第1章 第10話 マインモールド工房
翌朝、日の出と共に目を覚ましたユイエはアーデルフィアに頭を抱き込まれていた。柔らかくて良い匂いがして温かい。状況を理解すると一瞬で茹でタコのように真っ赤になると、心を落ち着けるため数度の深呼吸をしてからアーデルフィアの腕をタップして起こした。
「ん、ユイエ君おはよう」
「おはようございます。あのですね、殿下の寝相は知っていますが、流石にコレは無いんじゃないかなと思います」
頭を抱き込まれたまま苦情を呈する。
「ん?そこは男の子なんだから喜ぶところじゃないの?」
「嬉しいですけど!自分で顔真っ赤になってる自覚もありますけど!」
「じゃー良いじゃない」
「良くないですってば……。私の理性がガリガリ削られるんです。勘弁してください」
やっと解放されたユイエが赤い顔のままアーデルフィアから離れる。
「次から私も天幕で寝ますよ?殿下はお1人で馬車で寝て下さい」
「不許可です」
「パワハラでセクハラです」
「これでも大公家の娘ですからね。強権発動です」
「横暴だ。このままじゃ理性が負ける未来しかみえない」
馬車から降りるとマーカスが朝食を用意しておいてくれた。大変ありがたい。
ユイエとアーデルフィアで食事をはじめると、ほどなくして天幕からサイラスとメイヴィルが出てきて食事に加わった。
「今日は昨日より深くに行ってみたいけど。どうしようか?Aランク地帯まで走り込み兼ねて行って、それから探索する感じでどうかな?」
「分かりました」
「承知いたしました」
「頑張ります」
ユイエとサイラス、メイヴィルが返事を返した。Bランク帯の生息域までなら、走りながらでも片手間で倒せる自信がついている。問題はAランク地帯に入ってからの索敵と戦闘である。昨日の探索では亜龍と
食後、甲冑を着込むと予定通りAランク帯の生息域まで走って移動した。途中、通りすがりに現れた
東側に行って見つけた反応を追うと、B級上位のヒポグリフが居た。Aランク帯に居るには力不足を感じる魔物だが、ヒポグリフがいるならその上位のグリフォンも奥に居るかもしれない。
先ずはアーデルフィアの風魔法で上空から降る暴風を仕掛け、ヒポグリフが地面で踏ん張っているところに突撃し、ユイエとアーデルフィアの双小剣で首回りに攻撃を仕掛けると、あっけなく仕留める事に成功した。ヒポグリフははじめての獲物だったため、皮革を剥いで持ち帰る。
東側奥地の次の反応に移動してみると、小さな泉の水場にグリフォンが居た。グリフォンと言えば今ユイエ達が装備している亜竜製品の防具と同等の性能の防具が売られていた事を思い出す。飛ばれると厄介なため、早々に翼での機動力を奪うべく上空から降る暴風で地面に抑えつけ、樹魔法の【樹縛】で地面に縫い留めた。
グリフォンは風魔法を使うためそう長くもたないと思いつつ、一気に間合いを詰めるとグリフォンの首筋にユイエとアーデルフィアが2振りずつ計4振の小剣を刺し込み、傷口を開くように左右に引き斬った。サイラスとメイヴィルは大鷲のような上半身に全体重を乗せて全力で突き込み、上半身にずぶりと刃先が沈んでいった。
刃が通る生物であれば、大抵は首を刎ねるか大きく斬り裂けば絶命する。稀にそれだけでは死なない異常な生命力を持った魔物もいるが、グリフォンは倒せる部類の敵だった。
倒してから改めて眺めてみると、ヒポグリフより一回りか二回り大きい。皮革を剥ぐ際に翼の根本の骨を丁寧に切り離し、皮革と一緒に確保した。合わせて魔石を回収しておく。
この後の東側の探索ではヒポグリフ4頭、グリフォン2頭を追加で狩れた。程よいところで狩りを切り上げると、明るいうちにベースキャンプへと走って帰っていった。
ベースキャンプに到着すると撤収作業をして、皇都に戻って行く。
皇都では
週明けの翌日、ユイエとアーデルフィアは講義後の時間にマインモールド家の工房を訪れた。
顔見知りになった店員に挨拶し、≪樹海の魔境≫でAランク地帯に足を運ぶようになった事を話して、亜龍の皮革やグリフォンの皮革、大亀の甲羅などで何か装備のアップグレードに使えないかと相談してみた。
「そうですねぇ……。亜龍素材とグリフォン素材で甲冑を仕立てる事は出来ますが、今ご利用になられている亜竜素材の物と殆ど変わらない性能になるかと。大亀の甲羅は削り出せば大楯を作れますが、付与まで考えるとマインモールド領に運んでの作成になりますので、お時間が掛かってしまいます。そして完成品なら本店舗で取り扱っております」
「そうですか……。ありがとうございます」
折角手に入れられるようになった素材でも、初期装備に購入した防具の方が高性能であると判明した。気落ちしつつ
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