第1章 第5話 年末年始休暇の過ごし方
皇立カグツチ学園に入学して4ヶ月が経過し、11月生まれのアーデルフィアと12月生まれのユイエは14歳になった。
ユイエを家族同然に扱ってくれるウェッジウルヴズ家から、14歳の誕生日プレゼントとして≪魔除けの指輪≫を頂いた。先月に14歳になったアーデルフィアに贈られていた指輪と同じものである。
指輪の見た目は素っ気ないデザインだが、青みがかった銀色で
「アーデルフィアとお揃いの魔除けの指輪だよ。この先きっと君達を守ってくれるはずだ」
リオンゲート・フォン・ウェッジウルヴズ大公閣下から直々のお言葉と共に手渡された。耐性系は所持者の
「大公閣下、ありがとうございます。家宝にします」
アーデルフィアに贈った指輪と同じ物だという事で、そこまでしてくれたウェッジウルヴズ家からの気持ちに思わず涙した。
年末年始の休暇時期にはユイエもエーギス領の領都ラグラッドの実家に帰省し、家族との交流を持っている。
今年の帰省では大公閣下から頂いた家宝となる指輪の件も報告していた。父が遠い目になっていた。
なお、“アーデルフィアとお揃いの指輪”である事の意味を理解していなかったのはユイエだけであった。
異母妹のアリーゼも来年には皇立カグツチ学園に入学するべく、試験勉強や剣と魔法の訓練に励んでいた。座学は若干あやしいものの、剣術と魔法の実技は学内でも見掛ける程度の練度になっていた。座学で失敗しなければきっと入学できる筈だ。
年が明け、皇都に戻る。
「ユイエ君、狩りに行きましょう!」
暇を持て余していたアーデルフィアの誘いで、新年早々に≪樹海の魔境≫に狩りに出かける事になった。
以前見掛けた
魔馬車で入れる範囲で広めの立地を選んでベースキャンプの設営を頼み、
「
「深さ的にBランク辺りの魔物が入ってきていれば良いんですけど、Aランクの縄張りになっちゃっていたら嫌ですね……。近くなったら慎重に行動しましょう?」
周囲に【
「
「そんな感じがしますね」
ユイエが推測し、サイラスが同意する。
戦場跡地を縄張りにしようとして出張って来る魔物を想定していたが、あまり魔物の気配がしなかった。戦場跡地には食料も殆ど残っていないのが原因なのかなと思い至った。
戦場跡地を抜けて更に北東に進むと、池が見つかった。近場の魔物が水を飲みに来るようで、様々な魔物がやって来るらしい。【
「この辺りでやってれば次々にお代わりが来そうね」
アーデルフィアの台詞にユイエが難を示す。
「確かに色んな種類の魔物が水を飲みにやってくるでしょうけど、戦闘中に手に負えないくらい強い魔物が来たら大分キツイと思いますよ?」
「【
そう返されてしまうとその通りかなと思う。
計った事はないが、経験的にユイエの感知範囲の倍の距離をアーデルフィアは感知している様子だし、接近してきたら早い段階で場所を移動するなり戦闘準備をするなり出来る気がしてくる。
「あ、でも水場に近付くのは絶対駄目。水の中に魔物の気配が沢山あるから、引き摺り込まれたら流石に無理よ」
アーデルフィアが水辺に水を飲みに来た鹿型の魔物を指差して言う。水面に口を付けて水を飲んでいた鹿型の魔物に、水中から現れた巨大な鰐型の魔物がかぶり付き、そのまま水中へと引き摺り込んで行った。
「こっわ……。水を飲みに来るのも命懸けなのか?もっと安全な水場がありそうなものなのに……」
余りの光景にユイエはどん引きし、あの池には近付かない事を誓った。
一行は水辺を避けて池を大きく迂回し、対岸の陸地に移動した。戦い易そうな開けた場所で周囲を警戒しつつ食事をとると、アーデルフィアの先導で近くの魔物の反応へと寄って行く。水場と付かず離れずの距離で水を飲みに来る、あるいは帰って行くところを狙って仕掛けていく。
先程水中に引き摺り込まれていた鹿型の魔物とも戦ってみたが、あの見た目で意外にも風魔法を操ってこちらの行動に負荷をかけて来た。良いところで突風を喰らって攻撃に失敗する等、若干ストレスを感じる戦いになったが、特に損害もなく撃破できていた。
鹿型の他、西側にもいた熊なのか兎なのか分からない
はじめてみた魔物では、大猿型の魔物がいた。
サイラスとメイヴィルが大楯で受け流し切れず何度も吹き飛ばされていたが、
大猿の他、背中側の表皮が岩石の集まりの様になっていたオオトカゲもはじめての相手だった。何を考えているのか分からない爬虫類系の無表情フェイスで唐突な挙動を起こし、動きが読みづらい。更に背中側は見るからに岩石質で刃を痛めそうな硬度を持ち、一方で下顎から喉と腹を通り尻尾の先まで地面側に接する側の部位だけが柔らかく、普通に刃が通る肉質をしていた。
腹など地上から30セルもないような低い位置が弱点だったため、非常に攻撃し難かった。武器での攻撃を諦め、地面から【岩槍】が突き出す魔法を使えばあっけなく倒せた。
魔物図鑑によると前右脚の足首から先が討伐証明部位との事で足首を苦労して切断し、魔石を繰り抜いておいた。
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