軽やかな読後、実に多様な光景と対話を目撃した充実感があります。読むときによって様々な解釈の発見がある自由なお話たち。例えばホットコーヒーは飲む時間や場所によって印象が変わるけれど、いつもコーヒーの側はいつも変わらず、しかも温かいままのよう。またご馳走になりに参ります。
庭と記憶、ソーダと夏、水たまりと宇宙。不思議な象徴で描き出された、詩的な物語は、小説を読む楽しみを改めて認識させてくれる味わいの深さ美しさ。とびきり美味しい飴を好きなだけ味わうみたいに、いつまでも深く楽しませてくれます。何せそのイメージの世界は美しく、とにかく自在です。身近なものから、宇宙の彼方にまで当たり前のように手を伸ばせる。人間は無限で自由だって、解き放ってくれるような作品です。