第48話 人魚美コンテスト
ついに本日、噂では聞いていて気になってはいた人魚美コンテストなるものが開催される日だ。
この日をずっとウキウキしながら待っていた。
人魚ってだけでも美しいのに、かなり細かく美の採点を競うものらしい。
どうやらそれは、鱗や色、輝きや髪、瞳、といった見た目だけでなく、なんと歌声まで審査されるらしい。
「すごい本格的なんだね…地球のミスコンみたいなのより厳しいかも…」
「なんで浪曼が緊張してんだよ」
パヴェルはやはり慣れているのか、平然と席に座っている。
実は、アニャ姫に会うのが面倒だから頑なに行かないと言っていたパヴェルを、半ば無理やり連れてきたのだ。
なんだかんだいって、隣にはいつもパヴェルがいてくれた方が心強いし、今年はアニャ姫がパヴェルのために優勝を狙うと意気込んでいると噂で聞いていた。
ならば絶対にいなくちゃダメだろう!
「それにしても……幻想的で美しい会場だなぁ〜…」
実はここは海の中。
だだっ広いこの会場は、色とりどりの魚たちや珊瑚たちに囲まれ、まさに幻想的で美しすぎる雰囲気を醸し出している。
円形上になっている席には、たくさんの観客と人魚たちが和気あいあいとしていて、本番を待っている。
「おっひさ〜!パヴェル!浪曼!」
「あっ!マイクくん!」
初日に背に乗せてもらったウミガメのマイクが泳いできた。
あれから実は2.3度会っている。
海質環境改善などについて何度か海へは来ていたため、よく出迎えてくれたりしたのだ。
「浪曼は推しの人魚がいんのか?」
「えっ、いないよー。初参加だし、人魚さんたちのことまだ全然知らないし…」
なんなら見かける人魚は男女問わずみんな同じくらい美しいと思っている。
「去年のNO.1は、テレサ!
テレサが出場しだしてからはもうずっと優勝取りなんだ!確かもうかれこれ4年連続かな〜」
「えっ!すごい!そういえば鉱石採取のとき…クルトさんとアルトゥルくんが、去年のランキングがどうとか、推しがどうとか言ってたね」
きっとこの大きな会場の中に、彼らも来ていることだろう。
「テレサはオイラの良き友人だけど、赤ん坊の頃から引くくらいに綺麗だったなぁ。まぁあいつの母親も相当だから遺伝はあるんだろうよ」
「へぇ…今年も出るんでしょ?早く見たいなぁ。マイクの推しは誰なの?」
「オイラは去年からバルバラ一筋!
コンテストの年齢制限が14からだから、あいつは今回二回目!」
「えっ!じゃあその子まだ15歳なのぉ?!」
「そうだぜ!ちいせぇ頃から遊んでやってて、まぁオイラが育てたようなもんだ!」
マイクはドヤ顔でバルバラという子の説明を始めた。
気が弱くて繊細で、幼い頃から周りと馴染めずに一人ぼっちだったらしい。
唯一の遊び相手はいつも亀のマイク。
「あいつには…少しでも自分に自信をつけてほしいんだよ。」
そうマイクは真剣な目をして呟いた。
なんとも思いやりの強い亀さんだと思い、浪曼はじんわり感動してしまった。
「なにせ、これで優勝したら、海の一部分の領土が手に入るんだからな!!」
「なっ?!なんだって?!」
「そこでオイラはバルバラと店を開くことにしてるんだぜっ!ふんっ!」
なるほど…それはすごい報酬だ。
土地が手に入るなんて…
「マイクとバルバラちゃんはそこでなんの店を開く予定なの?」
「んぁ〜…まぁ、海藻とか海ぶどうショップとかー?」
「はっ。相変わらずテキトーだな。計画ねぇんじゃんか。だいたい海藻も海ぶどうもそこら中にあって食べ放題だろうが」
パヴェルは馬鹿にしたように笑った。
「そうなんだが…。っお!こんな時のためにお前がいんじゃんか浪曼!優勝した暁には開業計画に協力してくれよ!いいだろ?!」
「え、あ、うん…まぁいいけど。」
「っしゃあ〜っ!約束だぞ!!」
まぁ楽しそうだしいいんだけど…。海で一体どんなお店をやったら…
いやその前に、だ。
ということは今日、僕はバルバラという子を応援しなくちゃなのか…。
まだ15歳…一体どんな子なんだろう?
「楽しみだなぁ。ねぇパヴェルの推しはいないの?」
「いるわけねーだろ。俺はくだらんことに興味ねんだよ。」
「いやくだらなくないだろ?綺麗な女の子の話だよ?」
普通だったら皆みたいにこうして盛り上がるのが健全な男子だろう。
パヴェルは異性に興味が全くないのだろうか?
というか彼が興味あることってそもそもあるのか?
あ、宇宙船のことだけか。
「はー、ようやく始まるぜ。待たせやがって。」
まさにその言葉と同時に、演奏係の人魚たちが美しいハープの音色やヴァイオリンの旋律を奏で始めた。
そして司会者の人魚が大きな声で喋り出す。
「紳士淑女の皆さん!お待たせ致しました!
本日は記念すべき第50回!人魚美コンテスト!並びに!海泳競走選手権を行います!」
「「うおおおおおおおおおお!!!」」
すごい歓声と拍手に初っ端から圧倒されてしまった。
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