第10話
ラランは最後に聖女らしく民を思う言葉を伝えてからそれからは無言を貫いていた。
ゼファー教の者たちはゼニル大司祭を除いて大きな声で言い訳なのか声をあげている。
それに対してラランが何も答えないでいると何か答えろとか嘘つきとラランを一方的に攻めているが彼らが大きな声をあげてラランを糾弾すればするほど彼等の行動がやましさからの行動に見えてしまうのは聖女の最後の言葉が優しく民を思うものだったからだろう。
状況は変わった、進行する神を変えたブレイブ王を糾弾する場は聖女を汚した神官たちを攻める場所に代わっているそれを理解しているからこそ神官たちは引けないのだ。
聖印官が来てラランが持っている本に書かれた聖印がリリアのものだと証言したうえで解除され内容を読まれ本当にそれが神官たちがリリアに手を出した日を記入したものであったら?
ゼニルは神官の中でも最上位の神官だ何かしら身を守る手段があるのかもしれない、だがその下の半端な者たちには命をつなぐ手段があるのだろうか?
優しき聖女を汚し、自らの命を絶たせた者たちをこの場にいる民は見逃すだろうか?
その疑問故に彼らは何もできない、リリアの言葉を偽物の言葉だとしてラランを罪人として捌き本を人目に着けずに処分しなくてはいけないのだ。
神官達の言葉にラランは何も言わない、というかここで喋ることはできない。
聖女リリアは友人ラランに言葉を残して死んだということになっているからだここで喋るとラランの声がリリアとほとんど変わらないとばれてしまう。
再臨の際体は変えることはできても声を変えることはできないのだ、残念ながらCV変更で声優を変えられないのだ
「ラランはもう喋れないわ、リリアの最後の言葉を告げるために代償としたのだから」
レイナがラランの前に立つと彼女を庇うように立ち、民衆に向かってそう告げる。
ラランが喋ればリリアと同じ声だと気づくものがいる、そこからラランがリリアの姿を変えたものだと気づかれたくないのでラランは喋ることをできないことは、代償とも言い換えることができるだろう嘘はついていない。
だが今この場でそのように言えばリリアの最後の言葉を伝えるためにラランは声を失ったと勘違いするものが多くできるだろうそして誰かがその想像を口にすればそれに引っ張られるものが多く出てくる、こちらは何も言っていないのに勝手に想像してラランをリリアとの友情の為に声を捧げたものと想像してもらえるのだ。
「そもそもここであれこれ話すよりも日記を開いてみてもらえばいいじゃない、あんたたちは見られて困るからそんな風にあれこれ言ってるんじゃないの?」
セリーヌもラランの前に立ちそんな言葉を投げかける。
それをされたら困るから彼らはいろいろと文句を言っているわけだがセリーヌは雑な性格だしそんな回りくどいてを使わずに真っすぐこいと言いたいのだろう。
「ではそれをわしが開いてみましょうか?」
そういって集団の後ろから付き人を二人連れて歩いてきたのは年老いた神官だった、ただし身に着けている衣服はゼファー教とは違い、どこか地味なイメージのある服を身に着けている。
「ラーンク殿か、宗派が違うターヌキ殿が聖女リリアの聖印と解除方法をご存じなのですか?」
誰だろうと思っているとブレイブ王が説明してくれるゼファー教とは別の宗教確かにそういうものがあってもおかしくないか?と思っているとラランが俺の横に立って耳元で囁いてくる。
どうやらゼファー教は一応最大の宗教であり、この国では王もゼファー教に入っている為、他の宗教は小さく肩身の狭い思いをしているとか。
そんな中地方の一教会でしかなかったヤオヨロ教を王都の中に神殿を作り王に名を知られるほどに広めたラーンク司祭は間違いなくやり手の神官であるとのことだ。
「ラーンク殿勝手なことをされては困ります、それが本当に聖女の残した日記だというのなら我が協会に偉大なる聖女の遺物として後世に残さねばなりません、たしかにラーンク殿は聖印官として我が協会にも登録されておりますがそれとこれとは別の話なのです」
ゼニル大司祭がラーンク司祭を遮るようにして前に立つ、護衛なのかラーンク司祭の横にいる二人が一瞬だけ殺気を放つがラーンク司祭が軽くてを上げるとそれだけで意識を霧散させる、よく訓練されているようだ」
「これは余計なことをゼファー教の聖印官を呼ばれるというのでしたらそちらの方が確かに皆さまには安心ですな。出過ぎた真似をしました、申し訳ない」
ぺこぺこと頭を下げながらゼニル大司祭の横を通りこちらに向かって近づいてくる。
なんとなく俺の中でこの司祭に警戒心が産まれる、そもそも名前がラクーンをもじってる当たりなんとなく狸爺として警戒してしまう。
「初めまして新たなる神よわしはヤオヨロ教のラーンクと申します、新たな神の顔を見ることができて嬉しく思います」
俺の前まで歩いてくると俺の前で膝をついて頭を下げてくる、横の二人も同じように膝をついて頭を下げるとそれに釣られるように民衆の中にも頭を下げてくるものが現れる。
俺を神と認めないゼファー教の前で頭を下げて敬う態度を見せる狸爺に俺は人間ってめんどくさいと眉をしかめるのだった。
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