愚ゑン除亞です.懐かしい話をしよう.

@nyomonyomocyder

2024.4.5に投稿したポスト

 2024.4.5に投稿したポスト


 昔話をしよう。

 あれは小学1年の夏休みの中盤雨の降る時期だった。

 当時私は隣町から転校してきたばかりで友達がおらず、途方もなく暇だった。

 pcで空虚なフラッシュゲームをするのにも当に飽きていた私は、色々な遊びを考案した。


 そんな中で一番ハマった遊びが、意味のない言葉発狂ゲームだった。


 ルールなんかはなく、思いついた擬音や造語を飽きるまでただ声に出し続けるだけだった。

 特にハマった言葉は何日も言い続けた。そのうちの一つが「ぐうぇんじょあ」だった。当然「ぐうぇんじょあ」なんて言葉に意味なんてなく適当に思いついた言葉だ。


 私は確か一週間近く「ぐうぇんじょあ」と言い続けていた気がする。


 何を言われても「ぐうぇんじょあ」何も言われずとも「ぐうぇんじょあ」。叫び続けた。







 やがて声が枯れ、そんな遊びに飽きた日、久しぶりにフラッシュゲームで遊ぼうと思ったんです。

 あの頃は、ローマ字が打てず、履歴を使って親に紹介してもらったまとめサイトに飛んでいました。


 私はいつものように履歴からフラッシュゲームまとめサイトを探し始めました。


 ホイールをくるくると回して下に下に。いつもこうやって探していました。


 でもいつまで回しても、あのページを見つけられないのです。


 違和感に気づいた私は、並び続ける履歴の一つを押してみました。


 するとそれは「ぐうぇんじょあ」という単語をgoogleで検索したものでした。

 納得した私は履歴に戻りました。でもすぐに、あの異常な量の履歴を思い出しました。


 今度は下から上にホイールを回し、それらの履歴を見ていきました。



「ぐうぇんじょあ 何」

「ぐうぇんじょあ 子供」

「子供 叫び続ける 治し方」

「子供 ぐうぇんじょあ 何」

「ぐうぇんこあ 怖い」

「ぐうぇんじょあ 意味」



 たくさんの組み合わせで検索されており、それぞれ何十ページもの深みに潜りgoogleのoは伸びきっていました。


 上へ上へ履歴を登っていくと、多く出現するアイコンがやがてgoogleのカラフルから赤黒いものに変わっていました。


「グウェンじょあ 神さま 信仰 呪い」


 その単語群が区切りとなっていました


 googleの検索結果を見てみると、ただ一つだけがポツンと表示されました。


「子供と神様の繋がり 〜お経について〜」


 サイトに入ると、黒い背景に胎児と思われる写真と赤をベースとしたバナーが目に入りました。


 そのしたには、妊婦さんの苦しみや、子育ての苦しみなどを綴り励ます文が書いてありました。

 どうやらそれはこのサイト全ページに共通する定型分のようで、本文はその下に書かれていました。



 そこにはあの「ぐうぇんじょあ」という単語がありました。



「ぐうぇんじょあ(愚ゑン除亞)は神様に印をつけられた、つまり呪われたの子が良く発する言葉です。私たちはその言葉をありがたく天の神から頂戴し、それを唱えることで栝力を頂戴いたします。」


 その後、「お経の正しい唱え方」、「何故に唱えるか」とページへのリンクがありました。


「栝力は呪われた子から頂けます。呪われた子とぐうぇんこあを唱えることで、呪いを栝力に変換するのです。

 私たちは呪われた子を救い、栝力を頂戴する儀式を取り行っています。こちらからご連絡下さい。」


 指し示すページを開くとそれは閑古そうな、独自の掲示板でした。


 しかし遡ると、多くの投稿があり、「坂上」というハンドルネームの人に対して匿名で多くの質問、依頼が寄せられているのがわかりました。


 その中で最新の書き込みは2日前のものでした。


「うちの子は最近、ぐうぇんじょあと叫び続けています。どうすれば良いのかわからなくて、怖くて。助けていただけないでしょうか。 RE:坂上」


 幾つかのユーザから祝いの返信が投稿され、その後坂上が現れた。


「おめでとうございます。坂上です。よければお家に伺わせて貰って、私たちと一緒にお子さんの呪いを栝力に変えさせて貰えればと思います。そうすれば安心です。料金は要りませんお子様とお経の唱え方を学びましょう♩」



 最後には電話番号と住所が添付されていました。



 母は、朝からご飯を待ち侘びる私たち兄弟を置いてどこかへ出かけていました。

 時計をみると16時ちょうどぴったりでした。


 プルルルルル!!


