第1章 第11話 天銀《ミスリル》合金の小剣
結局狩ってきたAランク素材達は装備更新の役に立たない事が分かり、気落ちしながら
昨日引き渡していなかったヒポグリフ素材、グリフォン素材、亜龍素材、および大亀の甲羅の納品と買取をお願いし、パーティ単位での査定を計上してもらった。
「装備を更新できるだけの素材集め、樹海のもっと深いところに行かないと獲れなさそうだね」
新しい素材を集めてワクワクして行ったらのガッカリ感に、アーデルフィアの口から思わず愚痴が出る。
現在の装備のアッパーバージョンを狙おうとすると「亜」の付かない竜や龍の素材、またはマインモールド領産出の良質な鉱石から鍛えた業物狙いになり、価格感の桁が変わってしまう。
高い物は希少性や難易度などの高いなりの理由がある、という事だった。
「龍か竜の素材ってなると、そもそも倒せるのか?ってところからじゃないですか?」
「そうね。竜鱗を断てる様な業物が欲しいわね」
現状、「装備を作るための装備がない」というやつである。
物理攻撃が通じない相手を魔法で倒すと素材が駄目になりやすく、最小の傷で倒したいとなると装備も腕も足りていないのが現状だった。
「無い物ねだりしても仕方ないです。今はやれるところから考えましょう」
◆◆◆◆
3月の中旬となり、春季休暇がはじまった。ここから半月程が休暇期間となる。
今回、アーデルフィアとユイエは何時ものメンバーを連れて≪樹海の魔境≫の深層を目指す予定だ。既にサイラスとメイヴィル、護衛兼ベースキャンプ維持にジョセフとマーカス、ポールの3名の協力も取り付けている。
出発予定を明日に控え、マインモールドの工房に顔を出した。二人が使っている2振りずつの魔鋼の小剣、計4振も中々の業物なのだが、これまで以上に深い場所を目指すのにもう一押しが欲しかった。
14歳の成長期を迎えている二人はそろそろ長剣に挑戦したいお年頃であるが、腰に佩いた時に素早く抜けないのであれば、身の丈に合った小剣のままで考えるべきかと葛藤する。
馴染みの店員に今使っている魔鋼の小剣よりも更に上の小剣をみたいと頼んだところ応接室に通された。
「更に上位の品となりますと、魔法鉱物系の小剣と龍や竜の魔物素材で造られた物をご案内させて頂きますね」
龍や竜の爪や牙を削り出して作った魔物素材由来の小剣、
それぞれの価格帯を聞いて、予算内で買えそうな物を検討する。価格帯としては
「
ユイエは価格感と予算での話しをし、アーデルフィアは≪鑑定≫で物の詳細情報を視ながら考える。
「(≪樹海の魔境≫の深層で龍や竜が出てきたら魔物素材の1振りが決定打になるかもしれないけど……。ユイエ君と私で1振ずつ
「……
しばし悩み、
【強度強化】、【自動清浄】、【斬れ味強化】が付与されており、
価格交渉などはせず、一括払いで2振りの
それぞれが使っていた魔鋼の小剣1振りずつは、
「そうだ。購入した
「はい、可能です。何を斬ってみますか?」
「竜か龍の甲殻か鱗、あるいは同程度の強度の物を。2名分、端材みたいな余り物で良いわ。余り物が無ければ、斬れた時に素材の代金を払うって事でどうかしら?」
「かしこまりました。端材でご用意いたします」
店員が竜の甲殻の端材を持ってきて、それを万力で固定した試し斬りの的を用意してくれた。
「端材なので御代は結構です。どうぞお試し下さい」
「先、やらせてもらうわよ」
「仰せのままに」
アーデルフィアは
「斬るわ」
宣言すると、斬り下ろしを一閃した。
カッ!と乾いた音が響き、竜の甲殻は両断された。
「おぉ……。お見事です」
店員が結果をみて瞠目した。
「端材とはいえ竜の甲殻です。こんなに簡単に斬れるものじゃないんですがね……」
「では、次は私が」
ユイエがアーデルフィアと入れ替わりで前に出る。
アーデルフィアと同じように
「斬ります」
アーデルフィアが斬り残した、短くなった竜の甲殻に斬り下ろしを一閃する。
こちらもカッ!と乾いた音を鳴らして、竜の甲殻を両断していた。
「お二人ともお見事です。これなら龍や竜に遭遇しても倒せてしまいそうですね。素材の持ち込み、期待させて頂きますよ」
店員が満足げに頷いていた。
(お願い事)
★評価、ブックマーク登録、♥応援 などのリアクションをお願いします。
コメントなしで★や♥だけで十分です。モチベーションや継続力に直結しますので、何卒よろしくお願いいたします。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます