ep.22 転移勢力の衝突4
居ませんね...まぁ潜望鏡しか出してないらしいので当たり前ですが」
「もうすぐでビンゴだし、そろそろ帰投するべきかな...」
もうすぐ帰投しようと準備を勧めていた頃...
「4時の方向に発光信号を確認!赤色灯なため何を言っているのかはよくわかりませんが,,,」
「よし、その付近に着水だ! 急げ!」
ノロノロと旋回をし、徐々に高度を落とす。元々レーダーに察知されないよう低高度を飛んでいたのだが、
大型の機体のためゆっくり慎重に高度を落としながら着水。着水した後すぐに潜水艦も浮上した。
「第二次大戦のUボートみたいですなぁ。本家より武装が恐ろしいですが」
鎌倉幕府陸軍の潜水艦は、15mほどの小型な船体にハリネズミのように武装を搭載している。まず船首に魚雷発射管4門、そして甲板には127mm連装砲が2基艦橋の前後に搭載されている。これには駆逐艦と同航戦をしても勝てる船を陸軍が求めたという背景もある。
「鎌倉幕府将軍、高橋 明である。この度は救援感謝する」
「え!?」
当然の反応である。彼らは幕府のVIPを保護せよとは言われていたものの、まさか将軍とは誰も思っていなかった。
「ちょっとしたイザコザがありましてな、それで今こうやって夜逃げしてます」
テヘペロと言わんばかりの態度で説明する将軍であった。
「では、潜水艦のみなさんもお移りください。敵の戦闘機が来る可能性があります。」
「急げ!手遅れになる前に乗るんだ!」
艦長が声を荒げる。
「艦長殿も急いで移乗を。」
「私は全員が乗り移るまで待ちます。部下をおいて船を降りるわけにいきませんから。」
(幕府の人は立派だなぁ)
法皇国人である二式大艇の後部銃座担当者は感心した。
「これで全員移りましたね。では、将軍と部下たちを頼みます」
「え、あなたは?まさか...」
「損傷したわけでもない船を捨てるわけにはいきません。私はこの船で遠方の陸軍基地を目指します」
「艦長、それならば私もお供します。1人では操艦はできても武装が動かせないでしょう」
「だめだ...と言いたいところだが言っても無駄か...よしわかった。勇気ある者は付いて来い!あと3人までだ!」
操艦に1人、魚雷に1人、前後の主砲に1人ずつで合計4人という計算である。
「私も!」
「私も!」
「お前は彼女がいるだろう。だめだ」
「私はボッチですからね。お供させていただきますよ」
そんなクスッとするようなやりとりが終わり3人が潜水艦に戻った後すぐ、機内にあった魔法充填瓶を増槽の中のものと交換し終わったためエンジンを発動させた。
「では、ご武運を!」
二式大艇に乗っていた日本人、法皇国人、幕府人全員が手が離せないパイロットを除き一斉に敬礼した。
二式大艇と潜水艦はそれぞれ別の方向に去っていった。
そしてその頃幕府海軍航空隊は...
「な、なんだあいつらは!?」
レーダーに映らないワイバーンに堂々と侵入され、導力火炎弾の斉射で離陸前に機体がほぼすべて破壊。地上に転がっていた爆弾にも引火し、滑走路は黒く塗装されてしまった。
しかも通常の導力火炎弾は歯に付けた魔石にワイバーンの莫大な魔力を注入し火炎魔法を放つだけなのだが、この時は石油からガソリンを精製した時の残りカス、俗に言うナパームも一緒に飛ばしていたためより被害が大きくなっていた。
勿論、対空機関砲なども一応あるのだが、日帝の指導で真っ先に破壊されてしまっており、なんとか生き残っても火砲の場合火薬不足により満足に撃てなく、コイルガンの場合は電線が切れてしまっていた。
「法皇国軍の力を思い知れ!」
日帝にボコボコにされた法皇国軍の鬱憤晴らしであった。
ーーーーーー
「将軍が見当たらないだと?ちゃんと探せ!国内にいるのは確実だ!」
海軍派は焦っていた。しっかりと陸軍の飛行場は使用不能にしておいたのに停泊中の艦艇が攻撃を受けたことによって海軍が知らない秘密航空基地があるのではないか?という憶測も出ている。
ちなみにこの時軽巡の扶桑が着底、駆逐艦の敷島と三笠が真っ二つにされてしまった。
「将軍を逃がしたのは不味い...国外に亡命政府でも作られたら...」
海軍大臣は頭を悩ませていた。
将軍が海軍派を粛清しようとしたため止むを得ず将軍を捕らえた、という大義名分を既に発表してしまっており、国外から将軍本人が国内の陸軍派に呼びかけた場合大変まずいことになるのだ。
「大変です!国外から将軍がラジオで呼びかけています!」
部下たちが流れ込む。
「やはりか...一応そこのラジオで聞かせてくれ」
部下がラジオの周波数を設定する。
「ザー...といったことがあり、現在は大日本帝国の寛大な配慮により、大日本帝国に亡命しています。そして、現在は亡命しているとはいえ海軍のテロリスト共には決して屈してはいません!いずれ陸軍が立ち上がるまで、国民はじっと耐えていただきたい!散発的な無計画な抵抗はなんの意味もありません!我々は必ず立ち上が...」
カチャッ(ラジオのスイッチの音)
「はぁ...我々は終わりだ...海軍大臣として命令する!只今よりハ1号作戦を打ち切り、ハ2号作戦に移行する!」
「ハッ!」
ちなみにハ号作戦のハは、反逆のハである。
ーーーーーー
「扶桑の弾薬を全て運び出せ! それが終わり次第、ブービートラップを仕掛けておく」
このときの幕府海軍の艦艇は、
航空母艦:天城型1隻(天城)
戦艦:金剛型4隻(金剛、比叡、榛名、霧島)
巡洋艦:扶桑型2隻(扶桑、山城)
駆逐艦:敷島型4隻(敷島、朝日、初瀬、三笠)
その他:タンカー8隻、輸送艦3隻、補給艦4隻
となっており、どの艦艇も原型艦をミニサイズにしたようなデザインだ。
例えば金剛型だが、戦艦と謳っておきながら実際は30mぐらいしかない。天城型なんかも搭載機数は8機である...それもギチギチに詰め込んで。
これは鉄の不足に加え、日本列島ではほぼ石油が取れないため幕府艦艇は全て蒸気機関を採用しており、大型だと出力不足で全く進まないのだ。
ちなみになぜ転移してすぐこんなに艦隊を建造できたのかだが、そこは元高専生らしく正気を疑うほどのほどの部品の共通化を行っているためだ。そのせいで船体がどれの船もカクカクとしてしまうという欠点もあるが...
「司令、作業が終了しました!」
「うむ。ハ2号作戦を只今より第2フェーズへ移行する!」
蒸気機関に火を入れ始めていた駆逐艦からポーと警笛を鳴らして次々に出港していく。
目的地は対馬に建造してある補給基地である。
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