第4話

「よくぞ勇者の頼みを聞いてくれた新たなる英雄である人狼のイチロウよ、そして人の子達よ我はこの世界を見守りし神ゼファロス、聞くがいい人の子よ勇者は育たなかった、我の声を聴いてなお人は一つになれず結果勇者は至るべきレベルに至れず無駄死にするはずだった、故に我は考えたのだ、魔族でありながら人のために力となってくれる存在に勇者の力を与え、その者に人類の守護を任せるべきであると」


そういって空に浮かぶ光った神を名乗る存在ゼファロスと名乗ったその存在はゆっくりと降りてきて地面へと降り立つ。

それに合わせて全ての人は頭を下げる、王も将軍も王女も王国以外の将軍達も皆その存在に頭を下げる。


弟達を見ると4人とも牙は剝いているが位階の違いを感じてか腰が引けている、それは勝気である3男であるサブロウも同じだった。

とはいえ、弟達を攻めることはできない、何故なら目の前にいる神はを名乗るそれの位階は4、位階一つの違いは大きく力の差となるが、それは数字が大きくなるほどその差は開く。


1と2であれば覆ることはあるが、2と3であれば2の中で優れたジョブについていても3に届くことはまれである、そして位階4というのはこれまで歴史上に存在しなかった。

つまりこれが神というのも説得力がある程度に強い存在感を放っていた。


「イチロウよこれからお前には人類の新たな英雄として人族の王に仕えてもらう、人族を率いて魔王をうち、世界を平和にするのだ其方はこれよりゼフォロスの使徒として新たな勇者となるのだ」


俺を見下ろしながらゼフォロスは一方的にそう告げる。

その言葉に砦からこちらを見ていた人間からの敵意は消え、こちらに対して崇拝のような感情を向けてくるのを感じる、だが俺はこれが神を名乗るのならば聞かねばいけないことがある。


「ゼファロスよ俺はお前に聞きたいことがある」

俺の言葉にゼファロスは顔を引きつらせてこちらを睨み、砦の人間達はぎょっとしたような顔をする。


「なんだイチロウよ其方は我の使徒、質問があるのなら答えよう」

こちらを見下ろしながら笑みを浮かべてそう告げる、そのこちらを見下した態度が気に食わない、だがまだだ。


「勇者が命を散らしたのはお前の命令か?剣士はお前の命令が不服そうにして俺を殺そうとしたが?僧侶は死ぬときに涙を浮かべていたそれでもあきらめたような顔をしていたが?魔法使いは絶望した顔でせめて痛みが少ないようにと自ら首を差し出してきたが?勇者は仲間を殺してしまったことに最後まで後悔し俺に何度も何度も人類を救ってくれと壊れたように言っていたが?」


一言、また一言とゼファロスに問いかけるように声をかけるたびに俺の語気は強くなる、あの4人は確かに受け入れていた、だがそれでもまだ幼い少年少女だったそんなに彼らに……


「うむ、この地に住むものを介して神託としてこの砦から少数で後方へと攻め敵の食糧庫を焼くように命令した、その途中でお前と出会うのはわかっていた故にその場で出会った敵と戦い殺されることでその者に勇者とその仲間がもつ力を与え、人類の守護をその者に頼めともな。位階だけ高くレベルも戦闘技術も未熟な奴らを贄として人類を守るために必要な手段を選んだその何が悪い?」


ゼファロスはまるでそれが当然であるかのように振る舞いこちらに感謝をしろと目線で伝えてくる。


ひどく不快な気分だ、もっと聞くべきことがあるかおしれないがそれだけ聞けたならもういいか、そもそもこいつは人族の神であっても俺達の神ではないのだ。

きっとこれは運命なのだろう、こいつが勇者を殺させて俺のレベルを上げたことも、魔王軍の将軍が位階が3でレベルマックスだったことも……



俺は目の前の神を名乗る存在を殴りつける、もし俺が位階3のままなら決して届かなかっただろう、だが俺は神のお膳立てのおかげで位階が4まで上がっているのだ、これはきっと神を討伐しろと神自身が願っているのだろう。


「がっふっ……何故だ何故神たる我に攻撃が届く我の位階は4,お前の位階が3である以上決して届かないはずだ、なのに何故痛みを覚える血が出るというのだ…!」

ゼファロスは鼻から血を流し痛みに体を震わす理解できない現象に頭が追い付かないのか殴られ倒れこんだままこちらを見上げてくる。


「何故って?お前がそうしたんだろうお前が俺に勇者たちを殺させ、魔王軍将軍を殺させたその結果俺の位階は4に上がりお前に届いた、勇者を殺すのがお前からの神託であり、その後将軍を俺に殺させたのもお前だその結果俺の位階は4に届いた、これは全てお前のシナリオ通りなんだろう?だったらここでお前を殺すのもお前のシナリオだろう?」


俺の言葉に神はゼファロスは口をパクパクと開いては閉じてを繰り返す。

こちらの質問に対して何も答えないだが関係ない。

こいつが何を言おうと、こいつが人類の神だろうと関係ない、


「っ……ふざけるな、ふざけるなよ下等な生き物が……この神たる私にこのような、血を流させるだと、痛みを与えるだと……殺す、もういい人類など知らぬ殺す殺す殺す……」

ゼファロスは人類の守護者としての仮面を脱ぎして利己的な本性を曝け出す。元々こいつにとって神としての役割など気に食わないことが起きればたやすく捨てるのはわかっていた、だから俺は早々にぶつぶつ言っているゼファロスの首筋に食らいつきその喉を食い破る。


位階4に上がったことにより、俺は神食らいの銀狼(ラグナロック)になり、俺の唾液は神にとって致死毒となり、俺の牙は神の体に対して強力な刃となる。

喉を食い破られても神は普通なら死にはしない、だが相手が俺ならば確実に死に至る本能的にそれをお互いに感じ取ったのだろう、ゼファロスはこちらに手を伸ばし言葉にならず細い息をひゅーひゅーと吐き出しながら絶望した表情でその命を失っていくのだった。



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