第1章
そして私は……、彼の言葉を受け入れた。
私はこの先も、人のことを信じることはできないだろう。誰といたとしても、誰と出会えたとしても、そのことは変わることはないように思う。
だとしたら、こう言ってくれる相手がいるのであれば、この話に乗ってみてもいいのではないかと、思えてしまったのだった。
私自身、結婚をいつかしたいという気持ちを持ったことはない。
しかし、親からすれば子供に結婚してほしいという気持ちがあるのは、何も不思議なことではない。逆に結婚して幸せになってほしいという親の方が、多いことだろう。
それは私の家もそうで、普段の会話の中で「笑花はどういった人と結婚するんだろうね」「いい人と出会えればいいな」と、言われたことは何度かあった。それは、家庭での些細な日常会話なのかもしれないが、私はその話が苦手だった。
この先結婚を先延ばしにして、両親から「いつ結婚するんだ」と、何度も言われるのは面倒に思ってしまうことだろう。そう考えれば、この機会を逃してしまうのも、もったいないように思えてしまった。
「……分かった。結婚してもいいよ」
私のその言葉を聞くと、彼は笑顔を見せ、私に急いで抱きついてくる。
彼に抱きつかれている中で、私の目の前に見える青空は、いつもの天気のいい日と変わることがない、ただの青空だった。
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