第28話 脱法セックス
「竿谷君……。あ~し、もう我慢できない!」
体育倉庫の鍵を内側から締めた途端、アゲハは獣に変貌した。
はぁはぁと熱っぽい吐息を荒げながら、乱暴に九朗のベルトを外しにかかる。
「だ、ダメだよアゲハさん!? こんな所でこんな事――」
その先はアゲハの唇に塞がれた。
甘い舌がするりと侵入し、触手のように口内を蹂躙する。
抵抗する間もなくストンとズボンが落ち、汗臭いマットの上に押し倒された。
「……竿谷君は、あ~しとエッチ、したくない?」
物欲し気な顔でアゲハが聞いた。
「……勿論したいよ! でも、涼子さんとの約束が……」
脳裏に浮かんだ涼子の顔がはち切れそうな理性を繋ぐ。
「バレなきゃ平気。でしょ?」
そう言って、アゲハは生まれたままの姿になった。
九朗の上に覆い被さり、挑発するようにたわわな果実を揺らす。
雌豹の腰つきがスリスリと、九朗の股間の発射台を舐めるように愛撫した。
九朗の理性は蒸発した。
「アゲハさん!?」
獣になった九朗がアゲハを押し倒し、本能のままに身体を貪る。
「ぁん、ぁん、ぁん! 凄い竿谷君! 最高だよ!」
「アゲハさん! アゲハさん! アゲハさん! あぁ、ダメだ! 俺、もうっ!?」
「いいよ、来て。あ~しでいっぱい気持ちよくなっちゃえ!」
九朗は射精した。
†
「……最低だ」
九朗はコッソリ風呂場でパンツを洗っていた。
夢精したからである。
放課後の体育倉庫でアゲハと禁断の行為に及び、42年越しに童貞を捨てたと思ったら、パンツを犯しただけだった。
しかも夢とは言え、涼子との約束を反故にして。
情けないやら恥ずかしいやら。
涼子は勿論、アゲハにも申し訳ない気分だ。
理由は自分でも分かっている。
アゲハの結婚するまでエッチしません宣言のせいだ。
アゲハを責めるつもりはない。
だってアゲハはビッチだったのだ。
涼子を納得させるには、これ以上の方法はないと九朗も思う。
でも、切ない。
すっごく切ない。
今すぐにとは言わないが、そう遠くない未来にアゲハとエッチ出来ると思っていた。
早ければ今年の夏休み。
遅くとも二年生になる前には出来るんじゃないかと期待していた。
それが、結婚するまでお預けだ。
少なくとも、高校生の内は無理だろう。
卒業してからだってどうなるかは分からない。
だって結婚だ。
そんな事、42年で幕を閉じた前世でもなし得なかった。
下手をしたら、エッチ出来ないままアゲハと破局する未来だって全然あり得る。
そう思えば、九朗の絶望は計り知れない。
一方で、アゲハとの関係は急速に進んでいた。
涼子と対決し、結婚するまでエッチしない宣言をした事で肩の荷が降りたのだろう。
それまでの卑屈な態度は何処へやら。
アゲハは本来の明るさを取り戻し、積極的に九朗に絡んできた。
真面目になったのだから、九朗との事で誰かに文句を言われる筋合いはないとでも言う様に。
休み時間の度に教室に現れては人目をはばからずイチャイチャし、昼休みになれば一緒にお弁当を食べ、もちろん帰りは途中まで一緒に帰る。
実に高校生らしいプラトニックな恋愛だ。
それはそれで最高ではあるのだが、九朗としてはもどかしい。
だってこの先どれ程関係が進んでも結婚するまでエッチ出来ないのだ。
そんなの生殺しと一緒である。
それに、出来ないと思うと余計にしたくなるのが人間という生き物である。
いけない事だと思いつつ、ふとした瞬間にアゲハとのエッチを妄想してしまう。
エロゲでプレイ内容を知っているのも良くなかった。
加えて今はエロゲの竿役に転生した身である。
行き場を失った
その結果、恥ずかしいお漏らしをしてしまった。
まぁ、夢精とは言えアゲハとのドリームセックスは最高だったが。
パンツさえ汚さなければまた見たいくらいである。
「ってバカ。なにを考えてるんだ俺は。夢とは言え、約束違反には変わりないだろ。こんなのは、二人に対する裏切りだ。大体こんな所、涼子さんに見られたらどうするんだよ」
実の母親が相手でも死ぬほど恥ずかしいのに(経験あり)。
あんなに若くて綺麗な義母(その上めっちゃシコったエロゲのヒロイン)にバレたら恥ずかしくて死んでしまう。
息子の威厳なんか粉微塵に消し飛んで、今後一つ屋根の下で生活する上でも色々と支障をきたすだろう。
幸いまだ夜中だ。
涼子に見つかる前にさっさと証拠を隠滅しなければ。
そう思ってネッチョリカピカピパンツを揉み洗いしていたのだが。
「九朗さん? こんな時間にどうしたんですか?」
「あqwせdrftgyふじこlp!?」
声にならない悲鳴をあげた。
トイレにでも起き出したのだろう。
すりガラスの向こうに涼子が立っていた。
「な!? なんでもないです! その、えっと、そう! 寝汗かいちゃって! ちょっとさっぱりしようかと……」
「こんな時間に?」
「……えっと、まぁ」
「ふ~ん……」
(ヤバイヤバイヤバイヤバイ)
女の勘と言うのだろうか。
なんだか涼子は疑わし気だ。
「あ、あの。涼子さん? そ、そこに居られると、恥ずかしいというか……」
「ごめんなさい。でも、なんだか変な匂いがして。これ、なんの匂いかしら」
「下水でも詰まってるんじゃないですか!?」
「う~ん。そういう匂いじゃないと思うんだけど。どこかで嗅いだ覚えがあるというか。物凄く懐かしいと言うか……」
(そりゃそうでしょうね!?)
