第41話 結果発表


盛大に行われていた、年に一度のスイーツ祭り…スイーツコンテストはついに終わりに近づき、結果発表となった。


「では皆さーん!こちらをご覧ください!」


建物の上に大きなスクリーンが設置されている。

その近くの屋根には、マイクを持ったアルトゥルがいる。


「今年出展されたスイーツはなんと!

歴代最高の計40品!!そして各300個全て完売!!」


うわぁ…そんなに出ていたのかぁと感嘆してしまった。

今日だけで1200個以上のスイーツたちが消費されたことになる。


ズラズラっとスクリーンに映し出された品々は、見た目の創作性が素晴らしく、それだけで浪曼は少し自信を失った。

そもそもここに来てから他の作品をほぼ見れていないし、食べれてもいない。


「いや〜!俺は感動したよっ!!

どれも言語化できないほどに素晴らしくてっ!

でも!投票できるのは一人一品!!

ではさっそく結果発表するよ!!

11位〜20位までをこちらにデデン!と紹介!!」



ドーン!とスクリーンに映った11位〜20位の中には、浪曼のモンブランもサヴァランも入っていなかった。



「諦めちゃダメだよ浪曼っ!きっと10位以内に入ってるはずよ!」


「ミアちゃん……あの……

実は僕、別に順位とか優勝とか拘ってないんだ。」


なんなら本当にどうだっていい。


「えっ?!なんで?!じゃあなんのために出展したのよ!!」


「僕はただ……」



またバババーン!と曲が鳴った。



「さて!!では次は!!

5位〜10位を発表!!」


周りの緊張感がこちらに伝わってくる。

しかし浪曼はその感情が全く湧かない。


5つの作品が画面に映り、またしてもそこには浪曼の物は無かった。

「おぉ〜!」「あぁ〜」などという喜びや落胆など様々な声が聞こえる。



「ではまずは!4位から見ていきましょう!!

第4位は……じゃじゃーん!こちらっ!!

ハインリヒさんのフォンダンショコラです!!皆さんのコメントは……ーーーー」


歓声や雄叫びに、持っているクリスタルが反応しているのがわかった。

この盛り上がりならば当然だろう。


「そして3位は!!アメリアさんのミルフィーユ!!2位と僅かな差でしたねー!!皆さんのコメントを見てみましょう!!……ーーー」

と続き、またまた大きな歓声が沸き上がる。


自分のものは、もしかしたらランク外だったかもなとそろそろ完全に確信していた。


ミアは隣で手指を組んで祈っている。

なんだか申し訳なくなってきてしまった。

アルトゥルの声は、ついに第2位発表まできている。


「ミアちゃん、もし選ばれなくても落ち込まなくていいからね?

僕は本当にただ……」


「浪曼っ!!!」


こちらを向いたミアの瞳いっぱいに、星のような眩い煌めきがあった。


「え……?」


スっと動かしたミアの人差し指の先に視線を向けると………


「浪曼くんのモンブラン!!!

地球人初出場にして素晴らしいっ!!」


そこには、自分のモンブランが映っていた。


「まず!ビジュアルが凄いとのコメントが多数!!この繊細な星型装飾は、もちろん星の丘を思い浮かべますね!!」



……ただ、皆に希望を持って欲しかった。

持ち続けていてほしかった。


モンブランの山じゃなく、星の丘を思い浮かべてほしかった。

だから浪曼は、型を星型にし、更にクリームの乗せ方も、分子ガストロノミーの科学を使って星を感じさせる装飾にしたのだ。



「そして栄光の第1位は……やはりダントツの投票数を勝ち誇ったこちらでした!!!」



その瞬間、聞いたこともないほどの声量の歓声が一斉に広がった。

クリスタルが一気に光りだす。



「凄いよっ!浪曼!!」


「い…いや……」


まさかとは思ったが……

皆それほどまでに、あのプレミアムズブロッカが大好きということなのだろう。


「圧倒的票数で人気を勝ち誇ったのは!!

これまた地球人浪曼のサヴァランでしたー!!」


このスイーツは、この星にはまだなかったらしい。

だからそこまで凝った見た目にするつもりはなかったのだが、こちらは太陽をイメージした。

この地の蜜や果汁、そしてマグダさんのプレミアムズブロッカを生地に合うように加工し、しかし素材の味が引き立つようにふんだんに染み込ませた。

更に小さなスポイトを横に指してあり、好きなだけズブロッカを注入できるようになっている。

てらてらと太陽のような色に光るオレンジ色。

そこに星のように輝くオリーブ色のズブロッカを注入することにより、皆のエネルギーによって太陽ができ上がることをイメージした。

そしててっぺんはクリームで蓋がしてあり、そのクリームの上には分子ガストロノミーの技術で作ったキラキラのバイソン社ウォッカの粒たちを乗せた。



今日得られたたくさんの歓声と声援と笑い声は、エネルギーとなってクリスタルに蓄積された。



今回のスイーツコンテストが無事閉幕してから、パヴェルが迎えに来てくれた。


「おめでとう、浪曼。ほんとお前凄いよ。」


「ありがとう…まぁ、なんていうか…皆ズブロッカが好きなんだなって。材料分けてくれた皆のお陰だよ」


「お前が凄いんだよ、浪曼。マジで俺は…感動した」


パヴェルはあのモンブランに感動したというよりも、浪曼の技術に本当に心の底から感動していた。


「お陰で大切なことを思い出せた気がしたよ。きっとそれは俺だけじゃない。」


いつもは何事にもやる気なさげな彼からこんなに真っ直ぐと正直な感想を向けられると、少し戸惑ってしまう。


「僕はただ……どんな形であれ、皆に希望を抱き続けていてほしかっただけだよ。

なにがあってもこれだけは絶対に。」



希望は、ロマンだから。

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