エリーの死の受容と幸福論
シンデン
悪夢の始まり
悪夢の始まり 01
人間には「死の受容の五段階」というものがある。
...と、エリザベス・キューブラ・ロスはそう提唱している。
死の受容五段階というのは人間が死ぬ瞬間...それを受け入れるまでを定説したものである。
第1段階 否定
第2段階 怒り
第3段階 取引
第4段階 抑うつ
第5段階 受容
この段階を経て人間は死を受け入れるという…。
人間の平和な死を見るとき、我々は消え行く星を思う。広大なそらにまかれた何百万もの小さな光の一つが、一瞬きらめいて永遠の無限の中へ消え去っていく
ーエリザベス・キューブラー・ロス
......
時刻は夜中の8時。
空はどんより暗い真夜中の庭、私は懐中電灯を付けていた。
生温い風と冷たい風が私の首を締めるかのように首筋に当たる。
気持ち悪い春風だ。
懐中電灯が照らす光の先には体格のよい大きな体を小さく丸めて子供のようにしくしくと泣いている。
子供のように泣いている私の兄は、自分の手の中に眠る愛鳥...あの子が横になって眠っている。
もう、目覚めることはない。
ー目の前がだんだんと暗く狭く、歪んで閉じていく。
すると頭に冷たい何かが当たる。
それは何個か地面に音を立てて降り始めた。
雨だ。雨が降り始めたんだ。
兄が片手であの子...ピンちゃんを持ちながらもう片方の手でスコップを持ち穴を掘っていく。
私はただ懐中電灯で光を照らしているだけ、自分はその場から切り離されたかのように遠くその光景を見つめている。
私は、泣く兄が羨ましいと思っていた。
頬に雨粒が顎にそって落ちていく。
ーこれは私の涙ではない。だって私は泣いていないから。
静かに私の中で壊れていく音を感じる。
もう、どうでもいい。
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