今でこそ涼子は欲求不満を拗らせた寝取られ枠の義母なのだが、かつては夜の街でブイブイ言わせていた性戦士なのである。
そりゃ精子の匂いだって嗅ぎ慣れている。
「き、気のせいじゃないですか!? 俺は全然感じませんよ!?」
「そんな風には思えないけど……。でも、気にする程の事でもないわよね」
「そ、そうですよ! 夜更かしはお肌の敵ですし! 俺に構わず寝ちゃってください!」
「そうするわ。邪魔しちゃってごめんなさい」
「いえいえ! おやすみなさい!」
「おやすみなさい」
どうにか誤魔化せたとホッとした矢先。
「ところで九朗さん夢精した?」
「涼子さん絶対わかってましたよね!? ハッ!? しまった!?」
わざとらしく聞かれてつい突っ込んでしまった。
そしてふと気づく。
これは原作にもあった夢精バレイベントだ。
選択肢を間違えるとそのまま涼子に性処理される。
流石に今のルートではそんな事にはならないと思いたいが……。
元がエロゲなのでどうなるかなんて分からない。
「やっぱり夢精しちゃったのね。もう、九朗さんのエッチ♪」
「ちょ、涼子さん!? 開けないで下さい!」
涼子が扉を開けようとするのを必死に押さえる。
現在進行形で白いお漏らしパンツを洗っていたのだ。
風呂場の中は栗の花にも似た濃密な香りで噎せる程。
こんなの嗅がれたら恥ずかしいし、涼子が暴走するかもしれない。
寝取りルートの他にも涼子は甘々ママルートがある。
そんな涼子は設定上、筆おろしとか夢精とか童貞臭いシチュエーションが大好物なのだ。
ハッキリ言って変態だが、エロゲのヒロインなのだから当然である。
「遠慮しなくてもいいのよ。義母さんがお漏らしパンツを洗ってあげます。息子のお漏らしパンツを洗うのは母親の務めですからね♪」
「遠慮しますよ!? っていうか力つっよ!?」
「母は強しです。おっほ♪。すっごい匂い。これは九朗さん、派手にやりましたね♪」
「うぅ……そんなにジロジロ見ないで下さい……」
寝取りルートならドMだが、ママルートだとSっ気のある涼子である。
そして九朗の前世はM男だった。
いけない事だと思いつつゾクゾクしてしまう。
「あぁ……。そんな顔して……。いけない九朗さん……。いったいどんな夢を見て夢精しちゃったんですかぁ?」
うっとりと嗜虐的な表情を浮かべる涼子。
と、不意に視線が冷たくなる。
「……まさかとは思いますけど。アゲハさんとエッチな事する夢を見たんじゃないでしょうね」
夢精パンツで股間を隠しつつ、九朗はドキッとして視線を逸らした。
「……そんな、まさか、ありえないですよ……」
「絶対嘘だ! あぁああああ! 義母さんと約束したのに! 九朗さんが無断で女とエッチした!」
「不可抗力ですよ!? 夢の中だし!」
「中出し!?」
「してません!? ……いや、したか……」
「はいアウト! レッドカード! 一発退場!」
「待ってください! その辺は結構曖昧だったんです! 童貞で経験ないから!」
「そんなの言い訳になりますか!?」
「なるでしょ!? そもそも夢なんですよ!?」
「夢というのは深層心理が現れるんです! 夢でエッチするって事は、現実で誘惑されてもエッチしちゃうって事ですよ! つまり有罪! ギルティです!」
確かにそれは否定できないが、だからと言って九朗も引き下がれない。
「異議あり! そもそもあの約束はアゲハさんが涼子さんと交わしたもので、俺は関係ないはずです!」
「だとしても、アゲハさんが九朗さんとエッチしたらアウトでしょうが!?」
「それが俺の妄想から発生した非実在性アゲハさんなら無効です! っていうかそんな理由で別れさせられたら流石にアゲハさんが可哀想でしょ!?」
アホみたいな言い合いは朝方まで続き、今回だけは特別にお許しを貰った。
「……でも。次はありませんから! 次にアゲハさんで夢精したら、ペナルティです!」
「そんなのどうしろって言うんですか……」
ハッキリ言って不安しかない九朗だった。
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