第1章 第9話 ≪樹海の魔境≫のAランク地帯
大亀の甲羅を無事に入手できた事で弾みがつき、いよいよAランク地帯に挑戦する事にした。
何時もなら東か西に進路を変えるあたりまできた。今回は敢えてこのまま真っ直ぐに進む。4人は【
いつもより奥に潜っていく。しばらく真っ直ぐ進んでいると、ユイエ達の【
「あの大亀より
ユイエが緊張しつつ、アーデルフィアより前に出て行く。
「今のところ、単体でうろついている感じだね。戦闘中の横槍は無さそうで良かったわ」
アーデルフィアの広い感知範囲での確認結果なら信頼できた。
視界に入ったのは、陽の差し込む岩場で
顔は蛇というより
「龍種、かしら?はじめてみるわ」
「龍種にしては小さい気がしますね?少し離れて図鑑を見てみますか?」
「そうね、気付かれる前に離れましょう」
「……これ、ですかね?」
ユイエが開いたページを皆にみせた。
「亜龍?なるほど、龍種の格下って事ね」
書かれた絵と解説文を読んで納得する。
「ちゃんとした龍種と違って、飛べないようです。討伐証明は2本の角で、感電する電撃の
ユイエが注意事項を指差しながら情報共有する。
「大亀みたいに爬虫類系らしく、低温で動きが鈍くなったり仮死状態の冬眠に入るらしいので、対策としては大亀と同じように氷結系の戦法で戦えば良さそうですね」
「電撃の
サイラスが大楯持ちとしての立ち回りを宣言し、攻撃はアーデルフィアとユイエの魔法に任せるスタンスを表明する。
「わかったわ、その作戦でいきましょう」
アーデルフィアも同意し、先程の岩場に戻って行く。
亜龍は変わらず
「……≪鑑定≫で死亡を確認したわ」
「あれ?あっけなかったですね……」
さすがにメイヴィルも拍子抜けという顔をしていた。
亜龍の死骸に近付くと、火魔法で氷を炙って溶かしながら解体する。討伐証明に角2本、皮革は穴だらけになってしまったが、一応剥いで持って帰る。最後に魔石を摘出すると、土魔法で死骸を埋め立てておいた。
不意討ち1発で終わってしまうとAランク地帯の魔物と戦った感が全くなかった。不完全燃焼のため次の魔物の気配を探して歩く。
うろうろしていると再び魔物の気配をアーデルフィアが察知し、そちらへと向かって行く。今度は這いずる様にうねって歩く亜龍を目視できた。
「また同じやつね。なるべく皮革を傷付けないように倒してみたいところだけど、さてさて」
いざとなればまた【氷牢】を使うのも辞さないが、あれで倒すと素材が駄目になる。なるべく綺麗な状態で倒すのを目標に定め、亜龍の周囲の大気を冷気で満たす。冷気で行動が鈍くなったところで接近戦を仕掛け、小剣2振を首に刺し、斬り開くように小剣を振り抜くと、それだけで亜龍は絶命した。
「今度はうまくいきましたね。皮革を綺麗に剥いで持って帰りましょう」
ユイエが満足そうに言い、解体に取り掛かる。
「随分丁寧に倒したわね?」
アーデルフィアが討伐部位の角を切り取りながら訊くと、ユイエは手を止めずに答えた。
「
ユイエの答えを聞いて納得する。今の装備も長く使い続けていて愛着はあるのだが、装備のアップグレードというのも戦う者にとっての一大イベントであり、ワクワクするものだ。
「防具の更新も良いと思うけど、そろそろ武器の更新も考えてみない?身長も伸びた事だし、そろそろ長剣も使えないかしら?」
アーデルフィアの言葉を聞いてメイヴィルがくすりと笑い、自分の腰に佩いていた長剣を鞘ごと渡した。アーデルフィアはそれを受け取るが、意図が分からずきょとんとする。
「腰に佩いたつもりで当てて、抜いてみてください」
メイヴィルに言われるまま、腰に鞘を当てて長剣の柄を掴み、その刃を一気に引き抜く……が、刃先が鞘から抜け切らず、引っ掛かってしまった。
アーデルフィアは眉尻を下げて情けない顔をしつつ、メイヴィルに鞘に戻した長剣を返した。
「……もう少し小剣を使っておくわ」
「それが良いかと思います」
メイヴィルがアーデルフィアから返された長剣を受け取りつつ、茶目っ気を出して柔らかく笑った。
亜龍の皮革の剥ぎ取りと魔石の摘出も終わり、次の魔物を探して再び移動する。次に見つけたのは5体の
「
「≪鑑定≫……。えーと、
「
「うーん……。
「へぇ……。5体ですか。戦闘中に横槍入りそうな魔物いますか?」
「私の【
前回、
あれから近接能力も魔法能力も上がっている。今なら5体同時でもこの4人なら十分にやれる気がしていた。
「やります?」
「やってみよう」
風魔法の【消臭】と【消音】を掛け、更に【気流操作】で自分達の匂いを森の上空に逃がし、なるべく悟られないように接近していく。攻撃魔法が届く距離にまで詰めたところで、ユイエとアーデルフィアは小声で「火魔法で」と意識を合わせ、5体の
不意討ちは綺麗に決まり、
5体とも止めを刺すと、周囲への延焼ごと火を消して回った。
「これでも
「討伐証明まで考えると、火魔法はちょっと使い辛いですね。倒す事だけが目的なら強いんですけど」
査定してもらえるかは不明だが、一応5体分の右耳と魔石を摘出し終わると、土魔法で埋め立てておいた。
「殿下たちの魔法が進化し過ぎて、我々の出番が全然ないですね」
メイヴィルが若干物足りなさそうにそう零し、隣でサイラスが頷いていた。
その後、
「暗い森の中なのに、相変わらず迷いのない足取りですね」
サイラスがアーデルフィアに声を掛けると、アーデルフィアはにやっと笑って返した。
「私の≪
この人はいったい幾つの≪
食後はユイエとアーデルフィアは魔馬車の中で横になる。サイラスとメイヴィルは天幕で寝ているはずだ。不寝番は相変わらず護衛の3名がやってくれている。いつもながらありがたいものだと感謝しつつ、眠りについた。
(お願い事)
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