悪夢の始まり 02
5つの赤い蝋燭が私の目の前にあるテーブルに横に並び、綺麗な光を灯し揺らいでいる。
左端の蝋燭はすでに火が消えていた。
宮殿のような古びてはいるが歴史を感じさせる煉瓦で覆われた一室の中、豪華な椅子に座り赤ワインの入ったグラスを片手で揺らしながら赤いスーツを着た髑髏が私に告げる。
「あと4つ、魂を狩ってこい」
私は瞑っていた目を開ける。
前にあの髑髏と交渉した日を思い出していた。
こんな状況だというのに随分と余裕があるんだなと自分を自傷した。
薄暗い畳のある和室。きっと今この状況と関係がなければこの部屋でくつろぎ、ゆっくりとお茶菓子でも食べていたのだろう。
...私の目の前にいるあのクソヤロウがいなければもっと良かったのに。
和室の奥には肩で息を切らしながら、怯えるように震えてこちらを見ている変態坊主...神月清正がいた。
足はガクガクと震えてもう立てないらしい。
豪華な衣装についた血は彼女達の返り血で黒くなりはじめている。
...こいつを野放しにする訳にはいかない。
私は神月清正に目を合わせた。神月の目がパチリと合う。
そうすれば神月の目の網膜は赤く染まり、後に神月は震えることもなく顔以外動かなくなった。
呪術をかけるのに成功した。
神月は自分の体が自由に動かせなくなったのか、混乱し首だけがもがくように動いている。
まあ、私があいつの立場だったんなら逃げたくもなるよね。
私の右手にはメデューサの首を切り落とした鎌、ハルパーが握られている。
私は動かない神月清正に近寄り、神月清正の頭を左手で掴んだ。
理解出来ない言語を撒き散らしながら暴れる神月にハルパーを首にかける。
すると神月は私に命乞いをしてきた。
「頼む!わ、わしの命だけは勘弁してくだされ!か、神様もそうおっしゃています!」
はっ、こいつまだ神様を盾に使うのか?彼女達にあんな無慈悲なことをしておきながら自分は救われて同然だって言うのか。
...どこまで見下げた奴なんだ。
私は右手に力を込めて、神月を見下しながら告げた。
「あっそう...ならあの世に逝って神様とやらに伝言を頼むよ」
すうっと息を吸い込み、大きい声で私は叫んだ。
「くたばりやがれ!くそやろう!!」
込めた力を解放するように、ハルパーをおもいっきり引いた。
水風船が潰されて弾けるような音と骨が折れる音が同時に発し、一瞬で終わる。
切り落とされたそこからは噴水のように液体がいきよいよく溢れてでくる。
顔や体に液体が掛かる。その液体は私の頬から顎にそって落ちていく。
ーこれは私の涙じゃない。だって私は泣いていないから。
コントロールを失った神月の体は力をなくして畳に寝っころがる。
私の左手にはあいつの一部が握られていた。
私がこんな地獄の様な日々を送り始めたのは愛しいあの子が居なくなってから、一週間前の事だった。
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