ep.24 三枚舌外交! 悪魔の大英帝国!
「弾薬庫は空です! 海軍が使っていない種類の弾薬まで持っていかれています!」
「石油備蓄基地が吹っ飛んでいます! 爆発の状況からしてタンカーにありったけ積んだあと残りを爆破した模様です!」
「造船所も主要機能が破壊されています! 復旧には数ヶ月はかかるかと!」
鎌倉を奪還した幕府陸軍から報告が上がる。
「我々海軍航空隊は陸軍に降伏します。とは言ってもほぼ航空機など残っていませんがね」
「そちらの基地には石油の備蓄はどのぐらいある?」
「先日の竜による襲撃で破壊されてしまい、ほぼ残っておりません」
「ふむ...すぐに魔法文明に移行しなければな...」
将軍が呟く。
「日帝より入電です! 航空機による哨戒中、鎌倉に向かう民間の船団を発見したとのこと!」
「民間の船団? 海軍の艦隊じゃなくてか?」
「それがどうも豪華客船のような船がいるとのことで...勿論護衛の軍艦は数隻いるようですが」
「海軍の連中じゃないのか!? 一体どこの国だ?」
「問い合わせます...あ、イギリス国旗を確認したとのこと!」
一方そのイギリス国旗の下では...
「あれが日本か。随分ショボい港だな」
大英帝国の外交官、ウィリアムが笑う。
「仕方ないですよ、日本には指導者を育てるような学校が無いそうですから」
補佐官のクリスが言う。
「とはいえ、一応礼儀はちゃんとしないとな。前線基地として使うのが目的であって、植民地にする必要はないのだから」
「そうですね...あ、なんかタグボートが来ましたよ。えーと、ワレノユウドウニシタガッテニュウコウセヨ...とのこと」
「入港...? この船が入るような港とは思えん。内火艇で行こう」
ゴゴゴンウィーーーンボチャーーン(クレーンで内火艇を降ろす音)
内火艇はガソリンエンジンで静かに入港していった。
ーーーーーー
夕焼けを背に長射程のロケット弾が空気を切り裂く。
「着弾! 敵正面に突破口を形成!」
「敵を分断する! 第八空雷戦隊前へ!楔を打ち込め!」
ゼイトゥア空中民主教皇国軍のゼーアドラー級空中駆逐艦が次々とモンゴル軍飛空艦隊に突入。
「たいらげろっ!」
鈍重なモンゴル軍の飛空戦列艦に次々と127mm砲を叩き込み、粉砕する。
だがモンゴル軍からの反撃も激しい。片舷に40門ずつの計80門を有する戦列飛空艦からの弾幕はまるで重機関銃のようであり、ゆっくりではあるが着々と教皇国軍の空中駆逐艦も数を減らす。
本来なら敵を分断するという目的を達成した以上彼らは撤退するべきであるが、中々それをしない。
「来ました!ビスマルクです!」
鈍重な船体を引きずるようにゆっくりと降下してくるビスマルク。
「38cm砲を喰らいやがれ!」
見た目に反し軽快な動きで旋回し次々に38cm榴弾をばら撒き、モンゴル軍は全滅。
何割の消失で全滅判定、とかではなく文字通りの"全滅"である。
一応例外として前方に進出していた哨戒艦とその護衛のワイバーンロードは攻撃を免れていたが、それだけである。
フブスグル湖を拠点とするモンゴル空中軍の飛空艦はこの戦闘で七割を失い、既存艦では対抗できないと判断したモンゴル軍上層部は新型艦をロシア共和国と清に発注。
これが後のユーラシア大陸統一につながることになる。
ちなみにロシア共和国と清は、転移してきたロシアと中国の学校がモンゴル帝国から軍事技術と引き換えに得た領土で作った国家である。
地図上だとモンゴル帝国が包囲されている様に見えるが、実際モンゴル軍の近代化に両国は必須であることから外交上は対等以上であり、3カ国で東ユーラシア連邦を形成している。
また、それぞれが5大列強に含まれている。
5大列強…大英帝国・モンゴル帝国・ゼイトゥア空中民主教皇国・清・ロシア共和国
ーーーーーー
鎌倉幕府 会議室
そこでは大英帝国の外交官と鎌倉幕府の将軍、そして大日本帝国の代表である参謀長が交渉していた。
「我々は世界中の石油埋蔵地帯を占領していまして、是非とも同じ転移勢力である日本にも分けようと思いましてねぇ」
実は中東はモンゴルによる侵攻で石油どころではない状況なのだが、都合の悪い情報は伏せる。
「ほぉ...ですが勿論タダとはいうわけではないですよね?」
将軍も散々前世界でやらかしたブリカスには最大限警戒する。
「とんでもない、同じ世界から転移した同胞からお金は取れませんよ〜ほんの少し基地を作らせてもらえばそれで十分ですので〜」
「基地ですか...それはどういった意味ですかね?」
(こいつらの言う基地ってまさか戦略爆撃機の拠点とかじゃないだろうな?そうだったら我々が巻き込まれるだけではないか...)
参謀長も警戒心を強める。
「...ここからは正直に言いましょうか。我々は現在モンゴル帝国と総力戦を戦っており、その一環として大西洋と太平洋両方から包囲し孤立させると言った壮大な計画を構想しているのですよ。そして太平洋の主力拠点として日本が適していると言うわけです」
痺れを切らした大英帝国側が態度を変える。
「ふむ...実質的な同盟関係を結ぶというのであれば国民投票なども行う必要がありますし、持ち帰ってじっくりと検討させていただきます」
日本の伝統、「のらりくらり」を試みる参謀長。
「じっくりと、ですか...果たしてそんな余裕があるのですかな? まさか国民を凍えさせるつもりで?」
「...貴国には石油しか無いのですかな?」
「石炭もしっかりあるが? 誇りある大英帝国を舐めるな。それにまさか時代遅れな石炭で冬を凌ぐつもりですかな?それも蛮族らしいですがハハハハハ」
大英帝国の外交官は失敗した。それも歴史の教科書に載る程の大失敗を、だ。
これによって大英帝国に魔法が無いことが露見してしまったのだから。
「そういう態度であるならばもう結構ですよ。我が国は我が国でやっていきますから」
「貴様はわかっているのか! 大英帝国を敵に回した劣等民族がどうなるのかを!」
「そうやって武力をチラつかせてで要求を押し通すのは嫌いじゃないですよ〜。三枚舌に比べればよっぽど、ね」
「もう許さんぞ! 世界最強の英国海軍に踏み潰されるがいい!」
マレー沖海戦から彼らは何も学ばなかったのだ...
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