ep.10 内乱2
戒厳令を発令して厳戒態勢を取り始めてから7日、敵に何の動きもない。
予め準備した隠しルートかなにかで国外逃亡したのか...次の作戦の準備中なのか...それとも戒厳令下で疲れ果てるのを待っているのか...正解はわからないが、まぁいい。
何はともかく休息を取らなければ。高等弁務官事務所の藁の中で寝ていたからかなり疲れた。
本国司令部の自室に帰ろう。
「参謀長! 準備ができました!」
普段は普通の自転車で移動しているのだが流石にこの状況でそれは危険だろう、ということで馬四頭で引っ張る装甲馬車で移動する。
本来VIPとそれを守る装甲ではなく投石器や物資を運ぶためのものなのだが。
「では、こちらに。一応中には九九式が置いてあります」
装甲車はしっかり鍵をかけているし、なにか仕掛けられたりはないだろう...そう油断していたのが間違いだった。
それでも一応ドアを開けるときとか椅子に座るときは罠に警戒してたぞ。
重い装甲車を頑張って馬で引いているので本国まで通常の自転車で2〜30分のところ2時間近くかかる。
まぁ急がせれば1時間もかからないだろうが馬に配慮して休憩をこまめに入れているからな。
ちなみに装甲車は防弾性能重視でww2戦車レベルの窓しか付けていない。
それが間違いだったのか否か。
パスゥゥゥン、と鋭い音が響く。
「な、なんだ!?」
情けないことに、丘の上から飛んできた火炎瓶搭載の鉄パイプロケットに気づかなったのだ。
ただ幸い地獄は満員だったらしく、一番装甲の厚いところに命中。
急いで飛び降りたため火傷もしていないが、木製のサスペンションがすごい勢いで燃えている。
「間一髪だったなぁ...」
と思った矢先、丘の上に向かって反撃をしていた兵士に強力な一撃が突き刺さった。
軍用のマークスマンクロスボウだ。
それ以外にも複数のクロスボウが制圧射撃をしてくる。
自分は燃え上がった装甲車の後ろに隠れているから問題ないだろうが、本国の部隊が救援に来ない限り護衛戦力だけでの打開は難しそうだ。
既に少し先を哨戒していた護衛が知らせているころだが、本国からの増援が来るまで敵さんも待ってくれはしないだろう。
もはやここまでか...
そう思った矢先、敵複数が急に攻撃をやめた。
弾切れかとも思ったが、流石に弾が少ない状態で弾幕を張るようなやつらではないし...
などと考えている内に満州国語が聞こえてきた。
...だが何を言ってるのかわからん!
通訳を連れてくるべきだった...
「ん?この声は...」
満州駐屯国境警備軍副司令の三栗悠じゃないか!
どうやってこの状況を把握したのかは知らんが、頼もしい味方が現れたことに違いはない。
「参謀長! どこにおられますかぁ?」
怒号が響く。うるせぇよ。
まぁ必死なんだろう。
「あ、参謀長。ご無事でよかった...」
「どうやって気づいたんだ?」
「満州に大量の盗賊が押し寄せてまして、緊急の連絡をしなければと本国に走っている最中に閣下が襲撃されていたので...」
「あ~なるほど...同時に満州も攻撃されていたのか」
「盗賊に襲われることを想定して2個小隊ほど引き連れていたのが幸いでした」
どうやら俺は運とやらに救われたらしい。
ーーーーーー
襲撃を退けたは良いものの、結局襲撃犯は雇われた傭兵だった。
つまり生徒会は痛くも痒くもないわけである。
しかしこちらは護衛1人が死亡、4人が負傷するという大損害だ。
そして満州には大量の盗賊が押し寄せていると...
幸い、襲撃犯と違ってクロスボウなんかは持って無く、この時代の武器しか持っていないため満州に配備されている国境警備軍だけでも弾薬が尽きるまでは防げそうだという。
しかし油断は禁物。
本国からできる限りの戦力を抽出して向かわせなければならない。
そのため私は一度本国に戻り、その後満州に向かうことにした。
ーーーーーー
「この人数で攻撃しているというのに、未だ敵に損害という損害を与えれないのはなぜだ!」
一大盗賊グループの長が怒る。
「敵はものすごい間隔で矢を飛ばしてくるのです!おそらくは交代で撃っているのでしょう。そしてそれだけならまだしも、土を匠に使い、こちらの弓が当たらないよう工夫しているのです!」
下っ端が頑張って答える。
「正々堂々戦わんとは卑怯者め...集落を襲われたときもそうだが、なぜ奴らは戦いを避けるのだ,,,」
ーーーーーー
生徒会長 松尾
「いや〜、ここまでうまくいくと気持ち悪いほどだなぁ〜ハッハッハ!」
そう、彼らは盗賊の集落をペットボトルロケットで攻撃し大量の物資を盗んだ挙げ句、満州方面に逃走したのだ。これによって勘違いした盗賊が満州に攻撃したのである。
「しかし、盗賊なんかで勝てますかね? 奴らはかなり軍事に力を入れてましたし、先の戦争より少ない兵力で満州を落とせるとも思えません」
「そんなことはわかってるさ。私だって牢屋の教室から見てたんだから」
「つまり既にこの後を考えてるんですね?」
「ハッハハッハ」
ーーーーーー
退避艦隊司令 山本 亮太
「魔力充填瓶300本と魔法石2000個、確かに受け取りました」
彼は周辺国の中ですば抜けて魔法が進んでいる神聖ザユルティ法皇国と取引を行っていた。
この国は確認したなかで最大の国で人口2万人を誇り、軍事力も桁違いだ。
我が国と戦争になれば、数回は奇策で勝てるかもしれないが連戦連勝は厳しいだろう。
ちなみに法皇国は海に面しており、沿岸部を見たところ東京湾らへんと酷似している。
転移前と転移後で位置があまり変わらないのは太陽の動き方で確認済みだが、まさか地形は日本そのままだとは思っていなかった。
そんな国力を有した大国との取引だが、戦闘艦に搭載してある爆裂魔法を利用した魔導砲と、魔力充填瓶と、魔法石を物々交換したのだ。
魔力を取り出せる魔力充填瓶は魔法をほぼ習得できていない我々には欠かせないものであり、空瓶は神聖ザユルティ法皇国まで持ってきて、魔力を充填してもらう契約もしている。
ちなみに魔導砲を取り外した船には、神聖ザユルティ法皇国の技術で改良し威力、射程共に倍増した試作型魔導砲も載せている。また、フェリーには神聖ザユルティ法皇国軍の兵士を、貨物船にはワイバーンを載せ今まさに満州に向かおうとしている。
軍艦には観戦武官も乗っており、彼らも見たこともないような兵器を扱う我々の戦いが見たいのだろう。
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