第3話
「ずいぶん面白そうな話をしているな、魔王軍を裏切り俺達を殺すだと?」
そういってこちらに向かって歩いてきたのは砦を囲んでいた魔王軍の将軍であり、2足歩行の恐竜だった。
その後ろにはオーガやオーク等の人型の兵士が30人4組で120人集結してこちらに近づいてきていた。
こいつらが今までこちらに近づいてこないのは砦を囲むために分散していた兵士を終結させるためだろう。
120という数は少ないと思うかもしれないが、その全てが位階3であり、砦を守る人間側の兵士が位階2を中心としていることを考えると砦を利用しても守り切るのは難しいだろう。
「お前や弟達が位階3に上がったことで調子に乗っているのかもしれないが、まぁいい調子に乗ったことを後悔して死ね」
俺は弟達と視線で会話する、将軍である恐竜は俺がやるから4人で30人ずつ頼むと。
サブロウだけが少し不満そうにしたが諦めたように4人はそれぞれ30人に向かっていく。
「死ね、思いあがった犬が」
俺に向かってきた恐竜は手に持った巨大な斧を振り下ろしてくるが俺はそれを一歩下がってかわすと斧は地面をたたき壊して岩を吹き飛ばしてくる。
門に当たれば門を壊しかねない岩を俺は全部拳で撃ち落とし、反撃の回し蹴りを鎧で守られた腹に叩きこむとその威力にたたらを踏んで一歩下がるがすぐににやりと牙をむき出しにして笑う。
理由はまぁ、俺の攻撃力不足を笑ったのだろう。
「弱い弱いなぁ、そんな攻撃どれだけ放たれても効かねえんだよ!」
叫び声をあげながら俺に向かって斧を振り下ろす恐竜将軍、俺は斧が地面に叩きつけられないように払いのけながら、弟達のほうを見る。
最初に動いたのは末っ子のゴロウだった。
軽い足取りで敵の集団の前に立つとそのまま一気に加速し敵の間を駆け抜けて集団の背後に立つ
この場で弟が駆け抜けながら首を爪で切り裂いたのを見切ることができたのは果たして兄弟以外に何人いただろうか、少なくとも遠くから様子を見てる人間の位階2の兵士と、目の前で対峙していた位階3の魔王軍の兵士には見極められなかったようだ。
ゴロウが通り抜けたあと、首から大量の血を拭きだしながらその場で倒れる。
同じ位階であっても決して能力値が同じというわけではない。
勇者や魔王も位階は3だがその能力は他の位階3よりも大きく上回るように、うちの弟達の能力は魔王軍精鋭軍の兵士を大きく上回るらしい。
次に動いたのは4男のシロウだ。
誰よりも大きく強い体を持つジロウは真っすぐ突っ込んでいき、兵士たちを跳ね飛ばしていく、ボウリングのピンみたいだなぁと思いながらぶっ飛んでいく兵士を眺めると鎧や武器を無茶苦茶はへこんだり折れたりしてるので再利用は難しいだろうなぁ……
三男のサブロウは正面から突っ込んでいき、自分の体の調子を確かめるように一匹ずつ丁寧に倒していく。
武器をもって突っ込んでくる敵の攻撃を受け、反撃で殺し、また次の敵を裁くその結果誰よりも時間をかけて30匹を倒していった。
次男のジロウは俺が弟達の様子を見てるのと同じように弟達を見ていた。
俺が脳筋なこともあってジロウは比較的冷静で弟たちの面倒もよく見てくれている、今も俺と一緒に様子を見ながら、さっさと自分の分のノルマをこなしていった。
「貴様こっちを見ろ!」
斧をぶんぶん振り回しながらこちらに向かって大声で叫んでくるが、こちらは弟達の活躍を見るので忙しいのだが弟達もひと段落ついたようなので視線をそちらに向ける
全身から汗をだらだらと流してこちらを睨みつける……
「悪いな、弟達の方も終わったようだから終わりにしてやる」
今までこいつを倒さずに時間を伸ばしていたのはこいつが倒されれば兵士が逃げると思ったからだ、だが兵士が全滅したなら問題はない
