ep.9 内乱1



艦艇の正式版を一斉に就役させた。


問題はただ進水式が浸水式となっただけである。



そう、大問題だ。


しかもどの艦も気づかれないようゆっくりと水が入っていき、数時間後に船体が真っ二つに折れるように計算された絶妙な位置に、ほぼ見えない小さな穴が大量に空いている。


なんとか数隻は座礁させ沈没は免れたが...



「これは明らかに攻撃を受けているな」



「こんなことができるのは造船所の連中か最終点検を行う船員かだが...」



試作艦以外すべての艦に工作されていた以上、複数犯に違いない。



こんなあからさまなことをするのは...


高等弁務官事務所の生徒会連中に違いない。



「国境警備軍を集めろ! 少なくてもいい! 犯人は生徒会だ!」



数十分後、国境警備軍の完全武装の兵を連れ高等弁務官事務所に突入。



「GOGOGO!!!」



事務所の中の全員を拘束し一箇所に集めた。


たが居ない...



雑用業務係として雇った満州国民と自分が任命したミリオタ仲間の高等弁務官、そしてその補佐しかいない。


しかも高等弁務官と補佐はなぜか記憶が曖昧だ。


どうも通気口から煙が出てきたとかとか何とか。


それが一体なんなのか...


まぁ余計なことを考える余裕はない。



事情を知らない人を解放し、事情がわかるという満州国民の二人だけを残して話を聞いた。


するとどうやら、生徒会連中全員で補佐が高等弁務官室にいるタイミングで燃やすと目がしばしばする葉っぱを通気口から流し、部屋から出たところを襲撃したらしい。



その後、生徒会連中は高等弁務官の所持していた多数の軍用の強力な武器を盗み出し、逃走した。


つまりこちらと対等な武器を相手に戦わなければならないというわけだ。


ちなみに軍用の武器弾薬は戦時こそ徴兵された全兵士に貸与されるが、平時には強固な警備で守られた倉庫に保管されている。


平時に所持することが許されているのは、国境警備軍や秩序維持委員会、そして高等弁務官や自分のように個別に許可証を持っている者だけである。



基本、他国や民間に販売されたモンキーモデルでは射程の長い軍用には勝てない。


それもあって実戦経験豊富な我軍が、今まで格下相手にしか戦ってこなかった。


そして今回初めて対等な武器を持った相手と戦うのだ。


精鋭部隊とは言え、やはり皆この状況に動揺せずにはいられないようで、全員が落ち着かない様子だ...



ーーーーーー


数日後...



戒厳令が発動されたことにより満州国境は全て封鎖され、重要施設は厳戒態勢。


本国では満州封鎖のため派遣された国境警備軍の穴埋めとして、部分動員がされている。


大本営の総司令部要員は召集され、素早い対応ができるよう司令部内での待機が命じられている。



現状無傷の試作艦は合計五隻で、蒸気機関非対応の軍艦一型、蒸気機関対応の軍艦二型、フェリー、不採用の貨物船一型、正式採用の貨物船二型である。


これに座礁させた正式版の軍艦二型とフェリーが加わる。



試作間五隻は攻撃を避けるため退避を開始。ついでに強奪の対象になりそうな物資を乗せて周辺国へ向かった。


正式版の二隻は現在急ピッチで修理中だが、二週間はかかるそうだ。



また、満州内に多数の国境警備群を配置し、次起こるであろう攻撃に備えた。



備えた。



備えた...



何もない。


戒厳令ももう3日で負担が目立ってきた。


どうするべきか...

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