第五話 「第六感」

いつものように朝起きて、学校に行く日常がまた始まる。

なんだか最近、この「記憶旅行メモリートラベル」をたくさんして行くうちにこの体験がなんだか楽しいのか辛いのかわからなくなってきた。

「あっても良い能力」、「なくても良い能力」、「そうでもない、中立的な能力」の大きな三つの枠の中に、あっても良い方に二つ、なくても良い、いや絶対にいらない能力が一つ…。

しかも、なくても良い能力がとても悪さをしてる。ちょっと怖い。

将来的にこの能力もちゃんと使える時が来るのだろうか。

そんなこと考えていると、ある1人の男子に肩をトントン、と触られる。

振り返ると、こっちにきてと言わんばかりに手招きしている。

ちょうど昼休みで暇だったし、行ってみることにした。

ついて行った先は、体育倉庫の裏だった。

すると耳元に近づき、

「大丈夫?とても辛そうだったけど。」

と声をかけてきた。

耳が聞こえない私のことを思ってなのだろうか。とても優しい声のようだった。

「うん、最近は大丈夫。」

「ううん、君は大丈夫じゃない。みんなからいじめられてるでしょ?それに、君の能力のことなんてもうお見通しだよ。」

「そっか…。信じてくれる人がいたんだね。ありがとう。」

「それでなんだけどさ、私から一つ能力を分けても良いかな?」

「どんな能力??」

「『第六感ボイス・フロム・アナザーワールド』。」

「第六感…。どんな能力なの?」

「この能力は正しい道を予言してくれるの。」

予言…、まるで『白目のお姉さん…。』

「白目のお姉さんって言ってるね?僕も本音読取シンクトークの能力を持ってるから、わかるよ。」

「君が苦痛にだんだんと耐えられなくなっていることも。」

「まじか…。心配してくれてありがとう。」

こんな私でも、支えてくれる人がいたなんて…。

「じゃあ早速試そうか。まずこの手のどちらかにゴミが入ってる。君はどっちかを選んでゴミがあったら君の勝ち。そうでないなら僕の勝ち。」

いきなりだなおい(笑)。まあでも新しい能力を発揮するチャンスだ。

そう思い、私は右を選ぼうとすると…。

『左を選べ。』

とどこからか渋い声が聞こえた。私は言われるがままに左を選ぶ。

「左だね。結果は…君の勝ち。」

やった、上手く行ったみたい。

「どうかな、この能力があったら結構感覚の取り戻しが早くなると思うけど…。」

「え?なんで知っ…あ、あの能力ね。」

「そうだよ。もう全部知ってるからね。」

…すごい、こうやって喋ってないことも読み取ってる…。私以上の超能力者なのかな?

「今日はありがとうね。私頑張るよ。」

「うん、どういたしまして。」

そうして昼休みが終わり、午後の授業に入る。

午後の授業はフツーに暮らすことはできたが、その間も何かされそうでビクビクしていた。

そして授業も終わり、帰り道を歩いていると、

『危ない、避けて!』

と聞こえたのですぐさま横跳びをして回避した。

すると、奥からバイクが突っ込んできた。そして顔面の真横を通り、その瞬間に映った運転手の顔が、くそっとでも言ってるかのように険しくなった。

私はその顔を見て、背筋が凍った。怖くてたまらなかった。

私は走って家に帰り、今日のことを親に全部言った。


しばらくして、落ち着きを取り戻した私はご飯を食べた後、『記憶旅行メモリートラベル』の準備をした。

今日は『第六感ボイス・フロム・アナザーワールド』も修得できたわけだし、今度こそ…。と思い、希望のかけ布団をかけて世界へ潜る…。

今日は、成功するような匂いがした…。

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