第1章
そして今日は、私の両親に彼を紹介することにしていた日だった。
両親には、「紹介したい人がいる」と、そう言ってはあるのだが、結婚のことまでは話していなかった。
……父の反応が怖かった。
「娘さんと結婚させてください。お願いします」
彼は両親にそう言って頭を下げていた。ここまで驚いている両親の顔を見るのは、産まれて初めてのことだった。
私には今まで恋人ができたこともなく、男友達と呼べる存在もいない。紹介したい人がいると伝えた時も驚いていたのだが、いきなり紹介したと思えば、結婚の話。驚くのも無理はない。いや、驚かないほうがおかしいともいえる。
「必ず幸せにします。一生彼女を支えて、何があっても彼女を守ります」
最初は両親も反対していた。結婚は仕事に慣れ始め、仕事が落ち着いてからでもいいのではないかとも言われた。二人で暮らすのだから、生活費など、自分達の力だけでやっていく必要がある。両親の言っていることは、間違えているわけではなかった。
しかし、それでも彼は諦めることはなかった。
「また明日来ます」
そして一週間彼は、私の家に通い続けた。私を幸せにして、一生支えて、何があっても守ると、一週間その言葉達を真剣に言い続けた。
そして両親はそんな彼を見て、とうとう認めてくれたのだった。
私達は高校を卒業した後、それぞれ地元で就職をすることになっていた。そうでなければ、そもそもプロポーズなどされていなかったとは思うのだが。
自宅から通うはずだった職場も、彼と二人で住むアパートから通うことになる。
私達は二人で住むアパートを見つけたり、家具を探したりと、二人で住む準備を進めた。諸々の資金などは、彼が両親からお金を借りたらしかった。
そして三月の末に、私達は籍を入れ家族となった。私は、
彼の両親が資金を出してくれたのは、指輪も例外ではなかった。私はいらないとも言ったのだったが、彼が「どうしてもお揃いのものをつけたい」と言っていた。
結婚指輪は、既製品の中から低価格の物を選んだ。私は特にこだわりがなかったので、デザインは彼に任せることにして、私は彼が選んでいるところを横から見ているだけだった。
そして一つ一つ丁寧に見て、ようやく彼のお眼鏡にかなう物を見つけたようだった。
しかし、サイズ直しがあるために、受け取りは一ヶ月後となった。
その後私達は引っ越しを済ませ、今日から一緒に住むこととなった。
「今日からよろしく、笑花」
「こちらこそよろしく、夢原君」
「そこは名前で呼びなよ」
「……
私が名前で呼ぶと、彼は嬉しそうに笑っていて、私の頭を優しく撫でていた。
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