俺は無造作に近づいていき、その首を蹴り飛ばした。
「ぐぇ……」
俺が蹴り飛ばした頭はそのままボールのように飛んでいき、ポンポンと跳ねていく
やだ、俺強すぎ……
「お疲れ様弟達。戦ってみてどうだった?」
俺が4人の弟に声をかけるとそれぞれこちらを振り返り嬉しそうに微笑む
満足したのかな?いや、サブロウだけは物足りなさそうだ、俺が将軍を相手するといったときもサブロウだけは不満そうだったしなぁ。
「さてさて、改めて王様と話をしようか」
砦を囲んでいたのは魔王軍1軍、人型部隊の精鋭だ、後方には位階1~2の人型魔物がいるが、あいつらでは砦を落とすことはできないし、何より将軍が死んだ以上一度彼等も引くだろう。
砦のほうを向くと砦の上に立つ兵士はこちらに向けて弓を向けているが、全員が腰が引けておりただ引いているだけで撃たれてもまともに飛ばないだろう。
そんなことを思っていると砦の門が開き、開いた門から王と第三王女それに一人の騎士がこちらへと乗馬して向かってくる。
「わが軍を救ってくれて感謝する、改めてブレイブ王国国王アレクサンドロス・ブレイブだ」
王は馬から降りずにこちらを警戒したままだが、敵意はないようだ、
ただ、横にいる第三王女様はこちらを殺意をみなぎらせた目で睨みつけてくる
残る一人は第3位階のブレイブ王国近衛騎士団長だろう。
「いいさ、勇者からのお願いを果たしただけだ、とはいえ何の証拠も示せないのだがね」
悲しいかな、俺には勇者から頼まれた証拠のようなものは何もないのだ、なんか遺言の一つでも残してくれてばよかったんだがなぁ……
俺達が一歩前に出ると砦でこちらを見下ろしていた弓兵はぎりっと弦の引かれる音がするが、王様が手を上げて臨戦態勢を解除させる。
「やめよ、我らでは彼等に勝つことはできない」
いや弓を向けられたくらいで反射的に反撃したりはしないがね
「改めて初めまして国王陛下、人狼族のイチロウと申します、申し訳ないが人の礼儀を知らないため対応を間違っていても許してほしい」
そういって左胸に手を置き、頭を深く下げる。
後ろの弟達も同様に頭を下げると、よい頭を上げてくれと王様から声をかけられる。
「イチロウ殿、この度は我が国を救っていただき、ありがとうございました」
王様は頭を下げる、第三王女様はそんな王を見て’’お父様!’’と叫んでいるが騎士団長も頭を下げるとしぶしぶといった様子で第三王女も頭を下げる。
別に俺達は頭を下げてほしいわけではないし、砦から騒めきと王様達を馬鹿にするような声が聞こえるからやめてほしい。
この砦に詰めている人間軍は一国だけではなく複数の国から選出されている。
当然勇者を送り出した王国とは敵対的な国も残念ながらある。
人間同士で争うような状態ではないとわかっていても人間同士で争うのは人間の性らしい。
実際ゲームでも後半は人間同士で足を引っ張る話なども多く出てきた。
「王よ、頭を上げてほしい我々は先ほども言ったが勇者から貴方達のことを託された勇者はその為に命を懸けて俺に位階とレベルを託したのだ、既に報酬をもらっているにもかかわらずその約定を果たさないのは人狼の掟に背く」
王に頭を上げていただくようにお願いする。
俺の言葉に王と騎士団長、王女様が頭を上げる、これでやっと話しやすくなる。
「改めて王よ我らを王国の傭兵として雇っていただきたい、俺は勇者からの願いを叶える為に貴方達人類の為にこの力を振るおう」
俺の言葉に王が頷こうとしたその時、俺達は白い光に包まれた。
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