第47話 プロポーズ


そして早速、お待ちかねの手持ち花火も出す。

この日のために花火メンバーで頑張って作ってきた。

皆に配り、火をつける。


「うわぁっ?!なにこれーっ!」

「すごい…綺麗だー…」


子どもも大人も皆驚きの声や感嘆の声を上げているのが耳に入る。

皆が花火を灯すと、この丘の星たちがまるで本物の星になったかのようにキラキラと輝いた。



「浪曼、そろそろいいよね?」

「はい、行きましょう!」


ドミニカとクレメンスを連れてその場を離れる。

打ち上げ花火のためだ。

少々の危険が伴うため、巨人ならば低リスクということで買って出てくれたのだ。


「二人ともありがとう」


「何言ってんだよ〜!俺ら生粋の派手好きが派手を打ち上げなくってどーすんだよ!」


「そーだよ浪曼。それにうちらは花火を1番近い位置で見られんだから最高じゃん」


まるでいたずらっ子のようにニヤニヤとしているギャルとギャル男が、ゆっくりと打ち上げ花火に火をつけた。


ピュ〜ッ!!とすごい勢いで上がって行く。

成功を祈りながらそれを見上げた。

満点の星空が目に入る。


パン!パンパンパン!!


「「わぁあ……」」


3人で口を揃えてしまった。

成功だ!とガッツポーズをとる二人の横で、浪曼は茫然と空を見上げていた。


大きく派手な花火が星空の中で弾ける。

目の中いっぱいに、眩い光が映っている。


その光景は、感動と共に少しの懐かしさを感じさせた。

最後に地球で花火なんて見たのはいつだろうか…

この若さにして、10代前半の時に行った花火大会以来じゃないか?と。



「よし!みんな騒いでる声が聞こえるぞ!

この調子でどんどん上げよう!」


「おうっ!って…浪曼なんかボケ〜っとしちゃってるよ」


「感動しすぎて言葉も出ないってか?放っとこーぜ!よし、次これだ!実はこれは俺が作ったすんげー派手なヤツ!」


「ウチのもあるし!ハートのやつ!!」


クレメンスの打ち上げ花火は、星や花やスマイルなど、それはそれはド派手な演出の花火だった。

そしてドミニカのものは、可愛らしいハート型が数え切れないほど空に開いた。



その頃…星の丘では大変なことが起きていた。



「ちょっ……モリスっ…」


パウリナの前に、モリスが片膝をついていた。


「僕は…一生涯キミを愛すると誓う。

ずっとキミと生きていきたいんだ。だから…」


モリスは指輪を取りだした。


「僕と…結婚してください。」


その瞬間に、色とりどりのたくさんのハートが空に舞った。

パウリナの大きく見開いた目の中にたくさんの光に囲まれたモリスが目に入る。


「モリス…嬉しいっ…!」


微笑んだモリスがパウリナの指にゆっくりと指輪を嵌める。そして盛大に抱き合う2人。


周りから拍手が巻き起こる中、パヴェルだけが口をあんぐり開けて地面に焼酎グラスを落としていた。



花火の演出はどんどんクライマックスを迎え、ラストには一際大きな黄金の花火が上がった。



「…た…太陽だぁ……」


そうつぶやくレオンの大きな瞳には、まさに自分が描いた絵の通りの、美しく眩い太陽がエドラの丘を照らす瞬間が映っていた。


全員が、ただ黙って息を止めてそれを見つめていた。




次の日、レオンから2枚の絵を渡された。


1枚は桜が舞う中で皆が幸せそうに笑っている光景。

もう1枚は、花火と星たくさんの光に包まれる中でのプロポーズの光景だった。

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