう言ったので俺はもう敬意もヘッタクレも無い感じで、


 「あまり余裕ブッ漕いてると減らすぞ?そもそも、買い取り所の職員に対する防犯対策、甘過ぎるんじゃね?」


 俺がぶっちゃけてそう言うと、荒鷹総理大臣も苦虫を噛み潰した表情で、


 「・・・確かに私達の想定が甘いのもあるだろうな・・・良し!!この際だから、こちらもやることにしよう!!具体的には他のSランク二人にも声をかけて、後は・・・新設した警察チームと特殊チームを今回の実戦で・・・それから・・・」


 国家権力のスイッチを適当に押してしまった俺は、その事実を気にせず早速魔力探知を行った。


 この魔力探知というのは潜水艦のソナーにを付けた技能で、波長として外に放出した魔力の波にその個人の魔力が少しだけくっついて返ってくる事で遠くにある物を判別する技能である。


 因みに建造物等の無機物に対しては通常のソナーと変わらない探知方法となっているが、人を含めた動物なんかは先程言った通り、返ってくる魔力の色で判別が出来るのである。


 そして、より正確な探知をする為には出力を上げる事で可能となるのでドラゴンを片手間で狩れる俺がこれをやると・・・


 【プォォォーーーン!!?プォォォーーーン!!?緊急警報発令!!緊急警報発令!!異常な魔力波を検知致しました。職員は直ちに・・・】


 と言った具合に彼方此方が大騒ぎになるので予め荒鷹総理大臣に連絡を入れておいたって訳である。


 俺の保有魔力と魔出力(車の馬力のような単位)で、これをやると日本どころか韓国や台湾を超えて中国、ロシア・・・下手するとハワイも超えてアメリカのロサンゼルスなどにまで魔力が届いてしまう。


 だが、俺に自重する気は一切無いので、行動の前に連絡をするようにしているという訳だ。


 次に会った事も無い人物の判別が可能なのかという問題が気になるかもしれないが、そこは先程言った返ってくる魔力に色が付いてるのでそこで判別する事が可能だし、俺はダンジョン内ではこの方法で獲物を探しており、俺がこのやり方で狩りをしている事を知っている人達は皆口を揃えて「まるで陸を歩く鮫だ」などと言われている。・・・解せぬ。


 そんな雑念の中でも俺はしっかりとターゲットの捕捉に成功する。


 真田さんの魔力の残滓だけでは無く、真田さんとの魔力が混ざった反応がある上に・・・そのの反応もすぐ傍にあることからこの二人が真田さんの奥さんと娘さんである事が伺える。


 俺の感覚だと魔力は個人個人で波長が違うが、親と子だと両親の魔力の波長を混ぜ合わせた魔力波長が子に出やすいというのが俺の個人的な感想だ。一応、東京の大学からそんな感じの論文も発表されていると誰かから聞いた記憶がある。


 「・・・場所は・・・大阪の辺りか?いや、丁度京都との境目辺りか・・・何にせよ・・・」


 俺は探知した場所を正確に把握した後、そのまま魔力を使って重力に逆らい空へと浮かぶ。


 「・・・場所のデータは忘れずに送ってくれよ?後、貴重な日本の土地を頼むよ?」


 未だに通話が繋がっていた荒鷹総理大臣にそう釘を刺されたが・・・


 「・・・相手がクソ野郎だったら保証は出来ねえなぁ・・・まぁ、着いたら場所の連絡くらいはしてやるよ」


 俺はそう言って通話を切り、マッハ5で空をぶっ飛び始める。


 勿論、この時も周囲への配慮を忘れてはならない・・・具体的には最低でも5000メートル以上の上空で尚且つ魔力を操作してエアースロープのような道を作る事だ。


 もっと簡単に言うならば魔力で分厚い筒を作り、それを目的地まで道として引いて後はその中をかっ飛ぶ・・・という感じだ。


 するとどうなるか?なんだが・・・簡単に言うと俺がちょっと本気で動いてもソニックブームでモノが壊れなくなる。


 魔力で作った筒がソニックブームを抑えるからだ。


 因みに俺は走ってもマッハ5以上のスピードが出る。


 「だから俺から逃げられると思うなよ?」


 俺は目標の方角に向かってそう一言呟くと、俺は高く高くして魔力の壁を上下左右と後方に作りで空を駆けた。






ーーーーー哀れな愚か者sideーーーーーーーー


 俺達は、オヤジからの指示で東京と神奈川の県境辺りに住んでいる母娘を攫ってきた。


 母親は色気もあり美人でアホ共が興奮する程だったし、娘の方も後10年もしたら母親のようになるだろう。そう思える見た目だった・・・


 それを目の当たりにして下半身でしか物事を考えない馬鹿が一人手を出そうとしやがった。


 と言っていいのか・・・分からないがあの時・・・あの母娘を守れなかったら・・・俺はこの世には居なかっただろう・・・


 何故なら馬鹿をボコボコにしたらが俺の目の前に現れたんだから・・・


 いや、頬を叩かれた程度で済ませてもらったのだからこれは馬鹿のおかげなのか?・・・只、それでも俺はその時のの目を憶えている。


 あのドラゴンのように、其処に存在いるだけでしまえそうな存在・・・


 それが俺と兄貴のファーストコンタクトって奴だった。






ーーーー1日後ーーーー


 翌日、俺は助け出した真田さんの奥さんと娘さんに、旦那の顔を見せる為に二人が泊まる病院に連れてきた。


 「真姫!?日奈!?良かった!?無事で・・・!?」


 病室のベットの上で話をしていた二人に抱きつく真田さんを扉の外から眺め、そっと扉を閉めた。


 「・・・失礼します。鬼咲 狂也Sランク探索者でいらっしゃいますか?」


 閉めて暫く時間を空けようとしたら警察の制服を着た女性に声をかけられた。


 「そうだが、そちらは?」


 言外に誰だと言う表情をしたら、


 「失礼しました。私は藤田ふじた 舞夏まいか巡査と申します。大阪府警の方にお越し頂くように御連絡をするように言われて参りました」


 巡査と言った彼女はかなり若い・・・ひょっとしたら俺とそんなに歳が変わらないのかもしれない。


 「訪ねるのは構わないが何の用件だ?」


 そう彼女に問いかけると、


 「私は・・・本件の協力に感謝を伝えるだけだと、聞いております」


 「・・・ふぅん?・・・」


 妙だな?・・・と、この時点でも考えていたのにこの違和感を放置して、結局俺はこの後のだから、本当に自分で自分が嫌になるぜ・・・


 「・・・その、ついて来て貰えるのであればこれからパトカーでお連れいたしますが・・・」


 如何でしょう?・・・そう聞いてくる彼女に俺はあまり警戒もせずに彼女が案内するパトカーに乗り込むのだった。

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暴食のベルゼルガー 〜彼は見た目厳ついけどいい奴なんです〜 @kikuhitohira

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