 電話が鳴ったんです。電話が鳴ったら取り敢えず出るように躾けられた長男である私は、恐る恐るその電話に出ました。


「は。。い。。」


「あぁ私だよ!隆だよね?もう大丈夫だからね。今皆んなでお家に向かってるから!」


 母の声でした。


「m。。まま、みんなって?」


「隆をいい子に戻してくれる凄い人たち何だよ!まあもう家に着くから、隆がいるか気になっただけだから!じゃあまた後で!」


「あっ。。まm」


 母に謝ろうとしました。でも途中で切れてしまいました。


 そのすぐ後でした。インターンホンがなって知らないおばさんの声がしました。


 怖さで固まっていた私を不思議に見つめる弟。


 やがて母の声がして、ドアが開きました。


 母を筆頭に、知らないおばさん達が続々と入ってきました。

 弟は母に別の部屋に連れて行かれました。


 彼女らは、私に「ぐうぇんじょあ」と唱え、私の手を握り「おめでとねぇ」と口々に言うのです。


 やがて母が戻り、私は助けを求め顔を向ける。でも母は和かに知らないおばさん達と私を見つめるのでした。








「では始めますよー。こっちおいで」


 黒く塗られたブルーシートの上に立つおばさんの一人が手招きをし、僕を呼ぶ。

 僕の周りをたむろしているおばさんとママはそのブルーシートへと向かった。


 僕だけは動けなかった。今にも漏らしてしまいそうだった。

 にこやかなおばさんたちが手招きをする中で痺れを切らしたママが、こちらに向かい歩いてきた。


 腕を引っ張るママに、「やめて。やだ。」などと叫ぶ。ここであの言葉を叫ぶわけには当然いかなかった。


「こっちにきなさい!いいから!」

 母は怒鳴る。


 そんな顛末を見ていたおばさんの一人が怒鳴った。

「高野さん!!良いからこっちに戻りなさい!」


 おばさんは、普段僕を叱るママを叱りつけた。

 そして言う。こちらへおいでと、にこやかに。


 僕はママを可哀想に思い意を決して、向い始めた。


 すると声援が上がった。

 足がすくんだが、ブルーシートの中心へとたどり着いた。







 それから彼女らは顔の色を変え、私に向かって、怒鳴り始めたはずなんです。「ぐうぇんじょあ」と。


「ぐうぇんじょあ」


 母も「ぐうぇんじょあ」と、怒っているのか笑っているのかわからない顔で怒鳴り続けていました。


「ぐうぇんじょあ」


 私は怖くて涙が出ましたし、おしっこも漏らしてしまいました。


「ぐうぇんじょあ」


 気づけば私はブルーシートの上で、ありあらゆる体液をぶち撒け、びしょびしょになっていました。


 うっすらと青いブルーシートが見える、赤黒い液体は、唾液や涙、尿や鼻血などで、黒い塗装が剥がれ落ちたことで出来たようでした。


 彼女らは、その液体を嬉しそうに飲むのです。


 おかしくなった私は、そこで倒れ込み、液体を彼女らに弾きとばして、顔が液体に浸り、気を失いました。







 目が覚めると、肌触りのいいパジャマで、いつもの布団の上で目が覚めました。


 彼女らはすでにどこかへ消えていて、あの異臭も消えていました。


 キッチンを見ると優しい母の顔がありました。


 安心した私は、どこか気分の良い、健やかな夢の後味を感じていました。

 あの悪夢のような夢も、思い出すと何故かやさしく、嬉しさで胸がいっぱいになるのです。


「おはよう、お母さん」


「やっと起きた!良かったわね本当に!たk。。ぐうぇんじょあ!!!」





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