ep.23 内乱終結



「圧巻ですなぁ〜」



「いや、これでもまだ主力の半分ぐらいですよ。内戦には関わりたくないと最初から中立を保っている部隊も多いですから」



大日本帝国の演習場に続々と幕府陸軍の機甲部隊が集結していた。また、入り切らない地上部隊や航空隊は法皇国や満州に集結している。


幕府軍の戦車は帝国陸軍とは対称的に、爆発反応装甲が特徴的な東側風な戦車である。一番近いのはT-90sあたりだろうか。



「将軍閣下、補給部隊が持ち出した石油備蓄が半分を切りました」



「短期決戦を挑めばなんとかなるか...」



魔法の無い幕府は、中国に転移してきた勢力である清からタンカーで石油を輸入していた。


しかし今はタンカーも港も海軍に押さえられているため輸入できない。


ちなみに艦艇は潜水艦を除いて全て石炭だが、これは国内で採れる石炭を使用するためである。



「それもあって法皇国の魔法充填施設を狙ったんですか?」



「多分そうだと思います...あれをやったのは私ではなく情報局ですから...」



「大きい国は大変ですなぁ...」



「いやそっちだって法皇国とかいう人口多い植民地持ってますよね?」



「まぁ確かにそうですな、ハッハッハ」



ーーーーーー


「ほぉ...これは我が国の飛躍のチャンスではないか。日本を経済的に傀儡にできればモンゴル侵攻の橋頭堡にでき、モンゴルを東西から包囲できるからな」



「海軍にクーデターを起こされるとかいう油断のツケは、しっかりと我々に払ってもらいましょう」



紅茶を片手に会議室の名を関した豪華な部屋で今後の方針を立てる二人。



イギリスに転移した学校は、魔法を習得することがないまま火薬式の銃や爆弾でローマ帝国を屈伏させた。


その後イギリスの富豪向け学校を中心に欧州の転移勢力及びローマ帝国の残骸を大英帝国としてまとめ、アメリカに進出。アメリカの転移勢力すらも実質傀儡にした。


再び大英帝国が世界の覇権国家となり得るのも時間の問題か、誰もがそう思った。



しかしモンゴルの遊牧民族による中東侵攻を始めとした強大な大英帝国領への攻撃により、財政的に疲弊。


このままではまずいと焦った皇帝が軍を率いて大反攻を行うも、補給線を徹底的に叩かれ主力部隊が一戦も交えることもなく撤退に追い込まれた。



巷では、


「何世紀も前の概念しか持たず、国家すら形成していない遊牧民族に戦車を有する近代的な英軍が破れた」


とボロクソに言われている始末。



実際のところは転移してきた中国やロシアの学校が、遊牧民の有する食料や資源欲しさに無計画な軍事教練を行いまくり、自動小銃などの小火器は勿論、馬で牽引できるほど軽量な魔導砲や航空機などをもつ近代的な遊牧民族にしてしまったのが原因である。



...てか近代的な遊牧民族ってなんだよ。ちなみに戦車は不評で、馬の方が食料さえ与えれば無限に動けるからいい、とのこと。一方でトラックは疲れた馬を休ませながら戦場に行けるということで人気だった。


...結局戦闘は馬でするのである。


ちなみにモンゴルの古臭いドクトリンに合わせ品種改良でめちゃくちゃ性能の良い軍馬や、ワイバーンロードと呼ばれている品種改良を繰り返した高性能なワイバーンを持っている。



一応航空機も持ってはいるが、ワイバーンロードよりも速いことを活かしての日本軍の司偵のような運用がほとんどで、制空任務は馬と同じ要領で運用できるワイバーンロードを使用していた。またワイバーンは荷物がほぼ積めないので、物資が枯渇した部隊への物資投下などにも航空機は使われたりはする。



とはいえ結局は無くても良い、ぐらいの扱いである。



ーーーーーー


「何? 鎌倉から海軍が逃げ出しただって!?」



将軍が報告してきた部下に対し声を荒げる。


鎌倉に潜んでいた陸軍派の者からの連絡で海軍が逃げ出したと発覚したからだ。



「であれば鎌倉は無血開城できそうですね」



参謀長が呑気に言う。



「海軍が外洋に出たということが何を意味するかわかっているのか! 海軍が自由に活動できるようになれば、こっちは陸に閉じ込められているようなものなんだぞ!」



外交の場であるのに敬語を使わずに怒り狂う。



「それの何が問題なんです? 艦砲射撃なら航空機による対艦攻撃である程度阻止できますし、最悪内陸部に逃げれば良いだけです」



「それで逃げてどうする! 石油や鉄が無ければ我々はジリ貧になるだけだぞ!」



「あ〜なるほど...」



クツクツと参謀長がいやらしく笑う。



「何がおかしい!」



「いえいえ、石油なんて必要ないのに、と思いましてね。鉄はまぁ便利ですが無くても何とかなります」



「は? 石油がないと近代文明は...あ、貴国には魔法があったか」



「そうです、魔法なら何でもできます。若干応用が大変ですがね」



「...じゃあ早く魔法を教えてくれ。タダでとは言わんから知ってる限りのものを全て教えてくれ」



必死に将軍がねだる。



「では交渉といきましょうか〜」



待ってましたとばかりの参謀長だった。

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